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第十六章 遊戯に翻弄される魔塔主と弟子と騎士と聖女
395.戸惑いながらの戦い<レイヴン視点>
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時は少し巻き戻り――
レイヴンの目の前に何かが現れ、魔物使いに行く手を阻まれたテオドールは多くの合成獣たちに飲まれレイヴンと分断されてしまう。
そしてレイヴンの目の前には、白髪の男と謎の存在のみが残っていた。
+++
「君は……女の子?」
「おい、和むな試作品。お前は目の前の敵を倒す使命があるだろうが」
「たおす? あそぶの?」
俺の目の前には謎の女の子がいる。
俺より背も低いし、年齢的には十歳いっているかどうか分からないくらいの小さい子だ。
驚いて魔法の詠唱を止めてしまったけど……この子から敵意らしきものは感じられない。
でも白髪の男が試作品だと言っているということは、この子は創られた合成獣……だよな。
確かに彼女の見た目は俺より小さな女の子に見えるけど、灰色の長い髪の上にはネコの耳が生えていて背中にはコウモリの翼が生えている。
しかも、先が三角の尻尾まで生えているなんて……人間と魔物の合成獣なのか?
こんな小さな子を実験材料にするだなんて、テオじゃないけど今すぐにぶっとばしてやりたくなる。
俺が色々考えていると、急に女の子がこちらに手のひらを向けてきた。
彼女の手のひらに集まっている力は……魔力!
「こおり!」
「無詠唱! ……っ」
反射的に顔を左にそらすと、耳の側を氷の粒が通り抜けていく。
この子、魔法が使えるのか。
本気じゃなさそうだけど、無詠唱で魔法が使えるだなんて……。
やっぱり普通の子じゃなさそうだ。
「おい、へたくそ! いいか、こちらはお前にかかっているのだ。こちらの魔法使いを捕らえてしまえば、あの嫌味な魔法使いは手が出せまい。しっかり私を守れ」
「なっ……あなた、それでも大人ですか? こんな小さい子にヒドイことをしておいて! 許せない……」
「私は私の実験の成果を見せられればそれでいい。お前の感想などどうでもいいのだ。実験を続けるためには協力者の力が必要。すなわち、お前たちに勝てばいい」
頭にきたけれど、女の子は俺と遊べると思っているのか嬉しそうに笑っている。
俺が話している間にも、氷をどんどんこちらへ放ってきゃっきゃとはしゃいでいるみたいだ。
「君は騙されてるんだ! この戦いに意味はないんだよ?」
「たたかい? たたかいはあそぶ?」
「違う! 戦いは人を怪我させたり……とにかく今、君がしていることはいけないことなんだよ?」
「どうして? あそんじゃだめ?」
もっとゆっくり話してあげたいけど、彼女は話しながらずっと俺へ氷を放つことをやめない。
もしかして、魔力の所有量も多いのか?
全く疲れる様子もなさそうだし、持久戦になったら確実に俺の方が不利になる。
それに……俺がここでやられてしまったらテオに迷惑をかけてしまう。
「テオは俺のことを信じてくれたんだ。大丈夫だと言ったのだから、何とか切り抜けるしかない」
「……おにいちゃん?」
「君を攻撃しないように、何とかあちらの男を何とかする方法を考えないと……だけど、攻撃が激しすぎて気を抜けない」
「あたしたのしい! もっとあそぼ!」
乱打される魔法を避けながら、防御と強化で時間を稼ぐ。
身体強化をしても、彼女の攻撃は止むことはない。
体力に自信があるほうじゃないから、何とか女の子の気をそらして男を黙らせるしかない。
「でも、女の子に攻撃魔法をぶつけるなんて……俺にはできない。一体どうすれば……」
「ハハハ! いいぞ、試作品。頑張ったらお前の好きなものをやる。さっさとそいつを倒してしまえ!」
「すきなの? うん! わかった」
俺が思案しているうちに、女の子は両手を上げて魔力を高めていく。
彼女の頭の上に大きな炎の塊が膨らんでいき、みるみるうちに俺の身体の二倍ほどの大きさになってしまう。
俺も慌てて水の盾の詠唱に入るけど、女の子の方が早い。
あの大きさを避けられるか分からないけど、間に合わなければ躱すしかない。
レイヴンの目の前に何かが現れ、魔物使いに行く手を阻まれたテオドールは多くの合成獣たちに飲まれレイヴンと分断されてしまう。
そしてレイヴンの目の前には、白髪の男と謎の存在のみが残っていた。
+++
「君は……女の子?」
「おい、和むな試作品。お前は目の前の敵を倒す使命があるだろうが」
「たおす? あそぶの?」
俺の目の前には謎の女の子がいる。
俺より背も低いし、年齢的には十歳いっているかどうか分からないくらいの小さい子だ。
驚いて魔法の詠唱を止めてしまったけど……この子から敵意らしきものは感じられない。
でも白髪の男が試作品だと言っているということは、この子は創られた合成獣……だよな。
確かに彼女の見た目は俺より小さな女の子に見えるけど、灰色の長い髪の上にはネコの耳が生えていて背中にはコウモリの翼が生えている。
しかも、先が三角の尻尾まで生えているなんて……人間と魔物の合成獣なのか?
こんな小さな子を実験材料にするだなんて、テオじゃないけど今すぐにぶっとばしてやりたくなる。
俺が色々考えていると、急に女の子がこちらに手のひらを向けてきた。
彼女の手のひらに集まっている力は……魔力!
「こおり!」
「無詠唱! ……っ」
反射的に顔を左にそらすと、耳の側を氷の粒が通り抜けていく。
この子、魔法が使えるのか。
本気じゃなさそうだけど、無詠唱で魔法が使えるだなんて……。
やっぱり普通の子じゃなさそうだ。
「おい、へたくそ! いいか、こちらはお前にかかっているのだ。こちらの魔法使いを捕らえてしまえば、あの嫌味な魔法使いは手が出せまい。しっかり私を守れ」
「なっ……あなた、それでも大人ですか? こんな小さい子にヒドイことをしておいて! 許せない……」
「私は私の実験の成果を見せられればそれでいい。お前の感想などどうでもいいのだ。実験を続けるためには協力者の力が必要。すなわち、お前たちに勝てばいい」
頭にきたけれど、女の子は俺と遊べると思っているのか嬉しそうに笑っている。
俺が話している間にも、氷をどんどんこちらへ放ってきゃっきゃとはしゃいでいるみたいだ。
「君は騙されてるんだ! この戦いに意味はないんだよ?」
「たたかい? たたかいはあそぶ?」
「違う! 戦いは人を怪我させたり……とにかく今、君がしていることはいけないことなんだよ?」
「どうして? あそんじゃだめ?」
もっとゆっくり話してあげたいけど、彼女は話しながらずっと俺へ氷を放つことをやめない。
もしかして、魔力の所有量も多いのか?
全く疲れる様子もなさそうだし、持久戦になったら確実に俺の方が不利になる。
それに……俺がここでやられてしまったらテオに迷惑をかけてしまう。
「テオは俺のことを信じてくれたんだ。大丈夫だと言ったのだから、何とか切り抜けるしかない」
「……おにいちゃん?」
「君を攻撃しないように、何とかあちらの男を何とかする方法を考えないと……だけど、攻撃が激しすぎて気を抜けない」
「あたしたのしい! もっとあそぼ!」
乱打される魔法を避けながら、防御と強化で時間を稼ぐ。
身体強化をしても、彼女の攻撃は止むことはない。
体力に自信があるほうじゃないから、何とか女の子の気をそらして男を黙らせるしかない。
「でも、女の子に攻撃魔法をぶつけるなんて……俺にはできない。一体どうすれば……」
「ハハハ! いいぞ、試作品。頑張ったらお前の好きなものをやる。さっさとそいつを倒してしまえ!」
「すきなの? うん! わかった」
俺が思案しているうちに、女の子は両手を上げて魔力を高めていく。
彼女の頭の上に大きな炎の塊が膨らんでいき、みるみるうちに俺の身体の二倍ほどの大きさになってしまう。
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