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クラスメイトのバレー部くん
What I love 1
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初めて彼の存在を知ったのは、高校一年のとき。
バレー部の先輩に片想いをしていた友人に「応援に行こう!」と誘われ、なんの知識もないままバレーの大会を観にいった。
華麗にアタックを決める先輩の姿に舞いあがる友人をよそに、私は、ゆいいつ一年でレギュラーとして活躍していた、ボールを器用に受け続けるクラスメイトの姿から目が離せなかった。
それが、彼——朝日傑。
§
「——なぁ、数学の宿題やってきたか?」
朝のホームルームが始まるギリギリの時間に飛び込んできた小柄な彼は、席に着くなり、背後に座る私を振り返った。くしゃくしゃとした彼の髪は、寝癖なのか元から癖毛なのか分からない。
ちなみに、遅刻寸前なのは寝坊ではなくて、朝練。振り返った拍子にふわりと香る汗の匂いが、変に胸を高鳴らせ、動揺しそうになる自分をぎゅっと抑える。
「朝日くん、またやってないの?」
「やる気はあったんだけどなー。気づいたら朝だった!」
あきれた表情を取りつくろって、数学のノートを手渡す。丸写ししたところで何にもならないと思うのだが、受け取る彼を怒る気すら起きないほど、いつも彼は子どもみたいに屈託なく笑うのだ。
去年観た試合の彼とは、まるで別人。
2年になっても相変わらずクラスメイトとして騒がしい彼が、大急ぎで解答を写す後ろ姿を眺める。習慣になりつつある、そんなホームルームの時間。
「そーいえば、今度インターハイの予選あるけど来るのか?」
ホームルームが終わって、ノートを私に返しながら、彼はいきなりそう尋ねた。なんのことか分からず首をかしげてみせると、「春高バレー、見に来てただろ?」同じように首をかしげて、きょとんとする。可愛い。思っても、口にはしない。
「行かないと思うよ」
「なんだよ、来いよ!」
「1年のときは友達に誘われたの」
そして、友人の憧れの先輩が卒業した今、友人はバレーなんて興味ゼロ。なので私も行く予定なし。
——けれども、私が応援に来ていたことを知っていたのには驚きだった。あの頃はまだ、今ほど親しくはなかったのに。
「じゃあ今年は俺が誘ってやる! 来い!」
「偉そう。来てください、なら考える」
「遠慮すんなって! 本当は好きなんだろっ?」
軽い調子で言われて一瞬聞き流してしまったが、数秒後に理解して——思わず固まった。
——好きなんだろ?
ひそやかな片思いを思わず言い当てられて、かっと頬が熱くなる。何も言い返せない私に、彼はにこにこと笑ったまま、
「俺もバレー大好きだ! 俺は、観るよりもやる派だけどなっ」
(……ああ、そっち)
お決まりのオチにすぅっと冷めていく高揚感。天然級の鈍さを再確認し、短く呟いた。
「……もう、ノート貸さない」
「はっ? なんでだよ!」
いきなりの拒絶にさわぐ彼から目を外し、そっとため息を吐き出す。
バレーひとすじの彼。これくらいの意地悪は、いいと思う。
バレー部の先輩に片想いをしていた友人に「応援に行こう!」と誘われ、なんの知識もないままバレーの大会を観にいった。
華麗にアタックを決める先輩の姿に舞いあがる友人をよそに、私は、ゆいいつ一年でレギュラーとして活躍していた、ボールを器用に受け続けるクラスメイトの姿から目が離せなかった。
それが、彼——朝日傑。
§
「——なぁ、数学の宿題やってきたか?」
朝のホームルームが始まるギリギリの時間に飛び込んできた小柄な彼は、席に着くなり、背後に座る私を振り返った。くしゃくしゃとした彼の髪は、寝癖なのか元から癖毛なのか分からない。
ちなみに、遅刻寸前なのは寝坊ではなくて、朝練。振り返った拍子にふわりと香る汗の匂いが、変に胸を高鳴らせ、動揺しそうになる自分をぎゅっと抑える。
「朝日くん、またやってないの?」
「やる気はあったんだけどなー。気づいたら朝だった!」
あきれた表情を取りつくろって、数学のノートを手渡す。丸写ししたところで何にもならないと思うのだが、受け取る彼を怒る気すら起きないほど、いつも彼は子どもみたいに屈託なく笑うのだ。
去年観た試合の彼とは、まるで別人。
2年になっても相変わらずクラスメイトとして騒がしい彼が、大急ぎで解答を写す後ろ姿を眺める。習慣になりつつある、そんなホームルームの時間。
「そーいえば、今度インターハイの予選あるけど来るのか?」
ホームルームが終わって、ノートを私に返しながら、彼はいきなりそう尋ねた。なんのことか分からず首をかしげてみせると、「春高バレー、見に来てただろ?」同じように首をかしげて、きょとんとする。可愛い。思っても、口にはしない。
「行かないと思うよ」
「なんだよ、来いよ!」
「1年のときは友達に誘われたの」
そして、友人の憧れの先輩が卒業した今、友人はバレーなんて興味ゼロ。なので私も行く予定なし。
——けれども、私が応援に来ていたことを知っていたのには驚きだった。あの頃はまだ、今ほど親しくはなかったのに。
「じゃあ今年は俺が誘ってやる! 来い!」
「偉そう。来てください、なら考える」
「遠慮すんなって! 本当は好きなんだろっ?」
軽い調子で言われて一瞬聞き流してしまったが、数秒後に理解して——思わず固まった。
——好きなんだろ?
ひそやかな片思いを思わず言い当てられて、かっと頬が熱くなる。何も言い返せない私に、彼はにこにこと笑ったまま、
「俺もバレー大好きだ! 俺は、観るよりもやる派だけどなっ」
(……ああ、そっち)
お決まりのオチにすぅっと冷めていく高揚感。天然級の鈍さを再確認し、短く呟いた。
「……もう、ノート貸さない」
「はっ? なんでだよ!」
いきなりの拒絶にさわぐ彼から目を外し、そっとため息を吐き出す。
バレーひとすじの彼。これくらいの意地悪は、いいと思う。
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