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二章 『強く』なるために

十九話 久しぶり

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 神界魔法しんかいまほう



 師匠の家の書庫の中をなんとなく漁っていると、古びた本の表紙にそんな文字が書いてあった。
 俺は聞いたことのない魔法の名前に興味が湧き、調べてみると……どうやらその神界魔法とやらは、4種類ほど存在しているらしかった。




 1つ目は、『神眼しんがん』。



 超越級魔法に心眼しんがんと呼ばれる同じ様な魔法があるが……神眼はそれの完全上位互換だ。

 『心眼』とは、どれだけ相手とのステータスの差があってもしっかり相手のステータスを見れ、また相手に自分のステータスを見せないといったことができる魔法だ。
 ちなみに、お互い心眼を使っていれば効果はどちらも無くなるらしい。

 それに対して『神眼』は、どんな相手のステータスを見れることはもちろん、相手が心眼を発動していても無効化できるといった点がある。
 また、相手が今までどんな人生を歩んできたか…といったものも見ることができる………あまり使いたくはないが。


 2つ目は、『鬼神化きじんか』。


 この魔法に関してはその本にあまり細かいことは書いてなかったが、実際に使ってみたところ……どうやらこれを発動すれば、ステータスを極限まで上昇させることができる強化魔法だった。
 その上昇率といえば、まさに鬼神そのもの……しかし、その分デメリットも多いが。

 4つあると書かれていた本だが、実際にはこの2つしか書いてなかった。

本によると、そもそも『この魔法を使える にんげん はいない』と書かれており、実際に旅でもその存在を知っている人はいなかった。







 俺の旅の目的……それは、強くなるため…………そして、この神界魔法を覚えるためでもあった。














ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

















(……あいつが旅に出て1年と8ヶ月か……早いものだ。)


 俺は明るくなってきた外を見て、心の中で呟く。

「……確か2、3年と言っていたが……帰ってくるならもう少しか。」


 あいつ……ウルスが旅に出てからも、俺はミルとの修行に日々明け暮れていた。その結果、ミルもウルス程ではないが、すくすくと強く……そして可愛らしく成長していった。
  

(…今のミルを見たら、ウルスも何か思うことがあったり……いや、ウルスはミルを妹みたいに接していたし、変わらないだろうな。)


 ……俺も、すっかり歳を取ったな。



「はぁ………ん?」


 溜め息を吐きながら、俺は窓から目を離した……その刹那、不意に何か奇妙な気配を感じた。


(外……?この違和感は何だ?)

 その違和感を確かめるため、俺は外へと飛び出す。
 ……この違和感、どこかで………


「……そこか?」
『ギガ・スパーク』

 俺は周りを見渡し、その違和感を感じる方向に向けて『超級』魔法であるギガ・スパークを発動した。

「……痺れろ。」

 超高電圧の稲妻が俺の手から放たれる。
 ……あの方向に何があるがわからんが……隠されている時点であまりいいものでは無いはずだ。

「……これでどう……だ…?」

 そう思い、稲妻の行方を見ると……何故か稲妻はある地点で動きを止められていた。
 その地点には紫色の壁……つまり、魔力防壁があった。

(俺が使う超級魔法でもあっさり……魔力防壁があるということは、あそこに人が……?)

「グランさん!どうしたの!?」

 稲妻の音が聞こえたのか、家からミルが飛び出してきた。
 俺は飛び出してきたミルの前に腕を伸ばし、静止させる。

「ミル、あそこに何かいる……気を付けろ!」
「気、気を……はい!」

 俺がそう言うと、ミルはボックスから自分の武器を取り出して構えた。

(消えているのか……誰なんだ一体……?)












「……よく気づきましたね、さすが師匠。」
「……この声は……!」

 
 聞き覚えのある声と共に、魔力防壁が現れた場所から人が現れ始める。
 現れるそいつの格好は、緑色の短いマントについたフードを深く被り、茶色の服に黒色のズボンを履いた少年だった。

 やがて姿を見せた少年はフードを取り……こう言った。



、2人とも。」
「えっ……ウ、ウルスくん…?」

 少年……ウルスが帰ってきたことにミルは驚き、固まっていた。

(…………?)


 もちろん、俺自身も予想外な帰宅に驚いていたが……それより、もっと気になるところがあった。



「ウルス……その『目』は……!?」



 以前は黒かったウルスの目は……紫色に輝いていた。


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