68 / 119
第七章 限界突破のその先は?
65.妹との約束
しおりを挟む
哩夢は俺の表情を見て、何かを察したらしい。
また泣きそうになりながら、俺の腕を握ってくる。
「お兄ちゃんが言おうとしてること、分かる。お兄ちゃん、ゲームに関しては完璧主義者だから、このまま中途半端にできないんでしょ?」
「哩夢……俺さ、お前にもいいように使われるし両親にもどうでもいいって思われてるんだろうなって分かってたからさ。ラブスピのみんなが優しくしてくれて嬉しかったんだ」
「お兄ちゃん……」
「でも、哩夢のことは誤解だった。だけど、俺はラブスピ世界のことも放っておけないんだ。ラウディのこと、悲しませたくないんだよ」
苦笑してみせると、妹は泣きそうになりながら妙な表情へ変わる。
なんだか……期待しているような表情だ。
「お兄ちゃんがまさか、哩夢の推し様と良い関係に? ラウディかけるハル?」
「おい、兄貴で掛け算をするなって! いや、そういえばラブスピって……」
「だって、ラブスピはそれがウリだもん。えっちなシーン自体はないけど、ラブラブにはなれる! いいなぁ、ラウディ様とかぁー」
妹の目が完全に腐女子なんだが……さっきまで泣きそうになってた癖に元気になりやがって。
まあ、その方が哩夢らしいのかもしれないな。
「色々疑問はあるけど、修正まで入ったってことは逆にラブスピ世界へ戻れる可能性もあるってことだよな」
「うん。本当は側にいて欲しいけど……異世界転移なら、行き来できるってことだよね。なら、哩夢はラウディ様をこの目で見てみたい。お兄ちゃん、頑張ってラウディ様を連れてきて!」
「あのなあ。言っとくけど、これが本当に俺の妄想だったらどうするんだよ……俺は信じて欲しいけどさ」
「信じてなかったら、お兄ちゃんのこと止めてたって。その代わり、哩夢に推しとお兄ちゃんのマンガ描かせてよね」
哩夢はそういうと、俺に自分のゲーム機を手渡してきた。
手渡されたところで、どうやって戻れるのかも分からないけど……俺は寝ている状態でラブスピの世界へ入り込んだんだよな。
そして、ラブスピの世界でも意識を失ってこっちの現実世界へ戻ってきた。
ということは、おそらく意識を失うということがトリガーになる気がする。
「哩夢、俺のセーブデータは見当たらないんだよな?」
「哩夢が見たときはなかったんだけど……お兄ちゃんが始めたらあるかもしれないし……あ、もしかしたら」
哩夢はそう言って、ゲーム機の課金サービスでもあるセーブデータお預かりサービスを指さした。
なるほど、本体データは消えたとしてもお預かりサービスに残っている可能性はあるな。
「お預かりサービスにあれば、データを引っ張ってこれるよな。ちょっと見せてもらうぞ」
「うん。必死すぎて続きからがなかったことに驚いて、最初からを選んでラブスピを始めちゃった」
「哩夢まで転移しなくて良かったよ。ゲームしながら眠ると危ないかもしれないから、お前は絶対に寝るなよ」
「お兄ちゃんとは違うから寝たりしないって」
喋りながらデータを探すと、俺が始めた日付のラブスピのデータが残っていた。
これで、ラブスピを再開できそうだ。
俺は続きからを選び、カティのデータでゲームを再開する。
「哩夢、心配かけてごめんな。だけど……俺はラブスピをきちんとクリアしたい。絶対に戻る方法を見つけてくるから待っててくれ」
「うん。お兄ちゃんのゲームの腕は信じてる。いつも絶対に完璧にクリアしてくれるから。それに……このことは哩夢とお兄ちゃんとの内緒ってことでしょ」
「ああ。マンガは……俺というかハルミリオンで描くなら……許す」
「ハルもハルミリオンもそっくりなんですけどー? まあ、いっか。お兄ちゃん、行ってらっしゃい」
哩夢が笑顔で俺に手を振る。
俺はその笑顔にぎこちなく笑って返すと、早速ゲーム画面を覗き込む。
映し出された場面は……嵐の後の場面みたいだ。
画面をのぞき込んでボタンに触れると、何故か急な眠気に襲ってくる。
哩夢が眠そうな俺に気づいて、身体を優しくベッドへ寝かせてくれた。
「信じてるから……ゲームをクリアして、必ず帰ってきてね。お兄ちゃん」
哩夢の言葉が遠くで聞こえたのを最後に、俺の意識は眠りに引き込まれていった。
また泣きそうになりながら、俺の腕を握ってくる。
「お兄ちゃんが言おうとしてること、分かる。お兄ちゃん、ゲームに関しては完璧主義者だから、このまま中途半端にできないんでしょ?」
「哩夢……俺さ、お前にもいいように使われるし両親にもどうでもいいって思われてるんだろうなって分かってたからさ。ラブスピのみんなが優しくしてくれて嬉しかったんだ」
「お兄ちゃん……」
「でも、哩夢のことは誤解だった。だけど、俺はラブスピ世界のことも放っておけないんだ。ラウディのこと、悲しませたくないんだよ」
苦笑してみせると、妹は泣きそうになりながら妙な表情へ変わる。
なんだか……期待しているような表情だ。
「お兄ちゃんがまさか、哩夢の推し様と良い関係に? ラウディかけるハル?」
「おい、兄貴で掛け算をするなって! いや、そういえばラブスピって……」
「だって、ラブスピはそれがウリだもん。えっちなシーン自体はないけど、ラブラブにはなれる! いいなぁ、ラウディ様とかぁー」
妹の目が完全に腐女子なんだが……さっきまで泣きそうになってた癖に元気になりやがって。
まあ、その方が哩夢らしいのかもしれないな。
「色々疑問はあるけど、修正まで入ったってことは逆にラブスピ世界へ戻れる可能性もあるってことだよな」
「うん。本当は側にいて欲しいけど……異世界転移なら、行き来できるってことだよね。なら、哩夢はラウディ様をこの目で見てみたい。お兄ちゃん、頑張ってラウディ様を連れてきて!」
「あのなあ。言っとくけど、これが本当に俺の妄想だったらどうするんだよ……俺は信じて欲しいけどさ」
「信じてなかったら、お兄ちゃんのこと止めてたって。その代わり、哩夢に推しとお兄ちゃんのマンガ描かせてよね」
哩夢はそういうと、俺に自分のゲーム機を手渡してきた。
手渡されたところで、どうやって戻れるのかも分からないけど……俺は寝ている状態でラブスピの世界へ入り込んだんだよな。
そして、ラブスピの世界でも意識を失ってこっちの現実世界へ戻ってきた。
ということは、おそらく意識を失うということがトリガーになる気がする。
「哩夢、俺のセーブデータは見当たらないんだよな?」
「哩夢が見たときはなかったんだけど……お兄ちゃんが始めたらあるかもしれないし……あ、もしかしたら」
哩夢はそう言って、ゲーム機の課金サービスでもあるセーブデータお預かりサービスを指さした。
なるほど、本体データは消えたとしてもお預かりサービスに残っている可能性はあるな。
「お預かりサービスにあれば、データを引っ張ってこれるよな。ちょっと見せてもらうぞ」
「うん。必死すぎて続きからがなかったことに驚いて、最初からを選んでラブスピを始めちゃった」
「哩夢まで転移しなくて良かったよ。ゲームしながら眠ると危ないかもしれないから、お前は絶対に寝るなよ」
「お兄ちゃんとは違うから寝たりしないって」
喋りながらデータを探すと、俺が始めた日付のラブスピのデータが残っていた。
これで、ラブスピを再開できそうだ。
俺は続きからを選び、カティのデータでゲームを再開する。
「哩夢、心配かけてごめんな。だけど……俺はラブスピをきちんとクリアしたい。絶対に戻る方法を見つけてくるから待っててくれ」
「うん。お兄ちゃんのゲームの腕は信じてる。いつも絶対に完璧にクリアしてくれるから。それに……このことは哩夢とお兄ちゃんとの内緒ってことでしょ」
「ああ。マンガは……俺というかハルミリオンで描くなら……許す」
「ハルもハルミリオンもそっくりなんですけどー? まあ、いっか。お兄ちゃん、行ってらっしゃい」
哩夢が笑顔で俺に手を振る。
俺はその笑顔にぎこちなく笑って返すと、早速ゲーム画面を覗き込む。
映し出された場面は……嵐の後の場面みたいだ。
画面をのぞき込んでボタンに触れると、何故か急な眠気に襲ってくる。
哩夢が眠そうな俺に気づいて、身体を優しくベッドへ寝かせてくれた。
「信じてるから……ゲームをクリアして、必ず帰ってきてね。お兄ちゃん」
哩夢の言葉が遠くで聞こえたのを最後に、俺の意識は眠りに引き込まれていった。
495
お気に入りに追加
1,051
あなたにおすすめの小説
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました!
※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる