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仲間

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同日午後。
「高志がいない?」
ウィリーが問いただす。
「すまない、近所の書店に行くと言うのを、いつもの軽い放浪癖と思って放置してしまった。」
そう、留守番をする形となっていたケントが返す。
「スマホも、メッセージアプリも通じない…ケンが探知ブロックかけてくれてることは知ってる筈なのに…。」
露骨に不安げな表情を浮かべるさくら。
「普段のアイツでは考えられないよな。」
芦屋の言葉に、リーも頷く。
「ここは、アレをやるしかないか。
いくら僕らと言っても、本来それぞれのプライベートには…。」
「今それどころでないことは誰もが承知だ。ケン、やってくれ。」
「OKウィリー!」
ケントは PCの前に座り、凄まじいスピードでタイピングを始める。

一方…高志は新幹線車中。既に静岡駅を出ていた。
スマホの電源は…切ってある。
仲間に頼る、という考えは今回は封じた。
無論一人で来いとの向こうの指示もある。
が、けして傲慢ではなく、客観的に見て、今、仲間と行動しても、彼らと戦力的に噛み合わないと判断したからだ。
奈路海組だけならいい。
しかし、さくらが前回は倒したという華国工作員兼工作員が中心の一党が、さらに戦力を増強して加勢…というより全体の絵を描いている可能性が高い。
それに対抗するには…ここ数日で加速度的に進化した正中線を活かした、
「新たなる未知の自分」を解禁する。
それしかない。
それで、恐らくは前回よりは明らかに強いであろう、華国の猛者(達)と渡り合って見せる。
それが、迫真空手家としての、いや、ヒトを超えようとする俺の、一つの試金石…
みんな、申し訳ない!
けして理解はされないだろうけど、それが俺の目指す…。
そして…彼女を…七瀬さんに手を出した報いは当然一千倍に…。
怒りの炎は、胸の中にだけに今は収める。
そして豊橋駅へ…。
こんな形での、帰省となるとはな。
無論実家に帰ってなどいられない。
さて…。
ホームに立ち、スマホの電源を…。
「神崎だ。」
「そのまま予定通りに来い。誰も連れてきていないな。」
「勿論だ。動画に切り替えて見せてもいい。」
「…とにかくこのまま急げ。」
感情を抑えたまま、スマホを切…
メッセージアプリの音声着信。
くっ…やむを得ない。
「はい。」
「この大馬鹿ものが!!」
東郷先生を思わせる、ウィリーの怒声。
「すまない、すみません。」
「君が如何なる思いを持っていようが、私たちは一心同体だ!
一人で抱え込むな!
この通話自体、探知傍受されないように、ケンがウォールを張ってくれている。
君にそこまで一人で出来るか?」
「…はい。」
音声が唐突に切り替わる。
「高志さん!神父の言われる通りです!なんなの!何考えてるの!?何で?」
さくらさん…。
「ごめんなさい。ただ、今度助ける相手が、女の子で…その…。」
「だから何なの?七瀬さんが貴方の想い人だってくらいとっくに!
私がそれで怒ると思った!?
貴方が真っ直ぐな気持ちで彼女を助けたいなら、私もみんなも全力を尽くすよ!
貴方は特別なの、あらゆる意味で、堂々と意思をつたえてくれていいの!
なんなら命令でも!」
「…。」
胸が熱くなった。
なんでみんなそんなに…。
再びウィリー。
「約束の場所に急ぐのは構わん。
だがその後は無理攻めせず、なるべく時間を稼げ。
ケンが今集められるだけの情報を集めている。」
背景から聞こえる音から、川上社長が手配したであろうヘリに乗っているのは聞かずとも分かった。
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