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第二次ハワイ沖海戦②
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アメリカ 第三艦隊(第38任務部隊を包含) 旗艦 サウスダコタ。戦闘指揮所(CIC)
そこでハルゼーは日本艦隊現出の報を耳にする。
「よし、各艦レーダー員、索敵機。
けして逃すなよ。
敵攻撃隊を」
獰猛な笑みをハルゼーは浮かべる。
出撃前。太平洋艦隊司令長官に作戦概略を示された時、ハルゼーは戸惑い怒りかけたが。
真意を読み取った時はニヤリとした。
「後の先を取れ。その後の委細は貴官に任せる。」
これはこれで面白い。キルザジャップのひとつの様式美になれば…。
ハルゼーが葉巻を噛み切ったところで、敵大編隊接近の報が入る。
「敵艦隊まで100キロを切る。
高度を下げるが各機『お出迎え』には十分注意せよ!」
日本攻撃隊指揮官、友永少佐はそう呼びかける。
言われるまでもなく、零戦隊パイロット達は周辺空域を見直す。
高度6000に止まる組と、攻撃隊やや上空で直接掩護する組に分派する
藤浪は高高度組である。
「村上、才木、とにかく全周を見張れ。」
ついこないだまで自身が散々言われていたことを部下の列機2人に繰り返し指示する。
「…!」
雲の層から黒い影。
さして時間差無く、各機のパイロット達は気付きアクションを始める。
小隊ごとに散開。
とにかく最初の一撃をかわして…。
!!?
逆落としに突っ込んでくる無数の濃紺の影。
プラット&ホイットニー社エンジンの2000馬力の幾重もの唸り!
アレが…新型グラマン!
瞬く間に後ろ上方を占位されていた。
初陣の時とは異質な恐怖。
だが、もう自分一人だけのことを考えていられない。
「2機とも離れるな!」
一気にスロットルをあおり、急降下に転じる藤浪機。
部下も必死でついてきてる…か!
だがグラマンの群れも圧倒的なパワーをそのままダイヴスピードに変換して追い縋ってくる。
オレンジ色の火箭が後方から何条も…なんだこいつら何門機銃を搭載してんだ!?
「ヘイ構わん殺すぞ♂」
アメリカ側直掩戦闘機隊指揮官、ヘリントン少佐は戦場空域全体を俯瞰しつつ、自身も2機のゼロを墜とす。
順調だ…、まだ敵攻撃隊は我が艦隊の輪形陣に辿り着けていない。
墜ちている数は…日本機のが多い…。
見た限りでは。
だが、何か違和感。
そう、あのアップデートされた新型ゼロだ。
流石にわがF6Fヘルキャットを上回ることはないだろうが…?
「クソッ!なんだ奴らのダイヴスピード!
ひ弱な機体であんな強引な急降下を…!?」
そう、藤浪のみならず皆がいち早く気付き、若手にも使いやすい離脱&追尾方法として徹底させたこの機の強み。
シンプルな急降下が21型とは比べ物にならないスピードで活用できること。
機体、特に主翼強度の強化で可能となった。
そして高度1000に迫りかけた時。
「いくぞ、一気に引き起こせ!」
ぬぐおおおお!
勿論理論値上、機体の強度も舵が効くかも保証は無い。
だがとにかく全力で操縦桿を引く。
そして…。
取ったあッ!
綺麗に3機同時にとは行かないが全機高速宙返りに成功、4機のF6Fの後ろを取ったのだ。
「撃つ!」
200m前方のF6Fに20ミリ機関砲。
3発は主翼を貫通するが煙も吹かない。
刹那に後方確認をしつつさらに撃ち込む。
ようやくぐらりと傾くF6F。
自分の後方から20ミリの火箭、村上、才木が撃っているのだろう。
もう一機のF6Fが左翼から黒煙!?
共同撃墜!?
しかし後方から新たな敵の群れ。
「後ろからまた来る、深追いやめ!そいつはほっとけ、持たん!
次をやるぞ!」
藤浪の小隊は急旋回する。
敵の防弾からして致命傷になったかは五分五分。
しかし今のは村上と才木の共同撃墜ということにして報告しておいてやろう。
一方で、低空侵入を試みた攻撃隊本隊と零戦隊は初っ端から97艦攻中心に数十機を失った。
「クッ、噂以上の化け猫…
そして電波管制で的確に襲ってきやがる!」
言いながらも岩本は2機のF6Fを喰い、味方の進路啓開に努める。
どうにか敵艦隊輪形陣に辿り着いた日本側攻撃隊。
だが前回よりさらに熾烈になった各艦の対空砲火に、少しでも海面スレスレの低空から頭を上げた機は墜とされていく。
それでも数十機は艦隊中枢に辿り着き、戦艦サウスダコタに魚雷2発、爆弾1、エセックス級空母イントレビッド、フランクリンに爆弾2発づつをぶち当てる。
しかし、そこまでであった。
攻撃隊380機のうち、確実に200機近くは撃墜されたと帰路についた友永総隊長から無電を受けたとき、流石の小沢も動揺を隠しきれなかった。
そして報告を受けた時、ハワイ基地からの陸軍P38双発戦闘機が半分ほど爆装して殴りかかってくる、その対処への真っ最中という、予想内だが最悪の部類に入る事態。
300機の敵に90機超の直掩戦闘機。
向こうが不慣れな海上、対艦攻撃ということもあり、半分以上を撃墜したが、不運にも水平爆撃の800kg爆弾を翔鶴、瑞鳳、戦艦陸奥が喰らってしまった。
マズイな…空母飛龍艦橋で山口多聞が呟く。
まだ当面日は高い。
ハルゼーは本命の一撃を全力で放ってくる。
14:00頃に一旦直掩戦闘機隊を収容、その後、30分後に疲弊し切った攻撃隊が着艦してくる。
被弾機や、新人の機体の中には着艦事故も相次いだ。
そうした機体は各空母、海上投棄。
速やかな全機収容と、補給を終えた直掩戦闘機を発進させる。
間に合うか…!?
小沢らの危惧をあざ笑うように、実に550機のアメリカ攻撃隊が艦隊から50キロ先にあらわれたのが15:20
まだ直掩機は半分も上がっていない。
一航艦司令部が脂汗を流す中。
第一艦隊の戦艦大和。
つまり山本五十六自らが動き始めた。
空母群を守るように、長門、陸奥、日向、伊勢ら戦艦群が輪形陣を組んだのだ。
そこでハルゼーは日本艦隊現出の報を耳にする。
「よし、各艦レーダー員、索敵機。
けして逃すなよ。
敵攻撃隊を」
獰猛な笑みをハルゼーは浮かべる。
出撃前。太平洋艦隊司令長官に作戦概略を示された時、ハルゼーは戸惑い怒りかけたが。
真意を読み取った時はニヤリとした。
「後の先を取れ。その後の委細は貴官に任せる。」
これはこれで面白い。キルザジャップのひとつの様式美になれば…。
ハルゼーが葉巻を噛み切ったところで、敵大編隊接近の報が入る。
「敵艦隊まで100キロを切る。
高度を下げるが各機『お出迎え』には十分注意せよ!」
日本攻撃隊指揮官、友永少佐はそう呼びかける。
言われるまでもなく、零戦隊パイロット達は周辺空域を見直す。
高度6000に止まる組と、攻撃隊やや上空で直接掩護する組に分派する
藤浪は高高度組である。
「村上、才木、とにかく全周を見張れ。」
ついこないだまで自身が散々言われていたことを部下の列機2人に繰り返し指示する。
「…!」
雲の層から黒い影。
さして時間差無く、各機のパイロット達は気付きアクションを始める。
小隊ごとに散開。
とにかく最初の一撃をかわして…。
!!?
逆落としに突っ込んでくる無数の濃紺の影。
プラット&ホイットニー社エンジンの2000馬力の幾重もの唸り!
アレが…新型グラマン!
瞬く間に後ろ上方を占位されていた。
初陣の時とは異質な恐怖。
だが、もう自分一人だけのことを考えていられない。
「2機とも離れるな!」
一気にスロットルをあおり、急降下に転じる藤浪機。
部下も必死でついてきてる…か!
だがグラマンの群れも圧倒的なパワーをそのままダイヴスピードに変換して追い縋ってくる。
オレンジ色の火箭が後方から何条も…なんだこいつら何門機銃を搭載してんだ!?
「ヘイ構わん殺すぞ♂」
アメリカ側直掩戦闘機隊指揮官、ヘリントン少佐は戦場空域全体を俯瞰しつつ、自身も2機のゼロを墜とす。
順調だ…、まだ敵攻撃隊は我が艦隊の輪形陣に辿り着けていない。
墜ちている数は…日本機のが多い…。
見た限りでは。
だが、何か違和感。
そう、あのアップデートされた新型ゼロだ。
流石にわがF6Fヘルキャットを上回ることはないだろうが…?
「クソッ!なんだ奴らのダイヴスピード!
ひ弱な機体であんな強引な急降下を…!?」
そう、藤浪のみならず皆がいち早く気付き、若手にも使いやすい離脱&追尾方法として徹底させたこの機の強み。
シンプルな急降下が21型とは比べ物にならないスピードで活用できること。
機体、特に主翼強度の強化で可能となった。
そして高度1000に迫りかけた時。
「いくぞ、一気に引き起こせ!」
ぬぐおおおお!
勿論理論値上、機体の強度も舵が効くかも保証は無い。
だがとにかく全力で操縦桿を引く。
そして…。
取ったあッ!
綺麗に3機同時にとは行かないが全機高速宙返りに成功、4機のF6Fの後ろを取ったのだ。
「撃つ!」
200m前方のF6Fに20ミリ機関砲。
3発は主翼を貫通するが煙も吹かない。
刹那に後方確認をしつつさらに撃ち込む。
ようやくぐらりと傾くF6F。
自分の後方から20ミリの火箭、村上、才木が撃っているのだろう。
もう一機のF6Fが左翼から黒煙!?
共同撃墜!?
しかし後方から新たな敵の群れ。
「後ろからまた来る、深追いやめ!そいつはほっとけ、持たん!
次をやるぞ!」
藤浪の小隊は急旋回する。
敵の防弾からして致命傷になったかは五分五分。
しかし今のは村上と才木の共同撃墜ということにして報告しておいてやろう。
一方で、低空侵入を試みた攻撃隊本隊と零戦隊は初っ端から97艦攻中心に数十機を失った。
「クッ、噂以上の化け猫…
そして電波管制で的確に襲ってきやがる!」
言いながらも岩本は2機のF6Fを喰い、味方の進路啓開に努める。
どうにか敵艦隊輪形陣に辿り着いた日本側攻撃隊。
だが前回よりさらに熾烈になった各艦の対空砲火に、少しでも海面スレスレの低空から頭を上げた機は墜とされていく。
それでも数十機は艦隊中枢に辿り着き、戦艦サウスダコタに魚雷2発、爆弾1、エセックス級空母イントレビッド、フランクリンに爆弾2発づつをぶち当てる。
しかし、そこまでであった。
攻撃隊380機のうち、確実に200機近くは撃墜されたと帰路についた友永総隊長から無電を受けたとき、流石の小沢も動揺を隠しきれなかった。
そして報告を受けた時、ハワイ基地からの陸軍P38双発戦闘機が半分ほど爆装して殴りかかってくる、その対処への真っ最中という、予想内だが最悪の部類に入る事態。
300機の敵に90機超の直掩戦闘機。
向こうが不慣れな海上、対艦攻撃ということもあり、半分以上を撃墜したが、不運にも水平爆撃の800kg爆弾を翔鶴、瑞鳳、戦艦陸奥が喰らってしまった。
マズイな…空母飛龍艦橋で山口多聞が呟く。
まだ当面日は高い。
ハルゼーは本命の一撃を全力で放ってくる。
14:00頃に一旦直掩戦闘機隊を収容、その後、30分後に疲弊し切った攻撃隊が着艦してくる。
被弾機や、新人の機体の中には着艦事故も相次いだ。
そうした機体は各空母、海上投棄。
速やかな全機収容と、補給を終えた直掩戦闘機を発進させる。
間に合うか…!?
小沢らの危惧をあざ笑うように、実に550機のアメリカ攻撃隊が艦隊から50キロ先にあらわれたのが15:20
まだ直掩機は半分も上がっていない。
一航艦司令部が脂汗を流す中。
第一艦隊の戦艦大和。
つまり山本五十六自らが動き始めた。
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