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目覚めよ、日本人

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証拠提示の後、高志は語り始める。
「例えば幸せに両親や友達と暮らしていた少女が、ある日突然、いつもの家路に着いているときに見知らぬ男達に強引にさらわれ、とてつもない恐怖を味わいながら遠く離れた知らない国に連れていかれる。
40年以上、大切な両親にも会えない。
そうした例が何十も、現実に起きている!
ご本人の、ご家族の心情を少しでも想像してみて下さい。
こりゃたまらんですよ!!!

確かに与党の政治家達も何とかしようとはしている。
が、結局さまざまな縛りもあって、大国アメリカから言ってもらおうとか、そんな弱腰ばかりだ。
そうやって貴重な時間が過ぎるうちに、無念のうちに亡くなられるご家族も…。
こんな話があるか!
昔日本は戦争で悪いことをしました。
平和が一番です。
だから憲法9条で戦争を放棄します。
たしかに美しい理想だよ。
でも結果はどうだ?
日本の外はまだ、力、暴力と金、その論理で動いている。
日本が戦争を放棄しても、戦争は日本を放棄してくれないんだ。

だから、わが国民を返してくれ、いち早くご家族の元に。
さもないと日本はお前達を許さないぞ。

…たったそれだけのことが言えないのだ!

みんな、なんとも思わないか!?

日本があるべき形に成る事が出来ないのには色々な理由がある。
ひとつには、さっき言ったように教育やら本やらテレビやら、みんな戦争はいけない。で、向こうからやってくる理不尽な暴力への守りさえ、否定するような考え方が広まってしまったこと。
お陰で、最近までは、日本の為に厳しく訓練している自衛隊の皆さんが辛い思いをする羽目となってしまっていた。
もうひとつには、口では、平和だ、人権だ、男女平等だ。よその国や人種の人達とも話し合いや音楽とかで分かり合える、グローバルだ。
そういう、一見美しい言葉で、知らず知らずのうちに、日本の古くからある美しい伝統、美意識、オリジナリティや誇りが壊されようとしていること。
それ自体が価値のないものとして、俺ら世代にはそもそも伝わりもしないこと。
「国を守ろう」と言っただけで、ネトウヨだとかそんなに戦争がしたいのかと批判されまくる空気。

そんな風に仕向けている奴らが、日本の国内に大量に潜んで、マスコミを操作してみんなを騙し、天皇陛下を中心にしたこの日本という国を馬鹿にして、世界中に日本は悪の国と叫んで周り、自分達はちゃっかりみんなが頑張って働いた成果の金を横取りして独占している。
で、テレビではクソみたいな学者や文化人が、「日本にもし、よその国から軍隊が攻めてきたらさっさと降伏すればいい。殺すくらいなら殺されよう。」
などと言う始末だ。
騙されるな!
政治や大きな宗教や大企業とかに、もう手遅れ寸前なくらいに巣食ったそいつらの最終目標は、日本という国をある共産主義の超大国に売る事だ!

特にその国の、政府に逆らう事を許さない方針に従う軍隊に占領された国や民族達の末路は悲惨だ。
人権の尊重なんて感覚自体がないからなあいつらは。
人間扱いされないんだ。
あの国の富裕層達の都合で生きたまま臓器を抜かれ、民族の血を残さない為に女性は強制不妊手術をさせられたりする例は何万もある!
このままだと、日本もそうなる。

目を覚ませ!
日本の今の平和は、薄い氷の上にギリギリ成り立ってるんだ。
何が真の敵か考えよう。
平和だ人権だ、そういう美しい言葉をまず疑おう。
特別なことをする必要はない。
今仕事がある人は仕事を、勉強がある人は勉強を真面目に頑張ってくだされば、それが日本の為になる。
外国の方を差別しろともいわない。
それはなによりも日本人の美意識に反する。
ただ、もっと、国の内外で皆さんを守る自衛隊、海上保安庁、消防、警察の皆さんをリスペクトして欲しい。
国を守りきれないとどうなるかという想像力を、ほんの少しづつ働かせて欲しい。
そしてまずは、最初に言った、拉致被害者の皆さんを取り戻す事。
みんなそれぞれの社会の持ち場からでいいから、声を上げて欲しい。
今こそ北新鮮に、いや全世界に知らしめよう!
俺たち日本人の覚悟を!!!」

「うおおおおおおおお!!」
「よくぞ言ってくれたぜ!!」
ここに聴こえるはずのない、群衆の声。
ふとテレビモニターの方を見ると、渋谷スクランブル交差点付近で、映る筈の無い高志のYouTube画像が巨大モニターに映し出されるのを、若者達が見入って熱狂している…。
「ケンですか…」
いたずらっぽい当人の笑顔。この手の回線侵入、システムハッキングは朝飯前なのだろう。

「高志すてきー!!」
「顔見せてー」
「オラ、さっさとさらった日本人返せや北新鮮!!」
「俺は目覚めたぜ!」
「高志万歳!日本万歳!天皇陛下万歳!!!」

こちらは既に発信を切っている。
だが熱狂は加速し、YouTubeのコメント欄も、Twitterも巨大掲示板もパンク寸前であった。

胸全体が正中線と連動し、熱くなるのを高志は感じた。
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