上 下
22 / 291
二章 『強く』なるために

二十話 運んで

しおりを挟む
 


「ウルス……その目は……」
「……これですか?これは…うっ……?」


 師匠に『目のこと』を指摘され、俺は軽く説明しようとしたが……不意に、体に軽い衝撃が走る。
 その衝撃の正体を確かめるため、下に目線を送ると……何故か、ミルが俺の体に抱きついていた。


「……本当に、ウルスくんなの?」


 ミルは俺を見上げて、そう聞いてくる。
 その目は少し潤っており、家から飛び出してきた時とは全くの別人と言っていいほど幼く見えた。

 そんな様子を見て……俺は、彼女の頭を優しく撫でた。


「……ああ、ただいま……ミル。」
「……!!うん…おかえり、ウルスくん……!」

 俺がそう告げると、ミルは再び俺の胸に顔を埋めて、小さく嗚咽おえつを漏らした。
 俺はミルの頭を撫で続けながら師匠に視線を移すと、未だ俺の『目』に驚き続けていた。

「師匠、これは……」
「……とりあえず、家に入ろう。色々聞きたいこともあるしな。」
「……はい。ミル、一旦離れて……?」

 師匠に言われ、俺はミルの肩を掴んで離れようとした、が……ミルは何故か一層回している腕に力を入れ始めた。

「……ミル?離れてくれないと動け…………」


「………運んで。」
「…………えっ?いや、動けるだろ?早く…」
「運んで。」
「いやだから、歩けないわけじゃ…」
「運んで。」
「「………………。」」











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












 結局、ウルスは渋々ミルを抱えて家の中へと入った。

 ……久しぶりに会えたのだから甘えたい気持ちは分からないでもないが…………相変わらず女心はよく分からん。


「……じゃあ、そろそろ本題に入るか。」
「………は、はい。」

 ウルスは歯切れ悪く返事をする。
 
 それもそのはず……あの後もミルはウルスから離れようとはせず、今もウルスの上にちょこんと座っていたからだ。
 
 溜め息を吐きながら、俺はミルに言う。

「ミル、ウルスに甘えるのは後にしてくれ。それじゃ話に集中できないだろ。」
「………はーい。」

 ミルは不満たっぷりな顔をしながらも、ウルスの上から降りて横に座った。

「……で、ウルス。まずは……お前さんは、この旅でどれほど強くなったんだ?」
「そうですね……口で言うより、ですね。」
「そうか、なら……『心眼』」

 俺は超越級魔法を使い、ステータスを確認しようとする。おそらく、普通に見ようとしてもステータスの差で文字化けするだろうしな……






『詳細不明』







「……なっ、詳細不明…?」

 しかし、俺が見たかった物は現れず……代わりに、今まで見たことのない表記が視界に映る。

「……えっ……見れない!?」
「ミル、お前さんにはどう映った?」
「しょ、詳細不明って……」
(……同じか。)


 ミルはまだ心眼は使えないはずなので、どうやら今のウルスのステータスは誰にも見えない……というか、隠されているといったところか。


「……さっきお前が隠れていた時も、魔力反応がほぼ感じられなかった。この『詳細不明』もそれと関係しているのか?」
「いえ、魔力反応と『これ』は直接的な関係ありません。あの時に俺の魔力反応が無かったのは、俺がステータスを抑えていたからです。そして……」


 ウルスはそう話しながら、自身の紫色の目を指差す。


(目の色……確か、昔集めた本にそんなものが書いてあったような……)

 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

ポンコツ気味の学園のかぐや姫が僕へのラブコールにご熱心な件

鉄人じゅす
恋愛
平凡な男子高校生【山田太陽】にとっての日常は極めて容姿端麗で女性にモテる親友の恋模様を観察することだ。 ある時、太陽はその親友の妹からこんな言葉を隠れて聞くことになる。 「私ね……太陽さんのこと好きになったかもしれない」 親友の妹【神凪月夜】は千回告白されてもYESと言わない学園のかぐや姫と噂される笑顔がとても愛らしい美少女だった。 月夜を親友の妹としか見ていなかった太陽だったがその言葉から始まる月夜の熱烈なラブコールに日常は急変化する。 恋に対して空回り気味でポンコツを露呈する月夜に苦笑いしつつも、柔和で優しい笑顔に太陽はどんどん魅せられていく。 恋に不慣れな2人が互いに最も大切な人になるまでの話。 7月14日 本編完結です。 小説化になろう、カクヨム、マグネット、ノベルアップ+で掲載中。

転生したら人間じゃなくて魔物、それもSSSランクの天狐だったんですが?

きのこすーぷ
ファンタジー
何時もと変わらないはずの日常。 だけれど、この日は違った。教室の床は光り始め、目が覚めるとそこは洞窟の中。 主人公のコハクは頭の中で響く不思議な声と共に、新たな世界を生き抜いていく。 「ん? 殺傷した相手のスキルが吸収できるの?」授かったスキルは強力で、ステータスの上昇値も新たな世界ではトップクラス。 でもでも、魔物だし人間に討伐対象にされたらどうしよう……ふえぇ。 RPGみたいな感じです。 クラス転移も入っています。 感想は基本的に、全て承認いたします。禁止なのは、他サイトのURLや相応目的の感想となっております。 全てに返信させていただくので、暇なときにでも書いてくださると嬉しいです! 小説家になろう様でも掲載を始めました。小説家になろう様では先行で更新しております。 応援してくれるとうれしいです。https://ncode.syosetu.com/n5415ev/

何度も死に戻りで助けてあげたのに、全く気付かない姉にパーティーを追い出された 〜いろいろ勘違いしていますけど、後悔した時にはもう手遅れです〜

超高校級の小説家
ファンタジー
武門で名を馳せるシリウス男爵家の四女クロエ・シリウスは妾腹の子としてプロキオン公国で生まれました。 クロエが生まれた時にクロエの母はシリウス男爵家を追い出され、シリウス男爵のわずかな支援と母の稼ぎを頼りに母子二人で静かに暮らしていました。 しかし、クロエが12歳の時に母が亡くなり、生前の母の頼みでクロエはシリウス男爵家に引き取られることになりました。 クロエは正妻と三人の姉から酷い嫌がらせを受けますが、行き場のないクロエは使用人同然の生活を受け入れます。 クロエが15歳になった時、転機が訪れます。 プロキオン大公国で最近見つかった地下迷宮から降りかかった呪いで、公子が深い眠りに落ちて目覚めなくなってしまいました。 焦ったプロキオン大公は領地の貴族にお触れを出したのです。 『迷宮の謎を解き明かし公子を救った者には、莫大な謝礼と令嬢に公子との婚約を約束する』 そこそこの戦闘の素質があるクロエの三人の姉もクロエを巻き込んで手探りで迷宮の探索を始めました。 最初はなかなか上手くいきませんでしたが、根気よく探索を続けるうちにクロエ達は次第に頭角を現し始め、迷宮の到達階層1位のパーティーにまで上り詰めました。 しかし、三人の姉はその日のうちにクロエをパーティーから追い出したのです。 自分達の成功が、クロエに発現したとんでもないユニークスキルのおかげだとは知りもせずに。

元勇者は魔力無限の闇属性使い ~世界の中心に理想郷を作り上げて無双します~

桜井正宗
ファンタジー
  魔王を倒した(和解)した元勇者・ユメは、平和になった異世界を満喫していた。しかしある日、風の帝王に呼び出されるといきなり『追放』を言い渡された。絶望したユメは、魔法使い、聖女、超初心者の仲間と共に、理想郷を作ることを決意。  帝国に負けない【防衛値】を極めることにした。  信頼できる仲間と共に守備を固めていれば、どんなモンスターに襲われてもビクともしないほどに国は盤石となった。  そうしてある日、今度は魔神が復活。各地で暴れまわり、その魔の手は帝国にも襲い掛かった。すると、帝王から帝国防衛に戻れと言われた。だが、もう遅い。  すでに理想郷を築き上げたユメは、自分の国を守ることだけに全力を尽くしていく。

最強ドラゴンを生贄に召喚された俺。死霊使いで無双する!?

夢・風魔
ファンタジー
生贄となった生物の一部を吸収し、それを能力とする勇者召喚魔法。霊媒体質の御霊霊路(ミタマレイジ)は生贄となった最強のドラゴンの【残り物】を吸収し、鑑定により【死霊使い】となる。 しかし異世界で死霊使いは不吉とされ――厄介者だ――その一言でレイジは追放される。その背後には生贄となったドラゴンが憑りついていた。 ドラゴンを成仏させるべく、途中で出会った女冒険者ソディアと二人旅に出る。 次々と出会う死霊を仲間に加え(させられ)、どんどん増えていくアンデッド軍団。 アンデッド無双。そして規格外の魔力を持ち、魔法禁止令まで発動されるレイジ。 彼らの珍道中はどうなるのやら……。 *小説家になろうでも投稿しております。 *タイトルの「古代竜」というのをわかりやすく「最強ドラゴン」に変更しました。

元銀行員の俺が異世界で経営コンサルタントに転職しました

きゅちゃん
ファンタジー
元エリート (?)銀行員の高山左近が異世界に転生し、コンサルタントとしてがんばるお話です。武器屋の経営を改善したり、王国軍の人事制度を改定していったりして、異世界でビジネススキルを磨きつつ、まったり立身出世していく予定です。 元エリートではないものの銀行員、現小売で働く意識高い系の筆者が実体験や付け焼き刃の知識を元に書いていますので、ツッコミどころが多々あるかもしれません。 もしかしたらひょっとすると仕事で役に立つかもしれない…そんな気軽な気持ちで読んで頂ければと思います。

男装の皇族姫

shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。 領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。 しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。 だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。 そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。 なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。

処理中です...