とあるクラスの消失

倉箸🥢

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坂木先生と脳の10%神話

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紙に書かれた文字を見て、私は勢い良く走り出した。階段を3個飛ばしで駆け上って、4の1、4の2 、4の3と、6の2まで廊下を走り続ける。
そして私は6の2の教室に私は飛び込んだ。

「…おや、行動を起こしたのは夏目さんと花火さん2人でしたか」

「…坂木先生!」

そこには、マフラーを巻いた坂木先生が窓際に腰をかけて佇んでいた。先に来ていたのだろう夏目は顔を強ばらせていた。

「夏目さんは先生について調べる為に6の2に来て、花火さんは美春さんからちゃんと手紙を受け取ったようだね」

坂木先生は窓際から軽やかに降りて、微かに笑いながら言った。その笑みがなんだか懐かしく、そして恐ろしく感じた。私は頭を掻きながら、先生に言った。

「いやぁ、まさか先生から現れてくれるとは思いませんでした。色々聞いても良いですか?全て私の妄想含め推測ですが、推理しました。」

「ええ、せっかく先生の為に動いてくれたんだ。推理でも何でも答えられるものは答えてあげましょう。」

秋もそろそろ終わりがけな季節で、開いた窓からは冷たい風が吹きこんできた。

「…何推理したんだ花火先生?」

夏目はこそりと私に耳打ちした。「見ていてくださいな夏目先生」と私も夏目に耳打ちすると、夏目は楽しそうに、悪戯っぽい顔を浮かべた。流石推理小説を書く夏目先生だ。頭を働かせている。

「じゃあ…まず、どうして先生は突如姿を消したんですか?そして何故今現れたんですか?」

私はそう言うと、坂木先生は顔を渋らせて何やら考え始めた。

「…うーん…何故って言われてもなぁ…教員人生飽きたって言うのが1番かなぁ。現れた理由は誰が探してんじゃないかと思って」

「…へぇ、でも誰がが行動するのはわかってあんですよね?生徒から聞きましたよ。10月の24日と25日に誰かが行動するって。そしてまんまとその通りに私達は先生を探し始めた」

「…何が言いたいんです?」

坂木先生は顔を強ばらせた。私は何かでみた推理ドラマの主人公のように、教室を歩き始める。

「先生覚えてます?私が昔、先生に「もしこのクラスがRPGの世界にいたら楽しいと思いません?」って聞いたこと。そして、RPGの世界で戦ったこと。忘れられないでしょうけど」

「そりゃあ忘れられないですよ。あんな非日常な体験、忘れるはずがない」

「でしょう?本当にRPGの世界で戦って…私も忘れるはずがありません。でもあれでわかった事があるじゃないですか。ファンタジーが漫画だけのこの世界でも、神のほんの気まぐれで非日常が始まること」

私は黒板に絵を描き始めた。そう言えばその話をした時も黒板に絵を描いていたような気がする。

「私、説明苦手なので絵描いて説明しますね」


「脳の10%神話ってご存知です?ほとんど、あるいはすべての人間は脳の10%かそれ以下の割合しか使っていないって言う奴です。だから未使用の潜在能力を解放することで、何か能力が現れるかもしれない…みたいな。この神話、嘘っぱちだの、まだ解明されず事実に近いだの、色んな話があるんですが私は信じているんですよ」

私はスマホに脳の10%神話について書かれているウィキペディアを立ち上げて、坂木先生にスマホを投げた。坂木先生は上手くスマホを受け取ると、興味深そうにウィキペディアを読んでいた。

「…それで?」

坂木先生は読み終えたのか、スマホに向けていた眼を私に向けた。

「…つまり人間ってどんな力が秘められているか分からない、隠された力があるかもしれない。っていうこの神話、RPGの世界で戦った私達の経験によって確証に近いと思うんです。誰かの能力が目覚めたのかもしれない」

「まぁ、それはわかったけど…どうしてその神話がこの話と関係が?」

坂木先生は軽く納得した様子で生徒の椅子に腰をかけた。先生の体では、いくら小学六年生の座る椅子とはいえ、小さく思えた。

「…正直に言っちゃいましょうか、坂木先生は記憶を書き換える能力を持っていて、何らかの同じ能力を持つ誰かに脅され、私達6の2の生徒達や、周りの人の記憶を消し、6の4の生徒だと記憶を書き換えた」

「大体、6の4なんて無いんです。4クラスも雄星小学校には無くてせいぜい3クラス。少子高齢化で段々と子供が減っていたあの時代では、有り得ない話なんですよ」

私は少子高齢化!とデカデカと黒板に書いた。
壁の黒板に向かって書くのは難しいもんだと改めて感じる。

「…確かに、とんだ妄想話ですね。まぁ、その脳の10%神話が確証に近いって話は良いでしょう。先生が、記憶を書き換えたって話も、100歩譲って良いでしょう。ならば、何故先生は全員の記憶を消していない?そ書き換えていない?何らかに脅されているなら…先生だったら全ての記憶を抹消し、書き換えてから消えるけれど」

「…まぁ、そりゃあ…誰かに……に気づいてもらう為でしょうよ」

私は昔と同じように笑う坂木先生を見つめ、そう言った。











    
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