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二章 『強く』なるために

二十三話 アステール

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「はぁぁ!!」

 ミルの突きを剣で受け止める。本来なら、魔力防壁を使っても簡単に受け止められるが……それでは面白くない。

「……こんなものか?」
「まさ…かっ!」

 何度か攻防が続くが、ミルの剣技が俺の魔力防壁に当たることはない。

(相当上手くはなっているが……今のミルのステータスと照らし合わせると、まだまだ伸び代はあるな。)


「やぁっ!!」

 
 ミルのレイピアを受け止め、鍔迫り合いに持ち込ませる。

「……『アレ』、使わないの?」
「…………使わせてみな。」
「ふふ……言ってくれる、ねっ!」

 ミルは俺の剣を押して無理矢理に距離を取り、レイピアを鞘に収めて手を突き出し、唱えた。

「『フレイム』!」

 ミルがそう詠唱した瞬間……俺目掛けて炎が飛んでくる。

 フレイムは上級魔法の一種で、炎を一直線に飛ばす魔法であり、特徴としては他の炎魔法よりも火が消えにくいというものがある。
 威力自体は普通だが、消えにくいだけに単純に水魔法をぶつけても打ち消せすことはできない。


(だが……対策ならいくらでもある。)



『グラウンドウォール』
「え……土の壁?」

 ミルが俺の使った魔法に驚く。
 グラウンドウォールは、指定した場所に土の壁の作り出す中級魔法だ。
 そしてミルが驚いたのは、火に対して土を当てるといった意外な俺の行動が理由だろう。

 それもそのはず、本来なら炎には水を当てるといった手段がこの世界では基本であり、ミルにとって俺が取った行動は意外に映っているのだろう。

(けれど……俺の強さなら、これが1番楽な方法だ。)

 フレイムが壁に当たり、土を熱していく。普通なら壁は炎の勢いに耐えきれず、崩れるものだが……俺の作った土の壁は一向に壊れる様子はない。
 やがて炎は消えていき、それと同時に壁は崩れ去っていった。


「くっ……じゃあこれなら、『業火ごうかまい』!」
「……足元か。」

 ミルは壁が消えた瞬間に次の魔法を唱え、俺の足元に大きな魔法陣を作り出した。
 それは業火の舞という最上級の魔法で、指定した地面に大きな魔法陣を作り出し、そこから炎の渦を出す強力な魔法だ。発動に少し時間がかかるが、相手にしっかり当ればかなりの威力を出すことができる。


(……今なら、避けられるが……)


 俺は避けない代わりに、魔法を唱えた。



「『マジックブレイク』……ふっ!」

 詠唱したと同時に、俺は地面を鳴らした。

 すると……業火の舞の魔法陣は、あっさりと消えていってしまった。


「なっ……!?」
「業火の舞を使うなら、事前に魔法陣を設置したほうがいい。ある程度の奴だったら、こうやって簡単に消してくるからな。」


 マジックブレイクはそのの通り、発動時に身体に接触している魔法陣を消すことができる超級魔法だ。
 ちなみに、魔法陣だけでなく魔法を消すこともできるが……消すのにも時間がかかってその間にダメージを受けるので、できれば魔法陣に使うのが吉な魔法だ。

「どうした、もっと力を見せてみろ。この2年間で得たのはこれだけか?」
「っ……!」

 俺はミルを挑発する。
 ……少し気が引けるが、人間は多少怒った方がの全力を出せるものだ。それは、心優しいミルも例外ではないはずだ。



「言ったね……なら、全力でいくよ!」


 俺の言葉は聞いたようで、ミルの雰囲気が一気に変わる。



 そして、ミルはもう一度アステールを抜き、天に掲げて…………言い放った。





「はぁぁっ……散れ、アステール!!!」




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