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第五節 〜ギルド、さまざまないろ〜
056 よく喋るんだな。ギャップ萌え狙いか
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オッサンて、若者には出せないカッコよさがありますよね、
ってお話し。そしてやっぱり女王様はイイ。
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
黒い◆が人物の視点の変更の印です。
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
◆ (引き続き、“小太り《傭兵》おじさん”の視点です)
―――――――――
性格悪いだろ、この女。
二年前、俺はちょっとした頼まれごとをされ、受けた。唯の依頼、何時もの仕事、俺らは傭兵だからリターンさえ充分なら受ける。
それは充分なリターンだった。『過ぎて』いたのが気にはなったが。今思えば俺も歳を取ってたって事だろう。
依頼者は下品な赤い鎧の男から、内容は“紹介”だ。“適当な”冒険者を一人仲介してほしいと。その“適当な”がなかなか難しい。でも俺もこの業界は長え、色んな意味で。選んだ男は腕もそこそこランクもそこそこ、冒険者としては中堅でそこそこ稼いでいるが、裏では傭兵の真似事でたんまり稼いでいた男。
ライセンスが有ると無いとじゃこうも違うのかと、俺より稼いでんじゃねえかと。まあ、俺も色々利用させてもらってはいたが、惜しい程じゃないしと、仲介した。“下品な赤い鎧”には大層喜んでもらった。
男が受けた依頼の内容は知らない。でも直ぐに男が行った仕事の効果は知れる事となった。まあ、ヤツの所為だけじゃなねぇとは思うが、“遷”の真っ只中でのギルドの突然の崩壊と、その結果のカトンボ共の街への大量浸透。
男が思いの外優秀だったのか、或いは謀った赤鬼が辛辣だったのか。
俺たちは逃げた。関係ないし街を守る義務もない。俺たちは傭兵だから。あとは最初から街に配置された少数の冒険者と住民がなんとするだろうと思う事にした。実際は街はもう駄目だろうと思った。
俺らに出来るのは壊滅ギリギリの街に戻り、防衛戦で疲弊したカトンボ共が溶けて無くなる前に魔晶石を掻き集めるだけ掻き集める事だ。傭兵だから当たり前だ。
魔晶石は思った以上に大量に手に入った。
以外だったのは、街は消滅していなかった。結構残っていた。街並も住民も。迎撃にあたった冒険者と街の男たちには多大な被害が出たようだが。
今回の防衛迎撃戦で、領兵の損害は皆無だったと聞く。そもそも参戦していなかったらしい。
そんな中、“下品な赤の鎧”が領主である男爵の配下である事を知った。
「よう、あの男がどうしているか知っているか」
「さあな、ギルドも沢山死んだからな、やっぱり死んだんじゃないか」
「そうか」と俺。
「アンタもせいぜい気をつける事だな」
「……ああ、せいぜい気をつけるぜ、記憶を無くす位にはな」
「其れがいい」と今度は本当にニヤニヤ笑いを浮かべて“下品な赤の鎧”は言った。ニヤニヤ笑いはまるで『残念だぜ』と呟いているように聴こえた。
それが二年前の俺の事情だ。
◇
今年は行かないつもりだった。噂ではギルドがもう当てに出来ず領主が大々的に傭兵を募集しているとの事。ああなった以上は他方の冒険者も尻込みして集まらいだろうと、もう傭兵しか頼れないとして“取っ払い”は勿論、多くの報酬を用意して待っていると。
それでも俺は行く気はなかった。
そんな中、領主の手の者だという小心そうな男が俺の団を訪ねてきた。態々のご指名依頼だ。たんまりとしたリターンを携えて。五人十人のチマチマした連携の取れない冒険者が何人集まろうと結局戦力にはならない。欲しいのは大隊規模だと。せいぜい百人弱が大隊とは笑わせるが、配下には快かったようだ。
だからこそ眉間に皺を寄せ、俺は尋ねた「下品な赤い鎧の男はなんて言ってるんだ」と。
領主の手の者は眼間に皺を寄せ暫し考え「ああ、居ましたね赤い下品なの。確か一年半も前になんか不味い事を仕出かしていたのがバレて、領主様に処分されてましたね。可哀想ではありました」
それでも俺は行く気なんか無かった。
それでも行かざる得なくなったのは俺の側近の男が強固に遠征を主張し、団全員の総意を取り付けて俺に迫って来ていたからだった。
「この報酬で行かねーってのは無しですぜお頭! 俺は金が欲しい。来月にはガキも生まれる。俺ら傭兵なんですぜ‼ 行きゃしょうや、行かなきゃ嘘だ!」
変なフラグ立てやがって、知らねえぞ。
俺は傭兵だ。やべー事も人様に言えない事もする。でも限度がある。非道もするが最後までは落ちず、ギリギリな仕事を選ぶ。今回の、いや二年前の仕事がギリギリを超えて至って、ことなんだろうな。ツイてない。
街の、裏の城門を潜る前、二年前には未完成だった領主の趣味の悪い館に挟まれた場所で捕縛された。
俺らだって伊達に傭兵団をやってる訳じゃない。急襲を受けた位で簡単に崩れる程に軟弱では無いつもりだった。それが一蹴だった。
領主軍は“飛竜落とし”を使いやがった。四方から一斉に投網で絡め取られたのだ。手足に絡みつく蜘蛛の糸に藻掻く俺らを網越しに、派手で装飾過多な鎧を身に着けた領兵達は無言で槍を刺し入れ、殺していった。
「オレらはカトンボじゃねーぞ!」
そう叫んでいた俺の隣にいた、団を煽った側近はイの一番に刺殺された。酷く驚いた顔をしていた。おい、お前は記憶を無くすくらい黙っているって念を押さなかったのかよと、口にする途中で止めた。念押しした俺も同じくココに居るんだったけな。
配下の数が三分の二に減った頃に例の“下品な赤の鎧”が現れた。そりゃ生きてるよな。領主の配下の小心男の姿もあった。何度も頭を下げ拝む様に俺に謝っていたが、全然済まなそうには見えなかった。
俺は“下品な赤い鎧”に言った。
「記憶はちゃんと無くしといたんだぜ」
「だから今、死んでねぇだろ」
一人だけで投獄されていた。その間、狭い独房の窓越しに続々と傭兵共が街に入っていくのを眺めていた。金と欲に目が眩んだ愚か者たち。でもしょうがない。突き殺された俺の側近も俺も奴等も傭兵だから。
十日目に俺の牢の前に引出され、面会させられたのは二年前のあの男だった。生きていたらしい。顔色も良く、こざっぱりした服装をしていた。元気そうだった。ただ、首に鎖が巻かれ、紐に繋がれ、両手の親指と小指が切り落とされ、両足の腱が切断されていたとしてもだが。そして「私は、副ギルド長を殺しました。『名もなき傭兵団』団長、重旋風のベルディの指示です」と繰り返していた。
よく出来ていやがる。
証言や目撃談などは精神魔法で幾らでも改ざんできるが、その代わり痕跡は必ず残り、頭の中を覗ける腕のいい干渉系魔法師なら見破ることも容易い。だから二年間も掛けて素で証言する様に“造った”のだろう。
だから領主さんよ。仕事が細ケーよ。たかが傭兵団の頭を縛り首にするのにそんな裏を取る奴なんて然う然ういねーぜ。
「まあ、そう言ってやるなよ。マジメなんだよウチのご主人さまはよ」
「領主が勤勉なのはイイことだよな」
(長生きできないタイプだな、とは流石に口にしないだけの分別は持っていた)
「ふふ、何考えてるかわかるぜ。まあ、うちのご主人様はチキンだが人の心を折る術は得意だって事だ。実感したろ。それでだ、お前も牢屋の小窓から覗いて知ってると思うが、この街には続々と傭兵共が集まって来ている。その纏め役をお前にやってもらおうとおもう。業界最大手、信義と信頼度を誇る大親分のお前にしか出来ないことだ。
頼むぜ大親分。
ああ、実際の実戦時の指揮は俺が担当するからそのつもりでな、お前の担当は内政だ。こっちには絶対に手は出すなよ。オレら味方に得意の魔法をぶっ放して自慢の大剣をブン廻されちゃあ叶わないからな。
最初は俺が実戦も纏め役も両方やるつもりだったがな、面倒くさくなっちゃってな、それに俺は事務仕事は苦手だ。頼むぜ、大将。
俺は仕事柄普段は小規模部隊運用が専門でな、大規模軍の指揮なんて滅多に執る事なんて無いからよ、ちょっと楽しみなんだ」
「お前、よく喋るんだな。ギャップ萌え狙いか。似合わないぜ」
「……。
内政ってことは内部の粛清もお前の仕事だ。手を抜くなよ。
ああ、そうだ、カトンボ襲来までは“溜まりの深森”からの魔物共の迎撃に兵隊を出す。今回は森からの脅威も激しいみたいだ。理由は分からんがな。当分はお前は森側、高架下の検問所に詰めてくれ。それと近いうちに若いネーチャン一人に男女のガキの三人組が通るかもしれない。街に入ったら知らせてくれ。頼むぜ」
◇
絶対に生きて帰ってこれないであろう、敢えてスリ潰すような命令なんて何十回もしてきた。だから慣れたもんだ。
その後、俺も三十人ぐらいは粛清した。
それ以上だったのが“赤鎧”だった。
街から逃げ出そうとした幾つかの傭兵団は哀れだった。“溜まりの深森”を抜けて逃げるなど自殺行為で、結局裏門から大人数で強行突破を試みたが、領主の醜悪な館からの魔法の一斉攻撃で壊滅していた。
見ていた者の話では、そりゃ派手に手足が飛んでったそうだ。
傭兵の数が半分ぐらいに減った、最初にカトンボが飛来した日に“赤鎧”が言っていた三人組が検問所を通った。
今、目の前に戻ってきて、俺に話しかけている。
ああ、また一人、俺の配下ではないが若い、話した事はないが何時も皺くちゃな手紙を何度も読み返していた、まだ幼さの残るバカの肩口に魔物の牙が食い込み、右腕が派手に千切れて飛んでいった。俺の手が取り上げられた自慢の大剣を探して彷徨った。
「仕返し、したくないですか?」
とても美しい目の前の少女が、そう囁いた。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
ってお話し。そしてやっぱり女王様はイイ。
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
黒い◆が人物の視点の変更の印です。
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
◆ (引き続き、“小太り《傭兵》おじさん”の視点です)
―――――――――
性格悪いだろ、この女。
二年前、俺はちょっとした頼まれごとをされ、受けた。唯の依頼、何時もの仕事、俺らは傭兵だからリターンさえ充分なら受ける。
それは充分なリターンだった。『過ぎて』いたのが気にはなったが。今思えば俺も歳を取ってたって事だろう。
依頼者は下品な赤い鎧の男から、内容は“紹介”だ。“適当な”冒険者を一人仲介してほしいと。その“適当な”がなかなか難しい。でも俺もこの業界は長え、色んな意味で。選んだ男は腕もそこそこランクもそこそこ、冒険者としては中堅でそこそこ稼いでいるが、裏では傭兵の真似事でたんまり稼いでいた男。
ライセンスが有ると無いとじゃこうも違うのかと、俺より稼いでんじゃねえかと。まあ、俺も色々利用させてもらってはいたが、惜しい程じゃないしと、仲介した。“下品な赤い鎧”には大層喜んでもらった。
男が受けた依頼の内容は知らない。でも直ぐに男が行った仕事の効果は知れる事となった。まあ、ヤツの所為だけじゃなねぇとは思うが、“遷”の真っ只中でのギルドの突然の崩壊と、その結果のカトンボ共の街への大量浸透。
男が思いの外優秀だったのか、或いは謀った赤鬼が辛辣だったのか。
俺たちは逃げた。関係ないし街を守る義務もない。俺たちは傭兵だから。あとは最初から街に配置された少数の冒険者と住民がなんとするだろうと思う事にした。実際は街はもう駄目だろうと思った。
俺らに出来るのは壊滅ギリギリの街に戻り、防衛戦で疲弊したカトンボ共が溶けて無くなる前に魔晶石を掻き集めるだけ掻き集める事だ。傭兵だから当たり前だ。
魔晶石は思った以上に大量に手に入った。
以外だったのは、街は消滅していなかった。結構残っていた。街並も住民も。迎撃にあたった冒険者と街の男たちには多大な被害が出たようだが。
今回の防衛迎撃戦で、領兵の損害は皆無だったと聞く。そもそも参戦していなかったらしい。
そんな中、“下品な赤の鎧”が領主である男爵の配下である事を知った。
「よう、あの男がどうしているか知っているか」
「さあな、ギルドも沢山死んだからな、やっぱり死んだんじゃないか」
「そうか」と俺。
「アンタもせいぜい気をつける事だな」
「……ああ、せいぜい気をつけるぜ、記憶を無くす位にはな」
「其れがいい」と今度は本当にニヤニヤ笑いを浮かべて“下品な赤の鎧”は言った。ニヤニヤ笑いはまるで『残念だぜ』と呟いているように聴こえた。
それが二年前の俺の事情だ。
◇
今年は行かないつもりだった。噂ではギルドがもう当てに出来ず領主が大々的に傭兵を募集しているとの事。ああなった以上は他方の冒険者も尻込みして集まらいだろうと、もう傭兵しか頼れないとして“取っ払い”は勿論、多くの報酬を用意して待っていると。
それでも俺は行く気はなかった。
そんな中、領主の手の者だという小心そうな男が俺の団を訪ねてきた。態々のご指名依頼だ。たんまりとしたリターンを携えて。五人十人のチマチマした連携の取れない冒険者が何人集まろうと結局戦力にはならない。欲しいのは大隊規模だと。せいぜい百人弱が大隊とは笑わせるが、配下には快かったようだ。
だからこそ眉間に皺を寄せ、俺は尋ねた「下品な赤い鎧の男はなんて言ってるんだ」と。
領主の手の者は眼間に皺を寄せ暫し考え「ああ、居ましたね赤い下品なの。確か一年半も前になんか不味い事を仕出かしていたのがバレて、領主様に処分されてましたね。可哀想ではありました」
それでも俺は行く気なんか無かった。
それでも行かざる得なくなったのは俺の側近の男が強固に遠征を主張し、団全員の総意を取り付けて俺に迫って来ていたからだった。
「この報酬で行かねーってのは無しですぜお頭! 俺は金が欲しい。来月にはガキも生まれる。俺ら傭兵なんですぜ‼ 行きゃしょうや、行かなきゃ嘘だ!」
変なフラグ立てやがって、知らねえぞ。
俺は傭兵だ。やべー事も人様に言えない事もする。でも限度がある。非道もするが最後までは落ちず、ギリギリな仕事を選ぶ。今回の、いや二年前の仕事がギリギリを超えて至って、ことなんだろうな。ツイてない。
街の、裏の城門を潜る前、二年前には未完成だった領主の趣味の悪い館に挟まれた場所で捕縛された。
俺らだって伊達に傭兵団をやってる訳じゃない。急襲を受けた位で簡単に崩れる程に軟弱では無いつもりだった。それが一蹴だった。
領主軍は“飛竜落とし”を使いやがった。四方から一斉に投網で絡め取られたのだ。手足に絡みつく蜘蛛の糸に藻掻く俺らを網越しに、派手で装飾過多な鎧を身に着けた領兵達は無言で槍を刺し入れ、殺していった。
「オレらはカトンボじゃねーぞ!」
そう叫んでいた俺の隣にいた、団を煽った側近はイの一番に刺殺された。酷く驚いた顔をしていた。おい、お前は記憶を無くすくらい黙っているって念を押さなかったのかよと、口にする途中で止めた。念押しした俺も同じくココに居るんだったけな。
配下の数が三分の二に減った頃に例の“下品な赤の鎧”が現れた。そりゃ生きてるよな。領主の配下の小心男の姿もあった。何度も頭を下げ拝む様に俺に謝っていたが、全然済まなそうには見えなかった。
俺は“下品な赤い鎧”に言った。
「記憶はちゃんと無くしといたんだぜ」
「だから今、死んでねぇだろ」
一人だけで投獄されていた。その間、狭い独房の窓越しに続々と傭兵共が街に入っていくのを眺めていた。金と欲に目が眩んだ愚か者たち。でもしょうがない。突き殺された俺の側近も俺も奴等も傭兵だから。
十日目に俺の牢の前に引出され、面会させられたのは二年前のあの男だった。生きていたらしい。顔色も良く、こざっぱりした服装をしていた。元気そうだった。ただ、首に鎖が巻かれ、紐に繋がれ、両手の親指と小指が切り落とされ、両足の腱が切断されていたとしてもだが。そして「私は、副ギルド長を殺しました。『名もなき傭兵団』団長、重旋風のベルディの指示です」と繰り返していた。
よく出来ていやがる。
証言や目撃談などは精神魔法で幾らでも改ざんできるが、その代わり痕跡は必ず残り、頭の中を覗ける腕のいい干渉系魔法師なら見破ることも容易い。だから二年間も掛けて素で証言する様に“造った”のだろう。
だから領主さんよ。仕事が細ケーよ。たかが傭兵団の頭を縛り首にするのにそんな裏を取る奴なんて然う然ういねーぜ。
「まあ、そう言ってやるなよ。マジメなんだよウチのご主人さまはよ」
「領主が勤勉なのはイイことだよな」
(長生きできないタイプだな、とは流石に口にしないだけの分別は持っていた)
「ふふ、何考えてるかわかるぜ。まあ、うちのご主人様はチキンだが人の心を折る術は得意だって事だ。実感したろ。それでだ、お前も牢屋の小窓から覗いて知ってると思うが、この街には続々と傭兵共が集まって来ている。その纏め役をお前にやってもらおうとおもう。業界最大手、信義と信頼度を誇る大親分のお前にしか出来ないことだ。
頼むぜ大親分。
ああ、実際の実戦時の指揮は俺が担当するからそのつもりでな、お前の担当は内政だ。こっちには絶対に手は出すなよ。オレら味方に得意の魔法をぶっ放して自慢の大剣をブン廻されちゃあ叶わないからな。
最初は俺が実戦も纏め役も両方やるつもりだったがな、面倒くさくなっちゃってな、それに俺は事務仕事は苦手だ。頼むぜ、大将。
俺は仕事柄普段は小規模部隊運用が専門でな、大規模軍の指揮なんて滅多に執る事なんて無いからよ、ちょっと楽しみなんだ」
「お前、よく喋るんだな。ギャップ萌え狙いか。似合わないぜ」
「……。
内政ってことは内部の粛清もお前の仕事だ。手を抜くなよ。
ああ、そうだ、カトンボ襲来までは“溜まりの深森”からの魔物共の迎撃に兵隊を出す。今回は森からの脅威も激しいみたいだ。理由は分からんがな。当分はお前は森側、高架下の検問所に詰めてくれ。それと近いうちに若いネーチャン一人に男女のガキの三人組が通るかもしれない。街に入ったら知らせてくれ。頼むぜ」
◇
絶対に生きて帰ってこれないであろう、敢えてスリ潰すような命令なんて何十回もしてきた。だから慣れたもんだ。
その後、俺も三十人ぐらいは粛清した。
それ以上だったのが“赤鎧”だった。
街から逃げ出そうとした幾つかの傭兵団は哀れだった。“溜まりの深森”を抜けて逃げるなど自殺行為で、結局裏門から大人数で強行突破を試みたが、領主の醜悪な館からの魔法の一斉攻撃で壊滅していた。
見ていた者の話では、そりゃ派手に手足が飛んでったそうだ。
傭兵の数が半分ぐらいに減った、最初にカトンボが飛来した日に“赤鎧”が言っていた三人組が検問所を通った。
今、目の前に戻ってきて、俺に話しかけている。
ああ、また一人、俺の配下ではないが若い、話した事はないが何時も皺くちゃな手紙を何度も読み返していた、まだ幼さの残るバカの肩口に魔物の牙が食い込み、右腕が派手に千切れて飛んでいった。俺の手が取り上げられた自慢の大剣を探して彷徨った。
「仕返し、したくないですか?」
とても美しい目の前の少女が、そう囁いた。
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よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
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2024年10月追記
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1ページの文字数は少な目です。
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バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
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