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第四章 行動に移す魔塔主と色々認めたくない弟子
82.補佐官と副団長の反省会<レイヴン視点>
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「……ってなことがあってな。俺もまだまだだなと思ってさ。それなりに実力ついてきたと思ってたのにさ。まさか、あの傷が原因で……って。色々考えたって訳」
「いや、あれは俺も全て終わったと思って気を緩めた結果だ。実力不足と言うなら、むしろ俺の方だったから。自分でも軽く考えていたところがあったんだと思う」
「まぁ……流石にすぐにはテオドール様や団長みたいになれる訳ないよな。だから……次こそは。俺は、レイヴンに掠り傷一つ負わせないことを誓う」
ウルガーは少しだけ真剣な表情で誓いの言葉を述べた。
流れるように俺の手を取って手の甲に誓いの口付けを落とす。
意図は分かるけど、いきなりだったので瞬きしかできずに固まっていると、ウルガーが先に笑い出した。
「……なんてな。って、驚きすぎ。正式な誓いはこんなんじゃないって」
「……知ってるよ。というか、酒の席でされても困るし」
騎士の誓いは確か、その場に跪いて一生を守ると誓うと決めた相手に誓いの言葉を述べてから口付けをする……はず。
人付きの騎士として相手から任命される時とはまた別だったと記憶している。
何にしても、真剣さとからかいが混ざってるんだよ……。
ウルガーを直視するのが恥ずかしくなってフイと顔を逸してビールをチビチビ飲んていたら、またおかしそうに笑われた。
「なんか腹立つ。笑いすぎ」
「ごめんって! でもさ。団長だったら確実に正式なヤツしそうだしなー」
「いやいやいや。それは俺などではなく、別の方にするべきものだから」
「だってさ、レイヴンの兄貴を自称するくらいだし。ほぼ保護者だし」
ディートリッヒ様をかしずかせるだなんて、そんなこと申し訳なさすぎる。
もっと誓うべきお相手がいるはずだ。
その動揺が顔に出ていたのか、ウルガーはひとしきり笑ってからグビグビとビールを飲んで笑う。
「まぁ、団長は暑苦しいかもしれないけどさ。レイヴンのことを大切に思ってるのは本当だから。重いかも知れないけど、それも一つの愛情みたいなものだと思えばそんなに気にしなくてもいいと俺は思うけどな。お前だって団長のことが嫌いじゃなさそうだし」
「それは勿論。いつも気にして下さるし、師匠と違って優しいし。だからこそ、何で俺なんかって思うというか……別に気持ちが重たいとかそういう訳じゃないけど」
うまく言えない、と曖昧に笑って、黙々とミートボールを口へと運ぶ。
俺が食べているとウルガーも満足げにミートドリアに手を付ける。
「そんな深く考えずにさ、甘えればいいと思うけどね。団長にも、テオドール様にもさ。レイヴンは自分が思っている以上に周りの人に好かれてるし? 羨ましいことで」
「それは皆が親切だからだと……師匠は除いて」
「テオドール様は団長とは全く違うタイプだから、違う意味でレイヴンのこと猫可愛がりしてるんだよな。まぁ……後はお前次第だろうけど」
「俺は猫じゃないから。あの人は俺の反応を見ていつもニヤニヤしてるし、そういう食えないところが腹が立つんだよ。俺のこと好きなのかも知れないけど、愛情ではなくて暇潰しみたいでさ」
師匠の顔を思い出したらイライラとしてきて、残っていたビールをぐいっと煽って、ムスっとしながらウルガーを睨みつける。
「……ってなことがあってな。俺もまだまだだなと思ってさ。それなりに実力ついてきたと思ってたのにさ。まさか、あの傷が原因で……って。色々考えたって訳」
「いや、あれは俺も全て終わったと思って気を緩めた結果だ。実力不足と言うなら、むしろ俺の方だったから。自分でも軽く考えていたところがあったんだと思う」
「まぁ……流石にすぐにはテオドール様や団長みたいになれる訳ないよな。だから……次こそは。俺は、レイヴンに掠り傷一つ負わせないことを誓う」
ウルガーは少しだけ真剣な表情で誓いの言葉を述べた。
流れるように俺の手を取って手の甲に誓いの口付けを落とす。
意図は分かるけど、いきなりだったので瞬きしかできずに固まっていると、ウルガーが先に笑い出した。
「……なんてな。って、驚きすぎ。正式な誓いはこんなんじゃないって」
「……知ってるよ。というか、酒の席でされても困るし」
騎士の誓いは確か、その場に跪いて一生を守ると誓うと決めた相手に誓いの言葉を述べてから口付けをする……はず。
人付きの騎士として相手から任命される時とはまた別だったと記憶している。
何にしても、真剣さとからかいが混ざってるんだよ……。
ウルガーを直視するのが恥ずかしくなってフイと顔を逸してビールをチビチビ飲んていたら、またおかしそうに笑われた。
「なんか腹立つ。笑いすぎ」
「ごめんって! でもさ。団長だったら確実に正式なヤツしそうだしなー」
「いやいやいや。それは俺などではなく、別の方にするべきものだから」
「だってさ、レイヴンの兄貴を自称するくらいだし。ほぼ保護者だし」
ディートリッヒ様をかしずかせるだなんて、そんなこと申し訳なさすぎる。
もっと誓うべきお相手がいるはずだ。
その動揺が顔に出ていたのか、ウルガーはひとしきり笑ってからグビグビとビールを飲んで笑う。
「まぁ、団長は暑苦しいかもしれないけどさ。レイヴンのことを大切に思ってるのは本当だから。重いかも知れないけど、それも一つの愛情みたいなものだと思えばそんなに気にしなくてもいいと俺は思うけどな。お前だって団長のことが嫌いじゃなさそうだし」
「それは勿論。いつも気にして下さるし、師匠と違って優しいし。だからこそ、何で俺なんかって思うというか……別に気持ちが重たいとかそういう訳じゃないけど」
うまく言えない、と曖昧に笑って、黙々とミートボールを口へと運ぶ。
俺が食べているとウルガーも満足げにミートドリアに手を付ける。
「そんな深く考えずにさ、甘えればいいと思うけどね。団長にも、テオドール様にもさ。レイヴンは自分が思っている以上に周りの人に好かれてるし? 羨ましいことで」
「それは皆が親切だからだと……師匠は除いて」
「テオドール様は団長とは全く違うタイプだから、違う意味でレイヴンのこと猫可愛がりしてるんだよな。まぁ……後はお前次第だろうけど」
「俺は猫じゃないから。あの人は俺の反応を見ていつもニヤニヤしてるし、そういう食えないところが腹が立つんだよ。俺のこと好きなのかも知れないけど、愛情ではなくて暇潰しみたいでさ」
師匠の顔を思い出したらイライラとしてきて、残っていたビールをぐいっと煽って、ムスっとしながらウルガーを睨みつける。
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