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第八章 真のハッピーエンディングを目指して

86.収穫祭

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 王様はあらかじめ用意していた場所へ俺たちを案内してくれる。
 そこにはコックらしき人と、そわそわとしている様々な年代の男女が長い机に向かって座らされていた。
 俺とカティは、王様の特別席の近くに設けられた机へ案内されて、隣同士で座るように指示をされる。

「折角だ。二人とも恵みの樹の実を食べていくといい。今、なった実を職人にもがせているところだ。それから、このコックが実を切り分けて目の前に用意する」
「その実をボクたちも食べていいってことですね?」
「そうだ。一部はもいだそのままの姿で机の上に置くのでどんな実か見てみるとよい」

 俺たちは王様に言われるがまま、大人しく恵みの樹の実が出てくるのを待った。
 すると、カゴに盛られた実が机の上へそれぞれ置かれていく。

「わあ! こっちの実の方がピカピカしてキレイだね! とがってるし、真っ赤に光ってカッコイイ!」
「比べて、こっちの実は……なんだか地味ねえ。見た目もどこかで見たような……黄色のような茶色のような……」

 見た目はカティの方が見栄えがする。特別感があり、トゲトゲとした実は赤い光沢があってキラキラと光り輝いていた。
 そして、俺の実は……そこらの市場に売っていても気づかないような、りんごかなしのような見た目をした色もハッキリしない平凡な見た目をしている。

「ふうむ……しかし、問題は見た目より味だ。恵みの樹の実は食べた瞬間に分かると言われている。今、コックが皆の前に切り分けた実を置いていくのでな」

 王様は表情を変えず、全員の前に切り分けられた実が並ぶのを待った。
 どうやら、まずはカティの実から味見するようだ。
 カティの実は中も赤く輝いていて、現代では見たことのない実だ。

「では、皆の者。いただこう」

 王様の号令と共に、民たちと兵士、コックもみんな同時に口へ運ぶ。
 もちろん、王様と俺たちもだ。

「……あまぁーい!」
「これは……今まで食べたことない味……!」
「甘いだけではなく、刺激的な味わいもあるような……なんという特別感!」

 皆、口々にカティの実を褒め称える。
 カティの実は特別感があって、不思議な味わいだ。
 甘いのにピリリとする感じもあるし、食べた瞬間に心が弾けて元気になるような気がする。

 やっぱり精霊の力を直接送っているから、精霊の特徴がはっきり出る実になるんだろうな。
 ヴォルカングの刺激とアウレリオルの豪華さなのかな? ごちそうを食べている感覚と似ている。

「では、次はハルの実だな」

 俺の実には誰も期待を寄せていない。見た目は平凡だし、そこらにある果物と変わらないからだ。
 でも、それでいい。特別感は求めていないのだから。
 皆、微妙な表情で俺の実を口へ運ぶ。そして、もしゃもしゃと静かに食べ進めていった。

 ……誰も言葉を発しない。別にまずくないと思うんだけど……まさか、失敗だったか?
 俺も食べている感じ、りんごかなしのような。いつも食べている安心感のある味がする。
 俺が求めていた通りの味なんだけど……攻略法が間違っていたとしたら、俺のここまでの努力は全て無駄になってしまう。

「以上だ。民たちと兵士たち、そしてコックと私。全員でどちらが美味しかったか挙手で決めようと思う」

 投票とかではなく挙手? まあ、民の人数も十人程度で兵士も同じくらいだから大丈夫なのかな。
 実際はポンとセリフが出るだけのイベントだったし、こんなものなんだろうな。
 カティは勝った気満々で胸を張っているけど、結果はどうだろう?

「皆が互いを見てしまうと結果が偏ってしまうだろう。私の号令と共にカティの方がふさわしいと思った者は右手を、ハルの方が美味しいと思ったものは左手をあげるのだ。どちらかしかあげてはならぬ。そして、途中での変更は許されない。よいな?」

 民たちは静かに頷き、緊張の瞬間がやってくる。
 王様は、高らかに宣言した。

「では、どちらの恵みの樹の実が美味しかったか、挙手せよ!」

 王様の号令と共に、皆一斉に手を挙げた。
 俺は緊張しすぎてしまい、目が開けられない。でも、いつまでもこうしている訳にもいかないしゆっくりと目を開いた。
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