18 / 106
Season1
拠点ーCastleー
しおりを挟む
城に残った人々は皆広間に集まっていたため廊下には人の気配がしなかった。
「急ぎましょう!!」
リック隊長達が押さえ込んで入るがそれでも何体かのアンデットが追ってくる。
恐らく彼らが全滅した時、この城はアンデット達で溢れるだろう。
庭園は城の南側に位置していた。ルシウス国王の母親にあたる先代王女により城壁と城の間の空き地に作られていた。ポラリスの城での基本的な業務はこの庭園の管理でもあった。
庭園への入り口は厚い門で塞がれていた。
ポラリスは門の向かい側にある執事室から鍵束も取ってきた。これで城のほとんどの部屋が開くはずである。
門を開けると、庭園を初めて目にする者は息を飲んだ。
「……きれい……」
アイリーンが呟く。一面には真白い花が月に向かって咲き誇っていた。
この季節は花壇には月光花と呼ばれる白い花を植えていた。この花は月に向かって花弁を開く習性があり、月の光を浴びて妖しく光る。先代女王が特に愛した花でもあった。
空には大きな満月、地面は白い花びらの海。まるでこの状況が夢であるかのような幻想的な風景がそこには広がっていた。
「皆さん!!こちらに!」
庭園の隅にあるレンガ造りの小屋の扉を開ける。花に見惚れていた人達はハッと我に帰り小屋に入っていった。ただ一人、エストレアは最後までぼーっと花を見ていた。
「なんて汚い場所なの!!」
「まあまあアンドロメダ。仕方ないじゃないか」
喚く女王を国王がなだめる。
管理人小屋を普段利用する庭職人達は掃除とは無縁の男達であった。
「ポラリス君、食糧や水はどれほど保ちそうなんだ?」
ビルが尋ねる。ポラリスは戸棚を漁り庭職人が隠し持っていた酒やつまみを含めた食料を集めた。元々居住を目的で建てられたわけではないのでその量はとても少なかった。
「11人でこれだと……明日まで保つかどうか……」
一同に沈黙が流れる。
「……いつまでもここに篭るわけにもいかぬか」
国王が頭を抱える。
ガラクシアは他の街や国とも離れているためすぐに救助は期待できないだろう。
「……仕方ないのう。脱出路を使おう」
「なっ!!あなた!あれを使うのはこの国の破滅の時だけのはずよ!」
「……父上、なんですかそれは」
シリウスが尋ねる。
「この城の地下室、さらにその地下にある坑道だ。この街の外まで繋がっていてこの地がドワーフの国だった頃に作られたと言われている」
「……なぜそれを早く言わないのです」
「……勇者アルタイルの血を引く我々がご先祖の創ったこの国を捨てるのは決して許されん。故に無闇には使えんのだ。存在も儂とアンドロメダ、親衛隊長とリック隊長しか知らん。
勇者アルタイルは数々の武勇を残している。その名前に泥を塗らぬためにも無闇に逃げるわけにはいかなかったのだ」
「……」
シリウスは黙り込む。
「……だがもうそんな事は言ってられん。勇者の名は汚れても血まで途絶える事は許されん。それに民をおちおち死なせては先祖に顔向けできんしの」
国王がアイリーンやジョシュ、ルーナに目をやりながる話す。
「……!!平民達の前で脱出路のことを話すなんて!!貴方こそご先祖の恥よ!!」
王女が罵ると国王はしょんぼりとした。
「……とにかく希望は見えたようですね。そこに向かいましょう」
突如できた脱出路に一同の暗い雰囲気がわずかに吹き飛んだ。
「急ぎましょう!!」
リック隊長達が押さえ込んで入るがそれでも何体かのアンデットが追ってくる。
恐らく彼らが全滅した時、この城はアンデット達で溢れるだろう。
庭園は城の南側に位置していた。ルシウス国王の母親にあたる先代王女により城壁と城の間の空き地に作られていた。ポラリスの城での基本的な業務はこの庭園の管理でもあった。
庭園への入り口は厚い門で塞がれていた。
ポラリスは門の向かい側にある執事室から鍵束も取ってきた。これで城のほとんどの部屋が開くはずである。
門を開けると、庭園を初めて目にする者は息を飲んだ。
「……きれい……」
アイリーンが呟く。一面には真白い花が月に向かって咲き誇っていた。
この季節は花壇には月光花と呼ばれる白い花を植えていた。この花は月に向かって花弁を開く習性があり、月の光を浴びて妖しく光る。先代女王が特に愛した花でもあった。
空には大きな満月、地面は白い花びらの海。まるでこの状況が夢であるかのような幻想的な風景がそこには広がっていた。
「皆さん!!こちらに!」
庭園の隅にあるレンガ造りの小屋の扉を開ける。花に見惚れていた人達はハッと我に帰り小屋に入っていった。ただ一人、エストレアは最後までぼーっと花を見ていた。
「なんて汚い場所なの!!」
「まあまあアンドロメダ。仕方ないじゃないか」
喚く女王を国王がなだめる。
管理人小屋を普段利用する庭職人達は掃除とは無縁の男達であった。
「ポラリス君、食糧や水はどれほど保ちそうなんだ?」
ビルが尋ねる。ポラリスは戸棚を漁り庭職人が隠し持っていた酒やつまみを含めた食料を集めた。元々居住を目的で建てられたわけではないのでその量はとても少なかった。
「11人でこれだと……明日まで保つかどうか……」
一同に沈黙が流れる。
「……いつまでもここに篭るわけにもいかぬか」
国王が頭を抱える。
ガラクシアは他の街や国とも離れているためすぐに救助は期待できないだろう。
「……仕方ないのう。脱出路を使おう」
「なっ!!あなた!あれを使うのはこの国の破滅の時だけのはずよ!」
「……父上、なんですかそれは」
シリウスが尋ねる。
「この城の地下室、さらにその地下にある坑道だ。この街の外まで繋がっていてこの地がドワーフの国だった頃に作られたと言われている」
「……なぜそれを早く言わないのです」
「……勇者アルタイルの血を引く我々がご先祖の創ったこの国を捨てるのは決して許されん。故に無闇には使えんのだ。存在も儂とアンドロメダ、親衛隊長とリック隊長しか知らん。
勇者アルタイルは数々の武勇を残している。その名前に泥を塗らぬためにも無闇に逃げるわけにはいかなかったのだ」
「……」
シリウスは黙り込む。
「……だがもうそんな事は言ってられん。勇者の名は汚れても血まで途絶える事は許されん。それに民をおちおち死なせては先祖に顔向けできんしの」
国王がアイリーンやジョシュ、ルーナに目をやりながる話す。
「……!!平民達の前で脱出路のことを話すなんて!!貴方こそご先祖の恥よ!!」
王女が罵ると国王はしょんぼりとした。
「……とにかく希望は見えたようですね。そこに向かいましょう」
突如できた脱出路に一同の暗い雰囲気がわずかに吹き飛んだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~
次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」
前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。
軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。
しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!?
雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける!
登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。
クラウンクレイド零和
茶竹抹茶竹
SF
「私達はそれを魔法と呼んだ」
学校を襲うゾンビの群れ! 突然のゾンビパンデミックに逃げ惑う女子高生の祷は、生き残りをかけてゾンビと戦う事を決意する。そんな彼女の手にはあるのは、異能の力だった。
先の読めない展開と張り巡らされた伏線、全ての謎をあなたは解けるか。異能力xゾンビ小説が此処に開幕!。
※死、流血等のグロテスクな描写・過激ではない性的描写・肉体の腐敗等の嫌悪感を抱かせる描写・等を含みます。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら
フオツグ
恋愛
「私、異世界で推し活します!」
大好きな女性向けスマホゲーム【夜空を彩るミルキーウェイ】の世界に、聖女として召喚された日本の女子高生・イオリ。
イオリの推しは敵のゾンビ男子・ノヴァ。不良そうな見た目でありながら、真面目な努力家で優しい彼にイオリは惚れ込んでいた。
しかし、ノヴァはチュートリアルで主人公達に倒され、以後ストーリーに一切出て来ないのであった……。
「どうして」
推しキャラ・ノヴァを幸せにすべく、限界オタク・イオリは異世界で奮闘する!
限界オタク聖女×拗らせゾンビ男子のピュアラブコメディ!
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
死霊術士が暴れたり建国したりするお話
白斎
ファンタジー
日本人がファンタジー異世界にとばされてネクロマンサーになり、暴れたりダラダラしたり命を狙われたりしながら、いずれ建国してなんやかんやするお話です。 ヒロイン登場は遅めです。 ライバルは錬金術師です。
【改訂版】ピンク頭の彼女の言う事には、この世は乙女ゲームの中らしい。
歌川ピロシキ
ファンタジー
エステルは可愛い。
ストロベリーブロンドのふわふわした髪に零れ落ちそうに大きなハニーブラウンの瞳。
どこか舌足らずの口調も幼子のように天真爛漫な行動も、すべてが愛らしくてどんなことをしてでも守ってあげたいと思っていた。
……彼女のあの言葉を聞くまでは。
あれ?僕はなんで彼女のことをあんなに可愛いって思ってたんだろう?
--------------
イラストは四宮迅様(https://twitter.com/4nomiyajin)
めちゃくちゃ可愛いヴォーレを描いて下さってありがとうございます<(_ _)>
実は四月にコニーも描いていただける予定((ヾ(≧∇≦)〃))
--------------
※こちらは以前こちらで公開していた同名の作品の改稿版です。
改稿版と言いつつ、全く違う展開にしたのでほとんど別作品になってしまいました(;´д`)
有能なくせにどこか天然で残念なヴィゴーレ君の活躍をお楽しみいただけると幸いです<(_ _)>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる