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英雄譚⑫
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空には星々が瞬いていた。私たちは小高い丘でガラクシアを見物すると友との最後の言葉を交わす。
「本当に行ってしまうのか」
アルタイルは悲しそうな顔をベガに向けている。彼は旅の中で彼女に友情を超えた愛情を見出していたのだろう。何せ、この私も同じ想いなのだからよく分かる。
「……二人とも、世界を救った英雄がその様な顔をしないでください」
私もアルタイルと同じ様な顔をしていたとやっと気がついた。震えそうな声を何とか制しながら出来るだけ普段の調子で私も説得に当たる。
「魔神はあと千年は復活しない。君も急ぎの用が無いのならばこの国でゆっくりしていてもいいのではないか?」
彼女を止めることが出来ないのは私がよく知っている。それでも、私は藁にもすがる思いで言葉を紡ぐ。彼女と共にいたかったから。
「私はこの世界を苦しみから救うために神からこの世界に使わされました。……魔神を討伐した今でも、この世界はまだ苦しみに満ちてる。神が直接手を下さぬのならばそれを少しでも癒すのが私の使命です」
魔神の最後の言葉を気にしていたのだろうか。彼女の瞳に私はなす術もなく沈黙してしまった。
「……で、では俺も一緒に!!」
「なりません」
同行を申し入れたアルタイルは何かを迷う様な表情であった。それもそのはずである。彼には千を超える守るべき人々がいる。それを見抜いてかベガは優しい口調で言葉を続けた。
「二人にはこの地でやるべき事があります。この世界を癒すのが私の使命であるならば、二人を信じる人々を守るのがあなた方の使命です」
アルタイルは私と同様に沈黙する。
「アルタイル、デネブ、ここまでの旅路、とても楽しかったです。どうかお元気で」
彼女は今まで見せなかった笑顔を私たちに向けると振り返り、去ろうとした。彼女の瞳には涙が溜まっていたかもしれない。彼女の背中にアルタイルは問いかける。
「……また会えるか?」
彼女は夜空を何かを探す様に見上げると一際明るく輝いている星を指さした。
「あの星はいつでもこの地の上、ずっとあの場所で輝いていると言います。……あの星を見て、あなた方を思い出します。そしてどうかあなた方も思い出して欲しい。我々は常に共にあることを」
私たちはしばらくその導きの星を見つめていた。
『デネブの記憶』より
「本当に行ってしまうのか」
アルタイルは悲しそうな顔をベガに向けている。彼は旅の中で彼女に友情を超えた愛情を見出していたのだろう。何せ、この私も同じ想いなのだからよく分かる。
「……二人とも、世界を救った英雄がその様な顔をしないでください」
私もアルタイルと同じ様な顔をしていたとやっと気がついた。震えそうな声を何とか制しながら出来るだけ普段の調子で私も説得に当たる。
「魔神はあと千年は復活しない。君も急ぎの用が無いのならばこの国でゆっくりしていてもいいのではないか?」
彼女を止めることが出来ないのは私がよく知っている。それでも、私は藁にもすがる思いで言葉を紡ぐ。彼女と共にいたかったから。
「私はこの世界を苦しみから救うために神からこの世界に使わされました。……魔神を討伐した今でも、この世界はまだ苦しみに満ちてる。神が直接手を下さぬのならばそれを少しでも癒すのが私の使命です」
魔神の最後の言葉を気にしていたのだろうか。彼女の瞳に私はなす術もなく沈黙してしまった。
「……で、では俺も一緒に!!」
「なりません」
同行を申し入れたアルタイルは何かを迷う様な表情であった。それもそのはずである。彼には千を超える守るべき人々がいる。それを見抜いてかベガは優しい口調で言葉を続けた。
「二人にはこの地でやるべき事があります。この世界を癒すのが私の使命であるならば、二人を信じる人々を守るのがあなた方の使命です」
アルタイルは私と同様に沈黙する。
「アルタイル、デネブ、ここまでの旅路、とても楽しかったです。どうかお元気で」
彼女は今まで見せなかった笑顔を私たちに向けると振り返り、去ろうとした。彼女の瞳には涙が溜まっていたかもしれない。彼女の背中にアルタイルは問いかける。
「……また会えるか?」
彼女は夜空を何かを探す様に見上げると一際明るく輝いている星を指さした。
「あの星はいつでもこの地の上、ずっとあの場所で輝いていると言います。……あの星を見て、あなた方を思い出します。そしてどうかあなた方も思い出して欲しい。我々は常に共にあることを」
私たちはしばらくその導きの星を見つめていた。
『デネブの記憶』より
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