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Chap.10 DRINK ME, EAT ME
Chap.10 Sec.2
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ハオロンは早起きではない。それはハウスの兄弟なら知っている事実であり、データを確認することでもない。ロキも同様である。
それらをふまえて、日が顔を出す直前に狙いを定め、セトはハオロンの私室を訪れた。ハオロンは眠っているかも知れないが、直接訪問すれば起きる算段であった。
——しかし、そう上手くいかないのは、セトの見通しが甘いからと言わざるを得ない。
「……は?」
うっかり出たセトの声に、エレベータから降りたカラフルな髪の青年が、眠たそうに目をこすりながら反応した。ハオロンの私室前にいるセトの姿をとらえて、口のなかで「は?」まったく同じ声をあげる。互いにあまり良くない表情で、考えるような間が生まれた。
「……お前、なんでこんな早く起きてんだよ」
「……何時に起きよォが、オレの勝手じゃねェ?」
「ハオロンに用か?」
「まァね。……てめェこそ何? 犬は主人の周りでも走っとけばァ~?」
「あ?」
眠たげなロキは、あくびまじりの挑発を返し、それを聞いたセトの目が吊り上がった。しかし、ふと考えついたセトは表情を変え、
「いや、お前、いいときに来た。このドア開けてくれねぇか?」
「……何言ってンの?」
「ハオロンが起きねぇんだよ。お前なら開けられるだろ?」
「プライバシーって知らねェ? ……あ、そっかァ~ワンちゃんの世界では学ばないかァ~」
「なに言ってんだ? お前、昔ふつーに俺の部屋のロック外して入ってたじゃねぇか」
「……記憶にねェし」
「ひょっとして、もうロック外せねぇの?」
「は? やれるけど?」
「じゃあ開けてくれよ」
「…………いや、そんな安っぽい挑発に乗らねェから」
「……チッ」
思惑が外れたセトの舌打ちを横目に、ロキはドアへと手を伸ばした。表面にブレス端末の着いた手をかざす。訪問のしらせがハオロンのほうで鳴っているはずだが、出てくる気配はない。ため息をつくロキを見て、セトの顔には喜色が浮かんだ。
「ほらな、起きねぇだろ? 開けようぜ」
「てめェで開ければ?」
「やれたらとっくにやってる」
「……ってかさ、そっちはなんの用?」
「……べつに。大した用じゃねぇけど」
「はァ? ぜってェ嘘じゃん。昔からさァ、なんでそんな嘘へたなワケ? 脳みそ成長してねェの?」
「お前は鬱陶しさだけ成長してるな」
「……ぜってェ開けねェ」
「軽い冗談だろ。早く開けろよ」
「ヤだね」
「お前も待つ羽目になるぞ?」
「………………」
「な? 開けようぜ」
「ヤだって。ウサギ死んでたら見たくねェし」
「……は?」
ロキの辟易とした呟きに、セトの眉間にしわが寄った。「どういう意味だよ……?」怪訝な顔のセトには応えず、ロキは腕のブレス端末で操作を始める。すると、いきなりドアが開いた。
「なにこれ……ブレス、バグったんやけど……」
現れたハオロンの腕から、ピリピリとした不快な音が鳴り響いている。耳のよいセトは「うるせぇ」顔をしかめて耳を塞ぎつつも、ハオロンの横を抜けて室内へと入った。雑多な部屋をくるりと見回す。目的の人間がいない。浴室の方も目をやったが、入室マークは出ていない。
「……おい、ハオロン。ウサギは?」
「ねぇ、これ止めてくれんか? ロキやろ?」
振り返ったセトの言葉は届いていないのか、ハオロンは湿っぽい目をロキに向け、腕を掲げてみせた。ロキが自身のブレス端末に触れると、不快音は停止した。ハオロンが盛大に吐息し、
「もぉ~……朝からなんやの? うち、気分よく寝てたのに……」
「気分よくって……アンタ、ぜってェ乱暴したじゃん。……約束は?」
「誤解やわ。うち史上、最高に優しかったよ?」
「嘘くせェ……」
ふたりの会話に割り込むようにして、「おい、ウサギどこ行った?」ドアまで戻って来たセトが尋ねると、ハオロンはきょとりとした目を上げた。
「なんでうちに訊くの?」
「なんでって、昨日お前だろ?」
「夜のうちに別れたよ……?」
「……は?」
セトの盛り上がった眉頭に、ハオロンがたじろいだ。彼は怒られ慣れていない。
「お前……ウサギのこと見張るって言ってたじゃねぇか! なんで放り出してんだよ!」
「? ……うち、そんなこと言ったかぁ……?」
「初日の、ゲーム前に喋ったろ!」
「あぁ……言ったわ。けどぉ……ありす、どう見ても弱いし……うちが独占するのも悪いし……」
「だからって放り出すかっ? あいつ私室ねぇんだぞ!」
「……なんでそんな怒るんやって……サクラさん、追い出せばいいって言ってたよ……?」
セトが小柄な身体に詰め寄り、その迫力に困惑したハオロンは一歩さがった。ふたりを眺めていたロキは、
「あのさァ……そんなこと、どォでもいいから。ハオロン、ほんとに居場所知らねェの? うっかり殺して処理したとか……そォゆうオチだったら、オレも怒るよ?」
低い声で訊かれた内容に、セトは一瞬ふざけているのかと口を挟みかけた。しかし、ロキの表情は重く、そんな気配は無い。意味が分からずセトの顔にも困惑が広がる。ハオロンはふたりを交互に見上げてから、首を振った。
「ほんとに知らんって……ありす捜してるんか?」
「…………なァ、ミヅキもどき」
ハオロンの質問を無視して、ロキはハウス管理のAIを呼んだ。
《——なぁに?》
高いトーンの声とともに、3人の前へと黒髪の少年が躍り出る。背景が透過している少年は、いとけなく小首をかしげていた。
「ウサギは? どこ?」
《ハウス内にはいないよ?》
「はァ? またそれ?」
ロキの苛ついたリアクションに、隣でセトがハッとし、
「違う。ゲストで捜してくれ。それかアリス。この前ハウスに来たやつ、分かるだろ?」
《お客さまなら、アリアの私室にいるよ》
「アリア……?」
セトの声に、半透明少年とは真逆の——3人の背後から、声が。
「はい、どうかしましたか?」
ぴったりと息の合った動きで、一同が振り返る。ひとつ隣の部屋からやって来たらしいアリアが、ほんわかとした笑顔を返した。そして、その後ろから……そろりと顔を見せたのが、
「——ウサちゃん! みっけ!」
ぱっと表情を明るくしたロキが、跳ねるように近寄った。その勢いのまま現れた彼女を抱きしめ、身長差からすっぽりと包みこまれた彼女の顔は、セトから見えなくなった。
「なんだ、元気そォじゃん。マジで死んだかと思った」
「……しぬ?」
「ハイハイ、分かンないねェ~? まァいいから、オレの部屋行こォぜ」
腕のなかに閉じ籠め見下ろしながら話すロキに、ハオロンが「ほらぁ……うち悪くなかったやろ? ふたりとも、謝ってくれていいよ?」大げさに肩をすくめてみせた。その声に身を強張らせた彼女の反応には、ロキだけが気づいた。
「みなさん、お姫様を捜していたのですね?」
状況に理解がいったアリアに、セトが「……まぁな」曖昧な肯定を返す。アリアは頷き微笑んだ。
「ちょうどお姫様と一緒に食堂へ行くところでして……よければ、みなさんもいかがですか? メルウィンさんが、ビスコッティを焼いてくれたんですよ」
「いらねェ~。私室でテキトーに食べるし。ウサちゃんも、オレと食べるよな?」
「………………」
「ン? なに?」
『……メルウィンから、連絡をもらって……約束を……』
『いきたいってこと?』
『……できれば』
『たぶん、あなたがこわがってるやつも、くるよ?』
『…………それは、大丈夫』
『………………』
セトたちには分からない会話がなされたかと思うと、ロキは腕から彼女を放した。不満げな顔ではあったが。
「おはよぉ、ありす」
「……おはよう」
解放された彼女に、ハオロンが口角を上げて声をかけた。彼女は笑顔を浮かべることなく、小さな声で返す。セトには、恐れているようにも見えた。震える小動物のイメージが重なる。
考えていると、彼女の目がセトへと流れ、
「……おはよう」
「……ああ」
セトは目の合った彼女を上から下までさっと確認したが、とくに異変は見つけられない。昨日のあのひとふうの見た目ではなくなっているくらい。ロキの〈死んだ〉〈殺した〉というワードに引っかかりを感じてはいたが、何も触れられずにいた。
「うちも、一緒に行っていいかぁ?」
「もちろんですよ」
ハオロンとアリアが言葉を交わし、エレベータへと進んだ。ロキも「……じゃ、オレも」露ほども乗り気でないようすで足を動かす。ロキは彼女の肩に手を乗せていて、彼女もまた引っ張られるようにして歩を進めたが、ひとり残されたセトに気づき頭だけ振り返った。
「せとは……たべない……?」
「俺は——」
質問に答えようとしたセトから目をそらさせるように、ロキが彼女の頭を前に向けた。
「朝食なんてとっくに食ってるって。犬は無駄に早起きだから」
「……いぬ?」
「い~から、早く」
彼女を急かしてエレベーターに押し込んだロキは、乗る直前、セトに一瞥をやって舌を出した。嫌がらせたっぷりの、悪意ある流し目に、
「なんだよ!」
エレベーターのドアが閉じ、置き去りにされたセトの文句が、むなしく廊下に響いていた。
それらをふまえて、日が顔を出す直前に狙いを定め、セトはハオロンの私室を訪れた。ハオロンは眠っているかも知れないが、直接訪問すれば起きる算段であった。
——しかし、そう上手くいかないのは、セトの見通しが甘いからと言わざるを得ない。
「……は?」
うっかり出たセトの声に、エレベータから降りたカラフルな髪の青年が、眠たそうに目をこすりながら反応した。ハオロンの私室前にいるセトの姿をとらえて、口のなかで「は?」まったく同じ声をあげる。互いにあまり良くない表情で、考えるような間が生まれた。
「……お前、なんでこんな早く起きてんだよ」
「……何時に起きよォが、オレの勝手じゃねェ?」
「ハオロンに用か?」
「まァね。……てめェこそ何? 犬は主人の周りでも走っとけばァ~?」
「あ?」
眠たげなロキは、あくびまじりの挑発を返し、それを聞いたセトの目が吊り上がった。しかし、ふと考えついたセトは表情を変え、
「いや、お前、いいときに来た。このドア開けてくれねぇか?」
「……何言ってンの?」
「ハオロンが起きねぇんだよ。お前なら開けられるだろ?」
「プライバシーって知らねェ? ……あ、そっかァ~ワンちゃんの世界では学ばないかァ~」
「なに言ってんだ? お前、昔ふつーに俺の部屋のロック外して入ってたじゃねぇか」
「……記憶にねェし」
「ひょっとして、もうロック外せねぇの?」
「は? やれるけど?」
「じゃあ開けてくれよ」
「…………いや、そんな安っぽい挑発に乗らねェから」
「……チッ」
思惑が外れたセトの舌打ちを横目に、ロキはドアへと手を伸ばした。表面にブレス端末の着いた手をかざす。訪問のしらせがハオロンのほうで鳴っているはずだが、出てくる気配はない。ため息をつくロキを見て、セトの顔には喜色が浮かんだ。
「ほらな、起きねぇだろ? 開けようぜ」
「てめェで開ければ?」
「やれたらとっくにやってる」
「……ってかさ、そっちはなんの用?」
「……べつに。大した用じゃねぇけど」
「はァ? ぜってェ嘘じゃん。昔からさァ、なんでそんな嘘へたなワケ? 脳みそ成長してねェの?」
「お前は鬱陶しさだけ成長してるな」
「……ぜってェ開けねェ」
「軽い冗談だろ。早く開けろよ」
「ヤだね」
「お前も待つ羽目になるぞ?」
「………………」
「な? 開けようぜ」
「ヤだって。ウサギ死んでたら見たくねェし」
「……は?」
ロキの辟易とした呟きに、セトの眉間にしわが寄った。「どういう意味だよ……?」怪訝な顔のセトには応えず、ロキは腕のブレス端末で操作を始める。すると、いきなりドアが開いた。
「なにこれ……ブレス、バグったんやけど……」
現れたハオロンの腕から、ピリピリとした不快な音が鳴り響いている。耳のよいセトは「うるせぇ」顔をしかめて耳を塞ぎつつも、ハオロンの横を抜けて室内へと入った。雑多な部屋をくるりと見回す。目的の人間がいない。浴室の方も目をやったが、入室マークは出ていない。
「……おい、ハオロン。ウサギは?」
「ねぇ、これ止めてくれんか? ロキやろ?」
振り返ったセトの言葉は届いていないのか、ハオロンは湿っぽい目をロキに向け、腕を掲げてみせた。ロキが自身のブレス端末に触れると、不快音は停止した。ハオロンが盛大に吐息し、
「もぉ~……朝からなんやの? うち、気分よく寝てたのに……」
「気分よくって……アンタ、ぜってェ乱暴したじゃん。……約束は?」
「誤解やわ。うち史上、最高に優しかったよ?」
「嘘くせェ……」
ふたりの会話に割り込むようにして、「おい、ウサギどこ行った?」ドアまで戻って来たセトが尋ねると、ハオロンはきょとりとした目を上げた。
「なんでうちに訊くの?」
「なんでって、昨日お前だろ?」
「夜のうちに別れたよ……?」
「……は?」
セトの盛り上がった眉頭に、ハオロンがたじろいだ。彼は怒られ慣れていない。
「お前……ウサギのこと見張るって言ってたじゃねぇか! なんで放り出してんだよ!」
「? ……うち、そんなこと言ったかぁ……?」
「初日の、ゲーム前に喋ったろ!」
「あぁ……言ったわ。けどぉ……ありす、どう見ても弱いし……うちが独占するのも悪いし……」
「だからって放り出すかっ? あいつ私室ねぇんだぞ!」
「……なんでそんな怒るんやって……サクラさん、追い出せばいいって言ってたよ……?」
セトが小柄な身体に詰め寄り、その迫力に困惑したハオロンは一歩さがった。ふたりを眺めていたロキは、
「あのさァ……そんなこと、どォでもいいから。ハオロン、ほんとに居場所知らねェの? うっかり殺して処理したとか……そォゆうオチだったら、オレも怒るよ?」
低い声で訊かれた内容に、セトは一瞬ふざけているのかと口を挟みかけた。しかし、ロキの表情は重く、そんな気配は無い。意味が分からずセトの顔にも困惑が広がる。ハオロンはふたりを交互に見上げてから、首を振った。
「ほんとに知らんって……ありす捜してるんか?」
「…………なァ、ミヅキもどき」
ハオロンの質問を無視して、ロキはハウス管理のAIを呼んだ。
《——なぁに?》
高いトーンの声とともに、3人の前へと黒髪の少年が躍り出る。背景が透過している少年は、いとけなく小首をかしげていた。
「ウサギは? どこ?」
《ハウス内にはいないよ?》
「はァ? またそれ?」
ロキの苛ついたリアクションに、隣でセトがハッとし、
「違う。ゲストで捜してくれ。それかアリス。この前ハウスに来たやつ、分かるだろ?」
《お客さまなら、アリアの私室にいるよ》
「アリア……?」
セトの声に、半透明少年とは真逆の——3人の背後から、声が。
「はい、どうかしましたか?」
ぴったりと息の合った動きで、一同が振り返る。ひとつ隣の部屋からやって来たらしいアリアが、ほんわかとした笑顔を返した。そして、その後ろから……そろりと顔を見せたのが、
「——ウサちゃん! みっけ!」
ぱっと表情を明るくしたロキが、跳ねるように近寄った。その勢いのまま現れた彼女を抱きしめ、身長差からすっぽりと包みこまれた彼女の顔は、セトから見えなくなった。
「なんだ、元気そォじゃん。マジで死んだかと思った」
「……しぬ?」
「ハイハイ、分かンないねェ~? まァいいから、オレの部屋行こォぜ」
腕のなかに閉じ籠め見下ろしながら話すロキに、ハオロンが「ほらぁ……うち悪くなかったやろ? ふたりとも、謝ってくれていいよ?」大げさに肩をすくめてみせた。その声に身を強張らせた彼女の反応には、ロキだけが気づいた。
「みなさん、お姫様を捜していたのですね?」
状況に理解がいったアリアに、セトが「……まぁな」曖昧な肯定を返す。アリアは頷き微笑んだ。
「ちょうどお姫様と一緒に食堂へ行くところでして……よければ、みなさんもいかがですか? メルウィンさんが、ビスコッティを焼いてくれたんですよ」
「いらねェ~。私室でテキトーに食べるし。ウサちゃんも、オレと食べるよな?」
「………………」
「ン? なに?」
『……メルウィンから、連絡をもらって……約束を……』
『いきたいってこと?』
『……できれば』
『たぶん、あなたがこわがってるやつも、くるよ?』
『…………それは、大丈夫』
『………………』
セトたちには分からない会話がなされたかと思うと、ロキは腕から彼女を放した。不満げな顔ではあったが。
「おはよぉ、ありす」
「……おはよう」
解放された彼女に、ハオロンが口角を上げて声をかけた。彼女は笑顔を浮かべることなく、小さな声で返す。セトには、恐れているようにも見えた。震える小動物のイメージが重なる。
考えていると、彼女の目がセトへと流れ、
「……おはよう」
「……ああ」
セトは目の合った彼女を上から下までさっと確認したが、とくに異変は見つけられない。昨日のあのひとふうの見た目ではなくなっているくらい。ロキの〈死んだ〉〈殺した〉というワードに引っかかりを感じてはいたが、何も触れられずにいた。
「うちも、一緒に行っていいかぁ?」
「もちろんですよ」
ハオロンとアリアが言葉を交わし、エレベータへと進んだ。ロキも「……じゃ、オレも」露ほども乗り気でないようすで足を動かす。ロキは彼女の肩に手を乗せていて、彼女もまた引っ張られるようにして歩を進めたが、ひとり残されたセトに気づき頭だけ振り返った。
「せとは……たべない……?」
「俺は——」
質問に答えようとしたセトから目をそらさせるように、ロキが彼女の頭を前に向けた。
「朝食なんてとっくに食ってるって。犬は無駄に早起きだから」
「……いぬ?」
「い~から、早く」
彼女を急かしてエレベーターに押し込んだロキは、乗る直前、セトに一瞥をやって舌を出した。嫌がらせたっぷりの、悪意ある流し目に、
「なんだよ!」
エレベーターのドアが閉じ、置き去りにされたセトの文句が、むなしく廊下に響いていた。
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