とあるクラスの勇者物語

逆らえない天命

「私達が勇者で先生は魔王。そんな物語、面白そうだなぁ」

独り言の様に笑う生徒を前に
俺はまた言葉を紡いでいた

「…楽しそうなお話だね」



*
 
目覚ましが朝の始まりを伝えるかのように鳴り響く。
うるさく鳴り止まない目覚ましを手探りで止め、しばらく布団の中でぼんやりとする。
このままでは寝てしまうと無理やり体を動かし起き上がると、太陽が嫌になるぐらい眩しく光り輝いていた。

「うわぁ………天気が良い…」

清々しい程の天気の良さとは裏腹に、心情は曇り空のようにどんよりしている。こんなのは日常茶飯事で、毎日繰り返すルーティンだ。朝ごはんを食べる気にもならずとりあえず服に着替え、歯を磨き、家を出てみた。
鍵の形をしたペンダントはいつの間にかお守り替わりとなっていて、今日も安全に生きれるようにお守りに願って魔導中学校へと歩きだした。

*
今日から新学期。
教科担任の先生は去年とは変わってしまっていて、花火は何処か寂しかった。いつの間にか騒がしい教室の中に「おはよう」と、先生が現れた。安田先生だ。去年の数学担当の先生だから、皆 顔に馴染みがある。だが安田先生が担任となる事が気に食わないのか、生徒の1人2人がぼやきはじめた。

「え、まじ安田先生かよ」

「うっわ…まじか…嫌だなあ…」

そんな小さい言葉も耳に入った安田先生は諦めたようにため息をつく。そして小さく呟いた。

「…前と変わってねぇなあ」

するといきなり教室の天井が大きい爆発音と共に落ちてきた。
それを合図にするかのように外からも爆発が起こり始める。
身の危険を感じ一目散に逃げようとする生徒を前に安田先生は言葉を放った。

「これは天命だ！君達の、その人間らしく醜い内面を、まっさらにする為の戦いだ。これには逆らう事は出来ない。待ってるよ」

安田先生は高らかに叫ぶと、生徒の視界は真っ暗になった。