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第五章 漸くモノにした魔塔主と少し素直になれた弟子
118.祭典後に<テオドール・レイヴン視点>
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聖女の美しい舞いにも辺りから感嘆の声が漏れる。
聖女が跪き厳かに祭壇に祈りを捧げると、光は神殿に広がって弾け、頭上からキラキラと舞い落ちていく。
……ったく、アイツ。
自分を美しく見せるためにレイヴンを使いやがって。
今度会ったら容赦しねぇ。
「……後でババアに抗議してやる。なんだよ、あの衣装は。本番まで絶対に見せようとしなかった訳がやっと分かったわ。……これで貸し借りはなしだからな」
神殿の片隅で一応大人しくしてたが、あんなもん見てたら舌打ちもしたくなる。
イラッとしながら、パチンと指を弾いた。
合図と共に一陣の風が巻き起こり、美しい桃色の花びらが神殿と人々を包み込む。
+++
「……綺麗だ……これ、師匠の……?」
ひらりひらりと落ちてくる花びらに思わず立ち上がって、受け止めるように手を差し出す。
その花びらは手のひらに触れると、何事もなかったように優しく消えていく。
花びらに見惚れているうちに儀式は滞りなく終了し、貴賓の皆様方は王宮へと移動していく。
今夜は盛大な晩餐会が催されることになっていた。
全てが終わるまで騎士団は警護と備えを、魔法使いたち数名は結界の見張りのためと、万が一の時には騎士とも連携をとるために王宮内部と街全体を魔道具を使用し監視しているけど、基本は魔塔で何かあった時の為に待機する。
儀式の手伝いが終わった俺も控室に戻り、着替えようとしたところで扉が叩かれる。
「はい、どうしましたか?」
何か不備でもあったのかと扉を開けると、目の前にはニヤリ顔の師匠が立っていた。
「よお。ホントに別人みてぇだな。見に来てやったぜ?」
「…………」
無言で扉を閉めようとすると、扉との間に素早く足を入れられる。
「おいおい、無言で閉めようとするんじゃねぇよ」
「……これから着替えるので、用があるなら着替えるまで外でお待ち下さい」
俺が冷たく言い放っても、師匠は無理矢理に扉をこじ開けて室内に入り込む。
ニヤニヤ顔の師匠に力で敵うはずもなく、あっさりと侵入を許してしまった。
「用はあるぜ? 可愛い弟子を見に来たっていう」
「弟子? ……人違いじゃないですか? 私は神官なので」
「あのなぁ……その格好見られたくないからって、すぐにバレる嘘吐くんじゃねぇよ。可愛いぜ? 天使ちゃん」
「だって、馬鹿にしてるでしょう? 俺だって嫌だったんですから! 足はスースーするし、何か羽生えてるし、何でこうなったんだ……俺と一緒に儀式の手伝いをした神官は、俺よりずっと年下ですよ? 泣きたい……」
何が、天使ちゃんだよ。
絶対にバカにしてるよ、この人。
そのニヤニヤ顔でジロジロ見てくるの、やめてほしい。
聖女が跪き厳かに祭壇に祈りを捧げると、光は神殿に広がって弾け、頭上からキラキラと舞い落ちていく。
……ったく、アイツ。
自分を美しく見せるためにレイヴンを使いやがって。
今度会ったら容赦しねぇ。
「……後でババアに抗議してやる。なんだよ、あの衣装は。本番まで絶対に見せようとしなかった訳がやっと分かったわ。……これで貸し借りはなしだからな」
神殿の片隅で一応大人しくしてたが、あんなもん見てたら舌打ちもしたくなる。
イラッとしながら、パチンと指を弾いた。
合図と共に一陣の風が巻き起こり、美しい桃色の花びらが神殿と人々を包み込む。
+++
「……綺麗だ……これ、師匠の……?」
ひらりひらりと落ちてくる花びらに思わず立ち上がって、受け止めるように手を差し出す。
その花びらは手のひらに触れると、何事もなかったように優しく消えていく。
花びらに見惚れているうちに儀式は滞りなく終了し、貴賓の皆様方は王宮へと移動していく。
今夜は盛大な晩餐会が催されることになっていた。
全てが終わるまで騎士団は警護と備えを、魔法使いたち数名は結界の見張りのためと、万が一の時には騎士とも連携をとるために王宮内部と街全体を魔道具を使用し監視しているけど、基本は魔塔で何かあった時の為に待機する。
儀式の手伝いが終わった俺も控室に戻り、着替えようとしたところで扉が叩かれる。
「はい、どうしましたか?」
何か不備でもあったのかと扉を開けると、目の前にはニヤリ顔の師匠が立っていた。
「よお。ホントに別人みてぇだな。見に来てやったぜ?」
「…………」
無言で扉を閉めようとすると、扉との間に素早く足を入れられる。
「おいおい、無言で閉めようとするんじゃねぇよ」
「……これから着替えるので、用があるなら着替えるまで外でお待ち下さい」
俺が冷たく言い放っても、師匠は無理矢理に扉をこじ開けて室内に入り込む。
ニヤニヤ顔の師匠に力で敵うはずもなく、あっさりと侵入を許してしまった。
「用はあるぜ? 可愛い弟子を見に来たっていう」
「弟子? ……人違いじゃないですか? 私は神官なので」
「あのなぁ……その格好見られたくないからって、すぐにバレる嘘吐くんじゃねぇよ。可愛いぜ? 天使ちゃん」
「だって、馬鹿にしてるでしょう? 俺だって嫌だったんですから! 足はスースーするし、何か羽生えてるし、何でこうなったんだ……俺と一緒に儀式の手伝いをした神官は、俺よりずっと年下ですよ? 泣きたい……」
何が、天使ちゃんだよ。
絶対にバカにしてるよ、この人。
そのニヤニヤ顔でジロジロ見てくるの、やめてほしい。
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