13 / 34
高校の、ちょっと不良な先輩
狼と赤ずきん 1
しおりを挟む
ど定番と言われてしまえば、そのとおり。
瀬戸先輩とは、少女マンガの王道だった。
「——俺の女に手ぇ出すな」
誘われて行った地下のライブハウス。初めての場所に圧倒された私は、場違いに浮いていた。
一緒に来た友達は、そこにいた別の友達と喋っていて。交わされるバンドの話題にも入りづらく、ドリンクでも飲もう、と。ひとり移動し、知らない男の子たちに話しかけられ困っていたところを——助けてもらった。
その助け方が、少女マンガ。
俺の女に手を出すな——なんて紙面で見るか、ドラマや映画で聞くくらい。
びっくりした私の腕を掴んで、知らない彼らの前から、そのままライブハウスの外まで連れ出された。
「あ、あの……」
「——お前、うちの高校だろ」
くすんだ金髪に、低い声。振り返った眼は狼みたいに鋭くて、掛けられた言葉がいったん全部落ちていった。
なんと言われたのか。怖い眼に晒されて真っ白な頭が何も言えず、あちらのほうから、
「おい、聞いてんのか?」
「は、はいっ……なんですかっ?」
「……お前、俺と同じ高校だろ。こんなとこで何してんだ」
「え? ……あの、どうして……?」
「部活の見学で喋ってる。覚えてねぇのか」
——憶えてます。その流れで他の先輩にライブチケットをもらって、瀬戸先輩たちのこと、見に来たんです。
普通にそう言えばよかったのだけれど、怖すぎてうまく喋れない。部活見学で、ほんのすこし話したときは……もうちょっとこう、話せなくもない感じだったのに。
今日はとてつもなく怖い。
「——とにかく。1年の女がこんなとこ来んな。せめて誰かと来い」
「……いちおう、友達と来たんです……」
「そうなのか? なら、なんでひとりで絡まれてんだよ」
「……ひとりで行動してたので……?」
「お前には危機感ってもんがねぇのか」
瀬戸先輩の意見に小さく返答していると、あきれたように吐息された。すこしだけ、怖い顔が緩和される。
「……瀬戸先輩、」
「ん? ……ん? お前、俺の名前知ってんのか?」
「……見学のとき、名札を見ました」
「ああ……つぅか? お前、覚えてるじゃねぇか!」
「……はい」
憶えてます。忘れるわけないです。だって、
「部活紹介の、瀬戸先輩のドラムがかっこよかったから……ライブ、見に来たんです」
「——はっ?」
相変わらず怖いので、ごくごく小さな声で主張した。
——でも、その主張を聞いた瀬戸先輩の顔が、真っ赤になったので。
(……かわいい)
はからずしも、恋をしてしまった。
瀬戸先輩とは、少女マンガの王道だった。
「——俺の女に手ぇ出すな」
誘われて行った地下のライブハウス。初めての場所に圧倒された私は、場違いに浮いていた。
一緒に来た友達は、そこにいた別の友達と喋っていて。交わされるバンドの話題にも入りづらく、ドリンクでも飲もう、と。ひとり移動し、知らない男の子たちに話しかけられ困っていたところを——助けてもらった。
その助け方が、少女マンガ。
俺の女に手を出すな——なんて紙面で見るか、ドラマや映画で聞くくらい。
びっくりした私の腕を掴んで、知らない彼らの前から、そのままライブハウスの外まで連れ出された。
「あ、あの……」
「——お前、うちの高校だろ」
くすんだ金髪に、低い声。振り返った眼は狼みたいに鋭くて、掛けられた言葉がいったん全部落ちていった。
なんと言われたのか。怖い眼に晒されて真っ白な頭が何も言えず、あちらのほうから、
「おい、聞いてんのか?」
「は、はいっ……なんですかっ?」
「……お前、俺と同じ高校だろ。こんなとこで何してんだ」
「え? ……あの、どうして……?」
「部活の見学で喋ってる。覚えてねぇのか」
——憶えてます。その流れで他の先輩にライブチケットをもらって、瀬戸先輩たちのこと、見に来たんです。
普通にそう言えばよかったのだけれど、怖すぎてうまく喋れない。部活見学で、ほんのすこし話したときは……もうちょっとこう、話せなくもない感じだったのに。
今日はとてつもなく怖い。
「——とにかく。1年の女がこんなとこ来んな。せめて誰かと来い」
「……いちおう、友達と来たんです……」
「そうなのか? なら、なんでひとりで絡まれてんだよ」
「……ひとりで行動してたので……?」
「お前には危機感ってもんがねぇのか」
瀬戸先輩の意見に小さく返答していると、あきれたように吐息された。すこしだけ、怖い顔が緩和される。
「……瀬戸先輩、」
「ん? ……ん? お前、俺の名前知ってんのか?」
「……見学のとき、名札を見ました」
「ああ……つぅか? お前、覚えてるじゃねぇか!」
「……はい」
憶えてます。忘れるわけないです。だって、
「部活紹介の、瀬戸先輩のドラムがかっこよかったから……ライブ、見に来たんです」
「——はっ?」
相変わらず怖いので、ごくごく小さな声で主張した。
——でも、その主張を聞いた瀬戸先輩の顔が、真っ赤になったので。
(……かわいい)
はからずしも、恋をしてしまった。
20
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
両隣から喘ぎ声が聞こえてくるので僕らもヤろうということになった
ヘロディア
恋愛
妻と一緒に寝る主人公だったが、変な声を耳にして、目が覚めてしまう。
その声は、隣の家から薄い壁を伝って聞こえてくる喘ぎ声だった。
欲情が刺激された主人公は…
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※完結済み、手直ししながら随時upしていきます
※サムネにAI生成画像を使用しています
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
夫の幼馴染が毎晩のように遊びにくる
ヘロディア
恋愛
数年前、主人公は結婚した。夫とは大学時代から知り合いで、五年ほど付き合った後に結婚を決めた。
正直結構ラブラブな方だと思っている。喧嘩の一つや二つはあるけれど、仲直りも早いし、お互いの嫌なところも受け入れられるくらいには愛しているつもりだ。
そう、あの女が私の前に立ちはだかるまでは…
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる