42 / 47
42.成功報酬
しおりを挟む
アマンダお姉様を見送ってイグレシアスに戻る。カーラとユージーンはアカデミーの二年目が始まるまではラッシュブルックで過ごし、婚約の報告やその他諸々の後処理をするそう。その中にはアマンダお姉様にあることないこと吹聴した、サーティス家の令嬢のことも含まれているそうだ。
「兄の婚約者候補らしいけどな。俺はそれを許すつもりはないぜ」
意地悪そうに言ったユージーン。普段は割りとクールでポーカーフェースなのに、カーラのことが絡むと表情豊かよね。前の扉の中でエマと付き合っているときはこんな表情しなかったから、やっぱり無理して付き合っていたんだと実感する。
レジナルドとアナスタシア妃、それにマシューとサイモンもそれぞれ自国に戻っていて、二年目が始まるまでは私も落ち着いて過ごせそう……そうだ、シアーラのことを忘れていたわ。彼女の協力なしに今回の事件は解決しなかっただろうから、成功報酬はきっちり支払わなければ。
彼女はイーサクルの古文書さえ見せてくれれば報酬はいらないと言っていたけれど、私に協力して事件解決に大いに貢献したと言うことでお父様から報奨が。謁見の間に彼女を招き、結構な額の金貨と、そして王家に伝わるあるものが贈られた。
「そなたは古代イーサクルに造形が深いと聞く。エマに協力して事件解決に貢献したことを称し、これを遣わそう」
私も見たことなかったけど、それは渋い銀色に輝く杖。杖と言っても長いアレではなく、魔法使いが使う五十センチぐらいのもの。おー、この世界でも昔はあんなものを使っていたのか! 私に持たせてくれたら、絶対『エクスペクトー!』とかやってただろうな。まあ、何も起きないんだけど。
「この様なものを宜しいのですか?」
「イグレシアスはもう十分平和ゆえイーサクルではなくイーサラムが主流だ。しかし今後も今回の様なことがあるやもしれん。そなたがその杖を以て今後も正義を為さんこと期待しておる」
「はっ! 拝命致しました」
それってもう、宮廷魔導師じゃん! ちょっとカッコいいんですけど。
杖をもらって上機嫌のシアーラ。顔には出さない様にしてるみたいだけど、会話してる端々で彼女のテンションが上がっているのが分かる。そんな彼女を連れて蔵書室へ。人払いをしたあといつもの壁際に行って、秘密の部屋への通路を開ける。
「こんな通路が!?」
「知ってるのは私とあなただけだから、内緒よ」
通路を進んで秘密の部屋に入ると、私の研究成果などが机の上に散らかっているのが目に入ったのか、そちらに寄っていくシアーラ。
「これはあのボード?」
「そうよ。イーサグラムの小型化をここでやっていたの。今は別のことを研究中だけど」
「あなた、本当に王女様なの?」
「表の顔はね」
冗談を言い合いながら奥の本棚へ。結構な数の本が並んでいるそこは、現状私もノータッチ。数冊はチラッっと中身も見てみたけど全然分からなかった。
「ここにあなたのお目当ての本があるかは分からないけど、イーサ関係のかなり古い本が集まってるのは確かよ」
「……」
恐る恐る一冊を手に取り開くシアーラ。途端に表情がパッと明るくなり、もう笑みが隠せない感じに。食い入る様に読んでいたかと思うと、別の本、また別の本と何冊も手に取り、少し震えている様にすら見える。
「これ、全部見てもいいの!?」
「もちろん。好きなだけどうぞ……って言うか、あなたもそんな顔するのね」
「ハッ!」
普段の彼女からは考えられない、キラキラした目の緩んだ表情。いつものミステリアスさはどこに行ったの? どこかあどけない彼女のそんな表情を見て、彼女に対する親近感が一気にレベルアップ! その顔はオタクが目的の薄い本を手に入れた時の顔よ! 私の中でシアーラは魔法オタク確定だわ。
「ああ、もうここに住み込みたいぐらいだわ!」
「住めばいいじゃない。流石にこの部屋は無理だけど、王宮内に部屋を準備してあげるぐらいならできるわよ」
「ホント!? いや、でも、一介の占い師が王宮に住むのは変よね」
まあ、それもそうか。じゃあ宮廷魔導師団長……はちょっと違う気もするし、バーバラの後釜のメイドってわけにもいかないし、そもそも彼女とは同じアカデミーのクラスメイトとして対等な立場の方がいいなあ。えーっと、じゃあ家庭教師的なコンサル的な何かかな。
「じゃあ、私専属の相談役に任命します。表向きはアカデミーの勉強に対するアドバイスをするってことで」
「いいの!?」
「ええ。それでは改めてよろしく、シアーラ」
「はい、姫様。拝命致します」
こうしてシアーラは私の相談役として王宮に住み込むことに。部屋も用意されて蔵書室及び秘密の部屋への出入りも許可する。彼女のオタク性も見いだせたし、これからはもっと親しく付き合えそうだわ。カーラを呼んで女性同士お茶するのもいいわね。とにかくこれからも宜しく、シアーラ。
そうそう。余談だけどどこから漏れたのか、その後シアーラが王都でも話題になっていた占い店の占い師だと王宮内に広まって、時々こっそり彼女の元に占ってもらいに来る人が増えたそう。本人も楽しそうだしまあいいんだけど、どこから漏れたかなあ。恐らくレオ辺りでは? と思っているんだけど……その内問い詰めてやろう。
「兄の婚約者候補らしいけどな。俺はそれを許すつもりはないぜ」
意地悪そうに言ったユージーン。普段は割りとクールでポーカーフェースなのに、カーラのことが絡むと表情豊かよね。前の扉の中でエマと付き合っているときはこんな表情しなかったから、やっぱり無理して付き合っていたんだと実感する。
レジナルドとアナスタシア妃、それにマシューとサイモンもそれぞれ自国に戻っていて、二年目が始まるまでは私も落ち着いて過ごせそう……そうだ、シアーラのことを忘れていたわ。彼女の協力なしに今回の事件は解決しなかっただろうから、成功報酬はきっちり支払わなければ。
彼女はイーサクルの古文書さえ見せてくれれば報酬はいらないと言っていたけれど、私に協力して事件解決に大いに貢献したと言うことでお父様から報奨が。謁見の間に彼女を招き、結構な額の金貨と、そして王家に伝わるあるものが贈られた。
「そなたは古代イーサクルに造形が深いと聞く。エマに協力して事件解決に貢献したことを称し、これを遣わそう」
私も見たことなかったけど、それは渋い銀色に輝く杖。杖と言っても長いアレではなく、魔法使いが使う五十センチぐらいのもの。おー、この世界でも昔はあんなものを使っていたのか! 私に持たせてくれたら、絶対『エクスペクトー!』とかやってただろうな。まあ、何も起きないんだけど。
「この様なものを宜しいのですか?」
「イグレシアスはもう十分平和ゆえイーサクルではなくイーサラムが主流だ。しかし今後も今回の様なことがあるやもしれん。そなたがその杖を以て今後も正義を為さんこと期待しておる」
「はっ! 拝命致しました」
それってもう、宮廷魔導師じゃん! ちょっとカッコいいんですけど。
杖をもらって上機嫌のシアーラ。顔には出さない様にしてるみたいだけど、会話してる端々で彼女のテンションが上がっているのが分かる。そんな彼女を連れて蔵書室へ。人払いをしたあといつもの壁際に行って、秘密の部屋への通路を開ける。
「こんな通路が!?」
「知ってるのは私とあなただけだから、内緒よ」
通路を進んで秘密の部屋に入ると、私の研究成果などが机の上に散らかっているのが目に入ったのか、そちらに寄っていくシアーラ。
「これはあのボード?」
「そうよ。イーサグラムの小型化をここでやっていたの。今は別のことを研究中だけど」
「あなた、本当に王女様なの?」
「表の顔はね」
冗談を言い合いながら奥の本棚へ。結構な数の本が並んでいるそこは、現状私もノータッチ。数冊はチラッっと中身も見てみたけど全然分からなかった。
「ここにあなたのお目当ての本があるかは分からないけど、イーサ関係のかなり古い本が集まってるのは確かよ」
「……」
恐る恐る一冊を手に取り開くシアーラ。途端に表情がパッと明るくなり、もう笑みが隠せない感じに。食い入る様に読んでいたかと思うと、別の本、また別の本と何冊も手に取り、少し震えている様にすら見える。
「これ、全部見てもいいの!?」
「もちろん。好きなだけどうぞ……って言うか、あなたもそんな顔するのね」
「ハッ!」
普段の彼女からは考えられない、キラキラした目の緩んだ表情。いつものミステリアスさはどこに行ったの? どこかあどけない彼女のそんな表情を見て、彼女に対する親近感が一気にレベルアップ! その顔はオタクが目的の薄い本を手に入れた時の顔よ! 私の中でシアーラは魔法オタク確定だわ。
「ああ、もうここに住み込みたいぐらいだわ!」
「住めばいいじゃない。流石にこの部屋は無理だけど、王宮内に部屋を準備してあげるぐらいならできるわよ」
「ホント!? いや、でも、一介の占い師が王宮に住むのは変よね」
まあ、それもそうか。じゃあ宮廷魔導師団長……はちょっと違う気もするし、バーバラの後釜のメイドってわけにもいかないし、そもそも彼女とは同じアカデミーのクラスメイトとして対等な立場の方がいいなあ。えーっと、じゃあ家庭教師的なコンサル的な何かかな。
「じゃあ、私専属の相談役に任命します。表向きはアカデミーの勉強に対するアドバイスをするってことで」
「いいの!?」
「ええ。それでは改めてよろしく、シアーラ」
「はい、姫様。拝命致します」
こうしてシアーラは私の相談役として王宮に住み込むことに。部屋も用意されて蔵書室及び秘密の部屋への出入りも許可する。彼女のオタク性も見いだせたし、これからはもっと親しく付き合えそうだわ。カーラを呼んで女性同士お茶するのもいいわね。とにかくこれからも宜しく、シアーラ。
そうそう。余談だけどどこから漏れたのか、その後シアーラが王都でも話題になっていた占い店の占い師だと王宮内に広まって、時々こっそり彼女の元に占ってもらいに来る人が増えたそう。本人も楽しそうだしまあいいんだけど、どこから漏れたかなあ。恐らくレオ辺りでは? と思っているんだけど……その内問い詰めてやろう。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
転生しても侍 〜この父に任せておけ、そう呟いたカシロウは〜
ハマハマ
ファンタジー
ファンタジー×お侍×父と子の物語。
戦国時代を生きた侍、山尾甲士郎《ヤマオ・カシロウ》は生まれ変わった。
そして転生先において、不思議な力に目覚めた幼い我が子。
「この父に任せておけ」
そう呟いたカシロウは、父の責務を果たすべくその愛刀と、さらに自らにも目覚めた不思議な力とともに二度目の生を斬り開いてゆく。
※表紙絵はみやこのじょう様に頂きました!
私の愛した召喚獣
Azanasi
ファンタジー
アルメニア王国の貴族は召喚獣を従者として使うのがしきたりだった。
15歳になると召喚に必要な召喚球をもらい、召喚獣を召喚するアメリアの召喚した召喚獣はフェンリルだった。
実はそのフェンリルは現代社会で勤務中に死亡した久志と言う人間だった、久志は女神の指令を受けてアメリアの召喚獣へとさせられたのだった。
腐敗した世界を正しき方向に導けるのかはたまた破滅目と導くのか世界のカウントダウンは静かに始まるのだった。
※途中で方針転換してしまいタイトルと内容がちょっと合わなく成りつつありますがここまで来てタイトルを変えるのも何ですので、?と思われるかも知れませんがご了承下さい。
注)4章以前の文書に誤字&脱字が多数散見している模様です、現在、修正中ですので今暫くご容赦下さい。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
少女漫画の当て馬女キャラに転生したけど、原作通りにはしません!
菜花
ファンタジー
亡くなったと思ったら、直前まで読んでいた漫画の中に転生した主人公。とあるキャラに成り代わっていることに気づくが、そのキャラは物凄く不遇なキャラだった……。カクヨム様でも投稿しています。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる