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第八章 真のハッピーエンディングを目指して
84.恋愛エンディングフラグ
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なんだこれ、身体に力が入らない。
深くキスをされると、人ってこんなふわふわな感じになっちゃうってことか?
哩夢が好きなのって……そこまで考えて、俺は頭に浮かんだものを消し去って目の前のことに集中する。
「ハル、抵抗しないともっとしちゃうけどいい?」
「……っふ。ぁ……もっと……って?」
「ふふ。ハルはキスされたことがなさそう。良かった。でも……これ以上は俺が我慢できないからやめておく」
いつもと違う色気のある声が耳元に吹き込まれると、俺の身体がぶるりと震えた。
それに、いつの間にかラウディの腕で身体を支えられていたことに気付いて急に羞恥心がむくむくと湧いてくる。
「なっ……今、何した? 俺、どうなってる?」
「誓いのキス。この木の下で誓ったし……ハルと一緒に素敵な未来が過ごせると信じてる」
「そ、そっか。そうだよな。はは……うん、俺も」
熱くなった体温をごまかすようにパタパタと手で顔をあおぐ。
俺の様子を見ながら、ラウディは楽しそうに笑って俺が落ち着くまで側にいてくれた。
暫くしてしゃんと立てるようになってから、ラウディに家まで送ってもらった。
び、びっくりした……。キスされるとは思ってたけど、ディープなやつをされるとは思ってなかった。
でも、ハッキリと告白されちゃったな。これで、ラウディとの恋愛エンディングのフラグは立った。
「フラグって……もう、そんな言い方をするのも失礼だよな」
俺はちょんと指先で自分の唇に触れる。
ラウディの唇の感触を思い出して、顔がかぁっと熱くなってきた。
「参ったな……俺、完全に……」
哩夢の満面の笑みが浮かんできて、慌てて頭を振って顔を追い出していく。
でも、俺……嫌じゃないって思っちゃってる時点で……手遅れ?
しっかりと距離を置いていたはずなのになぁ……それがいい方に思ってもらった結果、好意をもたれていたなんて。
「分かってる。まだ、気は抜けない。カティもやる気を出していたみたいだし、負けるわけにはいかない」
俺から見れば、カティはライバル。
今までは本気じゃなかったけど、最終報告までにはルカンと力を合わせて育成を進めてくるはずだ。
俺も必死にならないと!
「ラウディ……」
憂いを帯びた瞳に、熱がこもった瞳も……どの瞳で見つめられても嬉しく思う俺がいる。
本当は答えなんて出てる気がする。だけど、あと少しだから――
「必ず、答えるよ」
ベッドに寝転んで、誰に聞かせるでもなく呟く。
新たな決意と共に、残りの育成も全力で頑張ろうと誓った。
+++
次の日から、俺はお手伝いとアイテム屋を往復しながら必死に恵みの樹の育成に励んだ。
ラウディにも癒してもらい、お手伝い先ではお茶に招待してもらったりしながら金貨を集めてはアイテム屋へ走りアイテムを買い揃えて育成に向かうことを繰り返す。
恵みの樹の前では、ルカンが願いをこめてカティの樹を育てている姿も何度も見かけた。
時々、アウレリオルも力を貸していたのも変わらない。
他の精霊の姿はあまり見かけなかったから、最初の予想通りの炎と光の力が混ざった恵みの樹になるだろう。
俺のシンプルな見た目の恵みの樹と、赤く色づき尖った葉を持つ生命力にあふれたカティの恵みの樹。
どちらの実が認められるのか、最終報告になる収穫祭は間近に迫っていた。
「ハル、大丈夫?」
「ラウディ、ありがとう。大丈夫……だと思う。だと思うじゃダメだよな。大丈夫だ」
「ハルは毎日頑張ってた。きっと、いい結果になる」
「だよな。どっちにしてもラウディにはちゃんと返事をするよ」
ラウディが最後に励ましだと言って、俺の家に来てくれた。
精霊はエーテルヴェールの担当区域を見回るという仕事があるみたいなんだけど、その見回りを素早く終わらせて俺のところへ駆けつけてくれていたらしい。
深くキスをされると、人ってこんなふわふわな感じになっちゃうってことか?
哩夢が好きなのって……そこまで考えて、俺は頭に浮かんだものを消し去って目の前のことに集中する。
「ハル、抵抗しないともっとしちゃうけどいい?」
「……っふ。ぁ……もっと……って?」
「ふふ。ハルはキスされたことがなさそう。良かった。でも……これ以上は俺が我慢できないからやめておく」
いつもと違う色気のある声が耳元に吹き込まれると、俺の身体がぶるりと震えた。
それに、いつの間にかラウディの腕で身体を支えられていたことに気付いて急に羞恥心がむくむくと湧いてくる。
「なっ……今、何した? 俺、どうなってる?」
「誓いのキス。この木の下で誓ったし……ハルと一緒に素敵な未来が過ごせると信じてる」
「そ、そっか。そうだよな。はは……うん、俺も」
熱くなった体温をごまかすようにパタパタと手で顔をあおぐ。
俺の様子を見ながら、ラウディは楽しそうに笑って俺が落ち着くまで側にいてくれた。
暫くしてしゃんと立てるようになってから、ラウディに家まで送ってもらった。
び、びっくりした……。キスされるとは思ってたけど、ディープなやつをされるとは思ってなかった。
でも、ハッキリと告白されちゃったな。これで、ラウディとの恋愛エンディングのフラグは立った。
「フラグって……もう、そんな言い方をするのも失礼だよな」
俺はちょんと指先で自分の唇に触れる。
ラウディの唇の感触を思い出して、顔がかぁっと熱くなってきた。
「参ったな……俺、完全に……」
哩夢の満面の笑みが浮かんできて、慌てて頭を振って顔を追い出していく。
でも、俺……嫌じゃないって思っちゃってる時点で……手遅れ?
しっかりと距離を置いていたはずなのになぁ……それがいい方に思ってもらった結果、好意をもたれていたなんて。
「分かってる。まだ、気は抜けない。カティもやる気を出していたみたいだし、負けるわけにはいかない」
俺から見れば、カティはライバル。
今までは本気じゃなかったけど、最終報告までにはルカンと力を合わせて育成を進めてくるはずだ。
俺も必死にならないと!
「ラウディ……」
憂いを帯びた瞳に、熱がこもった瞳も……どの瞳で見つめられても嬉しく思う俺がいる。
本当は答えなんて出てる気がする。だけど、あと少しだから――
「必ず、答えるよ」
ベッドに寝転んで、誰に聞かせるでもなく呟く。
新たな決意と共に、残りの育成も全力で頑張ろうと誓った。
+++
次の日から、俺はお手伝いとアイテム屋を往復しながら必死に恵みの樹の育成に励んだ。
ラウディにも癒してもらい、お手伝い先ではお茶に招待してもらったりしながら金貨を集めてはアイテム屋へ走りアイテムを買い揃えて育成に向かうことを繰り返す。
恵みの樹の前では、ルカンが願いをこめてカティの樹を育てている姿も何度も見かけた。
時々、アウレリオルも力を貸していたのも変わらない。
他の精霊の姿はあまり見かけなかったから、最初の予想通りの炎と光の力が混ざった恵みの樹になるだろう。
俺のシンプルな見た目の恵みの樹と、赤く色づき尖った葉を持つ生命力にあふれたカティの恵みの樹。
どちらの実が認められるのか、最終報告になる収穫祭は間近に迫っていた。
「ハル、大丈夫?」
「ラウディ、ありがとう。大丈夫……だと思う。だと思うじゃダメだよな。大丈夫だ」
「ハルは毎日頑張ってた。きっと、いい結果になる」
「だよな。どっちにしてもラウディにはちゃんと返事をするよ」
ラウディが最後に励ましだと言って、俺の家に来てくれた。
精霊はエーテルヴェールの担当区域を見回るという仕事があるみたいなんだけど、その見回りを素早く終わらせて俺のところへ駆けつけてくれていたらしい。
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