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第十九章 旅に出る弟子と騎士
431.次の目的地
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レクシェルさんは俺たち二人を交互に見ながら、丁寧に説明してくれる。
「ウンディーネ様は美しい湖、シルフィード様は生命力あふれる樹、そしてサラマンダー様はここからですとドワーフの隠れ里が近いでしょう」
「ドワーフの隠れ里……」
「しかし、俺の勘違いだったら申し訳ないけど……エルフとドワーフって仲が悪くなかったか? そんな話をばあちゃんから聞いた気がするな」
ウルガーが切り込んで言うと、レクシェルさんは苦笑いをしながら小さく頷いた。
「その通りです。エルフとドワーフは昔から衝突しやすいと言われています。ですが、お互い憎み合っている訳ではなく意見が合わないことが多いのです」
「なるほどねぇ。でも、遠回りだとしても聞いておいた方が良さそうだ。レイヴン、一旦ドワーフの隠れ里へ行ってみよう」
「そうだな。ドワーフの隠れ里の入り口が分かればいいんだけど……」
さすがに俺もドワーフの隠れ里があること自体知らなかった。でも、この感じだとレクシェルさんは分かるのかな?
俺が視線を流すと、レクシェルさんは分かりますと答えてくれた。
「私が入り口の目の前まで行ってしまうと問題になるかもしれないので、お近くまでご案内しますね」
「それは助かります。ドワーフの隠れ里とエルフの里は近いのですか?」
「そうですね……ドワーフの隠れ里もアレーシュの領土内にはあります。ただ、彼らも我々と同じく土地は領土内でも不可侵という約束をはるか昔に交わしていると聞いております」
「確かにドワーフはいるはずだってばあちゃんも言ってたけど、その姿を見た者はあまりいないって」
俺とウルガーで順にレクシェルさんに尋ねると、レクシェルさんは少しだけ悲しそうな表情を見せた。
昔、人間と何かあったのだろうか?
「レイヴンさんたちが生まれるより昔、ドワーフと人間は一緒に暮らしていたこともありました。ただ。人間と彼らは道を違えることになり、彼らは戦争をしました」
「戦争?」
「人間側が勝利をおさめましたが、戦争はドワーフたちの数を一気に減らしました。その時の人間たちは容赦なくドワーフを……」
「表に出せるような話ではない、悲惨なことが起こったのですね?」
俺が後を続けると、レクシェルさんが頷いた。戦争は悲劇しか生まない。それは俺ですら身に染みて知っていることだ。
だが、それなら余計に俺らが尋ねていっても大丈夫なんだろうか?
「ドワーフは人間と距離を取るために里に隠れ住んでいるのに、俺らがのこのこと尋ねていったら不快な思いをするんじゃ……」
「私が話したのは私も生まれていない頃の話ですので、今は人間に対してそこまでの思いはないと思いますよ。ただ、彼らもひっそりと暮らしているだけです」
「なら、説明すれば里の中へ入れてくれるかもしれないな」
すんなりと入れてくれればいいけど、それは行ってみないことには分からないか。
でも、次の目的地は決まった。
少し寄り道することになるけど、サラマンダー様と話をするために俺たちはまずドワーフの隠れ里へ行くことにした。
「そうと決まれば、今日はゆっくり休んで明日出発しましょう。折角レクシェルさんと出会えた訳だし?」
「ウルガー……まあ、元々ここで休むつもりだったからいいか。レクシェルさん、すみませんがいいですか?」
「ええ。もちろんお二人のご都合に合わせるつもりでしたから。こちらこそ、旅の足を止めるようなことをお伝えしてしまいすみません」
レクシェルさんが悪い訳でもないのに頭を下げられて、俺とウルガーで慌てて頭をあげてくださいと同時にお願いする。
すると、レクシェルさんも体勢を戻して笑ってくれた。
「お二人は本当に仲がいいのですね。レイヴンさんのことは里長も心配していましたから……」
「ご心配をおかけしてすみません。何とかやってますので、そのようにお伝えください」
俺が魔族との戦いの後に倒れたことも、少し不安定になってしまったことも父さんには隠さずに話したからな。
父さんもずっと励まし続けてくれていたし、俺の周りはみんな優しい人たちばかりなんだなと改めて思った。
「ウンディーネ様は美しい湖、シルフィード様は生命力あふれる樹、そしてサラマンダー様はここからですとドワーフの隠れ里が近いでしょう」
「ドワーフの隠れ里……」
「しかし、俺の勘違いだったら申し訳ないけど……エルフとドワーフって仲が悪くなかったか? そんな話をばあちゃんから聞いた気がするな」
ウルガーが切り込んで言うと、レクシェルさんは苦笑いをしながら小さく頷いた。
「その通りです。エルフとドワーフは昔から衝突しやすいと言われています。ですが、お互い憎み合っている訳ではなく意見が合わないことが多いのです」
「なるほどねぇ。でも、遠回りだとしても聞いておいた方が良さそうだ。レイヴン、一旦ドワーフの隠れ里へ行ってみよう」
「そうだな。ドワーフの隠れ里の入り口が分かればいいんだけど……」
さすがに俺もドワーフの隠れ里があること自体知らなかった。でも、この感じだとレクシェルさんは分かるのかな?
俺が視線を流すと、レクシェルさんは分かりますと答えてくれた。
「私が入り口の目の前まで行ってしまうと問題になるかもしれないので、お近くまでご案内しますね」
「それは助かります。ドワーフの隠れ里とエルフの里は近いのですか?」
「そうですね……ドワーフの隠れ里もアレーシュの領土内にはあります。ただ、彼らも我々と同じく土地は領土内でも不可侵という約束をはるか昔に交わしていると聞いております」
「確かにドワーフはいるはずだってばあちゃんも言ってたけど、その姿を見た者はあまりいないって」
俺とウルガーで順にレクシェルさんに尋ねると、レクシェルさんは少しだけ悲しそうな表情を見せた。
昔、人間と何かあったのだろうか?
「レイヴンさんたちが生まれるより昔、ドワーフと人間は一緒に暮らしていたこともありました。ただ。人間と彼らは道を違えることになり、彼らは戦争をしました」
「戦争?」
「人間側が勝利をおさめましたが、戦争はドワーフたちの数を一気に減らしました。その時の人間たちは容赦なくドワーフを……」
「表に出せるような話ではない、悲惨なことが起こったのですね?」
俺が後を続けると、レクシェルさんが頷いた。戦争は悲劇しか生まない。それは俺ですら身に染みて知っていることだ。
だが、それなら余計に俺らが尋ねていっても大丈夫なんだろうか?
「ドワーフは人間と距離を取るために里に隠れ住んでいるのに、俺らがのこのこと尋ねていったら不快な思いをするんじゃ……」
「私が話したのは私も生まれていない頃の話ですので、今は人間に対してそこまでの思いはないと思いますよ。ただ、彼らもひっそりと暮らしているだけです」
「なら、説明すれば里の中へ入れてくれるかもしれないな」
すんなりと入れてくれればいいけど、それは行ってみないことには分からないか。
でも、次の目的地は決まった。
少し寄り道することになるけど、サラマンダー様と話をするために俺たちはまずドワーフの隠れ里へ行くことにした。
「そうと決まれば、今日はゆっくり休んで明日出発しましょう。折角レクシェルさんと出会えた訳だし?」
「ウルガー……まあ、元々ここで休むつもりだったからいいか。レクシェルさん、すみませんがいいですか?」
「ええ。もちろんお二人のご都合に合わせるつもりでしたから。こちらこそ、旅の足を止めるようなことをお伝えしてしまいすみません」
レクシェルさんが悪い訳でもないのに頭を下げられて、俺とウルガーで慌てて頭をあげてくださいと同時にお願いする。
すると、レクシェルさんも体勢を戻して笑ってくれた。
「お二人は本当に仲がいいのですね。レイヴンさんのことは里長も心配していましたから……」
「ご心配をおかけしてすみません。何とかやってますので、そのようにお伝えください」
俺が魔族との戦いの後に倒れたことも、少し不安定になってしまったことも父さんには隠さずに話したからな。
父さんもずっと励まし続けてくれていたし、俺の周りはみんな優しい人たちばかりなんだなと改めて思った。
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