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第八章 真のハッピーエンディングを目指して

95.制御できない力

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 ウィンも何か考え込むような仕草をしていたけど、急に俺を見つめてきた。
 
「覚えてない。でも、ハルなら納得できる。オレも安心して力を貸せるし」
「お前たち、ハルが宝珠を授かったということは今から力を行使するということだ。昔話をしている場合ではない」

 アウレリオルが口々に反応していた精霊たちをまとめるように苦言を呈する。
 ラウディは周りを気にせず俺へ手を差し伸べて、祭壇から降りるまでエスコートしてくれた。
 
「全く、お前たちは本当に自由で困る。ハル、神殿へ戻るぞ。其方はアビスヘイヴンではなくエーテルヴェールへ残る道を選んだ。だとすれば、精霊使いが力を行使する場所は神殿だ」
「分かりました。では、戻りましょう」

 俺も頷いて、精霊たちと一緒に神殿へ戻る。
 俺自身は宝珠の使い方なんて全く分からないんだけど……大丈夫かな?

 +++

 全員で大鏡の前へ立つと、自然とアビスヘイヴンの土地が映し出された。
 恵みの樹の付近は緑が生い茂っているけど、まだ全域とまではいかないみたいだ。
 映し出される映像が切り替わると枯れ果てたままの土地もちらほら見えてくる。

「では、ハル。精霊使いとして宝珠の力を使いアビスヘイヴンに恵みを授けるのだ」
「は、はあ……でも、どうやって?」

 俺がアウレリオルに尋ねると、思い切り眉を跳ね上げられてしまった。
 どうすればいいのか迷っていると、ラウディが近寄ってきて耳打ちしてくる。

「大丈夫。ハルの思うままに。緊張しないで、願ってみて?」
「分かった」

 ラウディの声を聞くと、焦った気持ちが自然と落ち着いてくる。
 とりあえず、願うと言えばこのポーズだと思い両手を組んで祈りを捧げる。
 すると、腕の辺りから暖かな光が溢れ出して大鏡の向こう側へと注がれていく。

「この土地でみんなが幸せに暮らせますように……それと……」

 俺が願えば願うほど、光は溢れていく。
 それと同時に恐ろしいほどの脱力感が襲い掛かってきた。
 なんだ、コレ……?

「まずい、これは力の使いすぎだ! おい、ハル! もう大丈夫だ! 願いを止めろ!」

 シアンの焦った声が聞こえてきたけど、初めて力を使ったせいか止め方もよく分からない。
 しかも、強く手を組みすぎてしまったせいか自分で外すこともできずに固まっている気がする。

 だんだん、声が遠くなってくる。自分で立っていることすらままならなくなって、意識が遠のいてくるのが分かる。

「ハルっ!」

 ラウディが支えてくれたということが分かると、俺は安心して意識を手放してしまった。

 +++

「あれ……? 俺は、眠ってたのか?」

 起きるとなんだかお姫様みたいなベッドで寝かされていたことが分かる。
 天蓋付きベッドだったか? ピンクのひらひらレースがかかったベッドだ。

 身体を起こすと、このベッドが何故か花畑の中にポツンと置いてあったことが分かる。
 俺、また妙な世界へ飛ばされてしまったのか?

「貴方の熱意、私たちも感じましたよ。ハル……いいえ、桧山 晴ひやま はる君、だったわね」
「ごめんなさい、貴方の記憶を少し覗かせてもらいました。モモリーヌから話は聞いていたのだけれど……」

 ベッドに腰かけた俺の前に、二人の神々しい姿をした女性らしき人が現れた。
 二人ともふわりと浮いていて、仲良くお互いの両手を組み合っている。
 二人は俺の方へ顔を向けてはいるけど、右と左で向かい合う形でくっついていた。
 顔はベールで隠されていてよく分からないけど、金の髪飾りが綺麗で二人ともゆったりとしたウェーブのかかった長いブロンドの髪の毛だ。
 その背には大きくてふわふわな羽が生えているし、服は白を基調としたゆったりとしたローブを着ている。
 運命の三女神とはまた違った神様……ということは?

「貴方たちは……もしかして?」
「私はルイサ。精霊神と呼ばれる一対」
「私はリクナ。同じく、精霊神と呼ばれる一対。私たちは二人で一人。双子の精霊神です」
 
 この人たちが精霊神……。雰囲気だけで圧倒されそうだけど、つまり俺は精霊神と会う権利を得られたって訳だ。
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