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第八章 真のハッピーエンディングを目指して

96.精霊神

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 俺は意識を失う度に色々な世界へ飛ばされる体質なのか?
 ツッコミを入れたい気持ちを抑えて、まずは精霊神と向かい合う。

「精霊神様に呼ばれたってことは……俺は条件をクリアしてるってことですか?」
「クリア……そうですね。ハルは精霊使いとして立派に成長してくれました。貴方をこの世界へ巻き込んでしまったことには、私たちも心を痛めています」
「私たちは、貴方の願いを叶えたいと思っています。この世界は私たちと運命の三女神が愛する世界。だからこそ、貴方に選んで欲しい」
「ハル、この世界へ残りたいですか? それとも……」

 精霊神の設定も見たことないんだから、これはもう真のハッピーエンディングの一部ってことだよな。
 話がどんどん進んでいるけど、願いを叶えてくれるというのならもう一人呼ぶ必要がある。
 俺は臆せずに背筋を伸ばして立ち上がると、精霊神へ向かって宣言する。

「俺は確かに別世界から来たハルです。でも、ハルはもう一人いるはずです。願いを叶えてくれると言うのならば、もう一人のハルにも権利はあるはず。俺たちもこの世界では一対のハルという存在です」

 俺が言いきると、精霊神は少し悩んだ様子を見せていた。
 でも、そっちだって双子なんだから願いは二回叶えてもおかしくないよな?

「分かりました。では、もう一人のハルも呼びましょう」

 精霊神が手のひらを上へ向けてフゥっと息を吐き出すと、キラキラと輝き出す。
 そして、輝きとともにハルミリオンが姿を現した。

「俺は……一体?」
「ハルミリオン! 良かった、無事で」
「ハル……? この状況は一体?」

 ハルミリオンにもざっくり説明すると、彼はすぐに頷いて理解してくれた。
 やっぱりハルミリオンは俺なんかより、頭もよくてできる人間なんだと思う。

「本当は意識の海の中へ溶け込んで消えるつもりだった。だというのに、お前が……ハルが必死になっているのが見えてしまう。ゆっくりと眠ることさえできないとはな」
「そう言われても、俺も必死だったんだよ。ここまで来るのにはさ。これでハルが二人揃いました。じゃあ、ハルミリオンから願いをどうぞ」
「は? 俺が?」

 ハルミリオンは落ち着いていたはずなのに、急に妙な声をあげた。
 だって、元々ハルミリオンのポジションで俺が頑張っていたんだし。ハルミリオンの願いを叶えることも俺のハピエンには含まれているんだから問題ない。

「ハルミリオン、貴方には重すぎる荷を背負わせてしまったようです。私たちは愛する子たちが不幸になることを望みません。ハルの願いは、貴方の願いでもあるのでしょう」
「ハルの機転もあるのでしょうけど……私たちは愉快なことも大好きなのです。遠慮することはありませんよ?」

 精霊神のリクナと名乗った方がクスクスと笑っているのが分かる。どうやら、精霊神も心が広い人みたいだ。
 ハルミリオンは困ったように眉間に皺を寄せていたけど、そのうち顔をあげてハッキリと告げる。

「俺が願うのは……妹のリム。リムキヨリアの幸せだけだ」
「え? 妹の名前はリムキヨリア? リム……マジかよ……」

 まさか、妹の名前まで被っているなんて偶然なのか?
 哩夢りむとリムか。俺がこの世界へ来た影響なのかそれとも元々の設定なのか……。
 俺の動揺を見ても、精霊神は微笑んでいるだけだ。

「分かりました。ただし、貴方たちが幸せへ導けるための手助けです。ただ与えられるだけの幸せでは、妹も真に喜ぶことができないでしょう」
「分かりました。それで構いません」

 ハルミリオンは渋々だったが、納得したみたいだ。
 一応俺が助け出せるように準備はしているけど、それが必ずうまくいくとかそういう願いの叶え方ってことでいいんだよな?

「では、ハル。あなたの願いは?」

 俺の願いはと問われれば、今願うことは一つしかない。

「俺は……ラウディと一緒にいたいです。でも、俺の世界の妹のことだけは気になるから……」

 一つだと言いたかったけど、俺はつい欲張りそうになった。
 家族と好きな人、両方に会いたいって思っちゃうよな。

 すると、今度はルイサと名乗った精霊神がクスクスと笑い出した。
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