とあるクラスの勇者物語

倉箸🥢

文字の大きさ
上 下
3 / 17

チームワークと絆と優しさと

しおりを挟む

「へー、死んだんだ、まぁ嫌いだったからどうでもいいや」

「ある意味清々したかも」

そう言って笑っている生徒は人間なのかと疑うぐらい恐ろしかった。人の死を軽々しく笑われたのが悔しくて、悲しくて仕方なかった。それよりも生徒をこんな風に思ってしまう自分が許せなかった。



「…あ、」

「あれ、珍しいですね。安田先生がうたた寝なんて」

目が覚めると、沢山の陳列されたモニターの光が目を刺した。眩しさから逃げるように1度体を伸ばすと、そこに松本先生が本片手に立っていた。
手に持っている本は年季の入っていて、沢山読まれているようだった。未だに高鳴る鼓動を抑えるように息を吸う。

「…久しぶりに夢を見ました。未だに心臓が落ち着いてません」

「あの時のですか、私もよく見ます。結構心臓に悪いですよね」

まるでご近所さん同士の会話のような気軽さに
いつの間にか心臓が落ち着いてきた。
するとモニターに映る生徒達が一人足りない事、松本先生に外の寒い空気が纏わりついているのに気づいた。

「おや、松本先生、生徒達と会ってきたんですか?」

「はい、様子見てきました。凛さんがピリピリしてまして、皐月さんと言い争ってたので止めてきました。まあ、凛さん、どうも気に食わなかったのか皆置いて走り出してましたけども、」

「…その調子じゃあ、皆バラバラにここにきそうですねぇ」

困ったように笑うと、つられて松本先生も眉を下げて笑った。話す事が無くなり、俺はモニターに向かうと松本先生は近くの椅子に座り、本を読み始めた。

「…読書、好きなんですね」

俺は振り返ってそう言うと、松本先生は儚く笑って言った。

「えぇ、本は、孤独を埋めてくれるんです」


*

「…思春期少女はめんどくさいなぁ…」

「ちょっと!やめなって…!」

花火が無意識に小さく呟くと闇桜が焦ったように止めにかかった。花火は「あっ、」と声を上げ恥ずかしそうに口を手で覆った。

「…とりあえず凛追いかける…?」

一樹がそう言うと生徒達は静まりかえった。
誰も何も言わず、目を逸らしている。
そんな中涼太が言った。

「…別に追いかけなくていいだろ。めんどくさい」

冷淡に放たれたその言葉に、皆何も言わなかった。それをわかっていたかのように涼太は歩き出した。立ち尽くす生徒達をよそに、一樹は涼太を追いかけた。

「ちょ、まてって!」

2人が闇に消え、この場には8人が残った。
皆どうしようかと目を合わせていた。

「…じゃあ、私も先行ってるわ」

千秋はそう言うと、手を振りながら歩き出した。生徒達はただ、背中を見つめていた。
すると「じゃあ俺も」「私も」と、どんどん生徒達は別れて歩いていった。

「…まーじかよ…」

花火と闇桜はたった2人残され、立ち尽くしていた。闇桜はただ無言で俯いていて、気まずい空気が流れ始めた。

「…とりあえず、私たちも進むかい?」

「………」

「あっ、いや、なんかすみません、とりあえず私は行ってるね」

闇桜は何処か遠くを見つめていて、魂がこの場に無いような様子だった。何処か恐怖を覚え、逃げ出すように花火はその場を立ち去った。
ただ1人、闇桜だけが残った。

「…同じクラスなのに、チームワークも絆も優しさも、何もないもね」

何かを諦めたような目で闇桜は呟いた。
感情を無くしたような声だった。

「…私は悪くないよね、そう、うん。私は悪くない、悪いのは皆、殺したって大丈夫なんだ」


「はははっ、想像するだけで面白いなぁ」
    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!

青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。 すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。 「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」 「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」 なぜ、お姉様の名前がでてくるの? なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。 ※タグの追加や変更あるかもしれません。 ※因果応報的ざまぁのはず。 ※作者独自の世界のゆるふわ設定。 ※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。 ※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...