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第四章 黙々と育成からのお手伝いループ

20.いざ、育成へ

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 効率だけで言ったら、精霊に力を送ってもらうように頼む方がいい。
 だが、力を送ってもらうと一番分かりやすく精霊の好感度をあげることに繋がってしまう。
 だとしたら、多少効率が悪かろうがアイテムを使って自分で世話する方がいい。

「分かってるんで大丈夫です。この手持ちの金貨で買える分だけアイテムをください。まずは一通り」
「ハルがええなら、コッチはかまへんけどな。 おお? 結構金貨を集めてるやないか。じゃあ、少しおまけしたろ」

 今までのお手伝い分の金貨は、手のひらサイズの布袋半分の量くらいになっていた。
 十数枚だったはずなのに、今朝グラウディから持たされた分が思っていたより多かったんだよな。
 布袋ごと渡すと、紫の商人がいくつかのアイテムを見繕ってくれる。
 水色のじょうろと土色のスコップ。光の肥料に青の風袋。闇の防虫薬と炎の活力剤。
 精霊の力が込められた一通りのアイテムだ。

 「初回限定や。詰め合わせセットで持ち運び用の紫印のリュックつきやで。ええやろ? 大きさは堪忍な。せやけど、重量軽減が付いてる優れものや」
 
 紫の商人はキャンプ用くらいの大きさの紫のリュックサックの中に、俺が買ったものを全て詰めてくれた。
 肥料とかが思っていたよりかさばりそうだったし、持ち運べなかったらどうしようと思っていたので正直助かる。

「ありがとうございます。ありがたく使わせていただきます」
「ええよええよ。カティやといつも精霊様へのプレゼントしか買わへんから、久々にアイテム売ったわーって感じや」
「そういえば売ってましたね。俺には必要ありませんが」
「ハハ。しっかし、精霊様の力を間接的に借りるやなんて面白いやっちゃな。気に入った! ついでにコイツも付けたるわ」

 楽しそうな紫の商人に可愛らしく包装されたクッキーらしきものを渡された。
 こんなのアイテム屋のラインナップにあったか? 記憶にない。

「今日は天気もええし、樹のお世話しながら食べてや。そのクッキー、商人のおススメやで」

 楽しそうな表情が気になったけど、悪意はなさそうだし普通のクッキーらしいからありがたくもらっておくことにした。
 つぶれないようにリュックの一番上にクッキーもしまい、身体を屈めて紫のリュックを背負う。
 俺の身長でも大きめだから、まるで山登りをするためのリュックみたいだ。
 紫の商人に、おおきにという言葉と共に見送られながら店を後にした。

 この後はなかなかできていなかった恵みの樹の育成だ。
 カティに大分遅れをとってしまっているし、今日はリュックの中身を全部使う勢いで世話をするしかないな。

「幸い天気もいいみたいだし。今日で巻き返さないとな」

 気合を入れ直して、恵みの樹を目指して歩き始める。
 恵みの樹はアイテム屋からはそう遠くない場所にある恵みの広場にある。
 広場内で俺とカティの樹は比較的近くに植わっていて、お互いに樹の様子を見ることができるようになっていた。
 
 恵みの樹は一旦精霊界に根付かせて育ててから、どういう原理で移動させるのかは分からないけど最終的にアビスヘイヴンへ移動させる。
 ゲームだと画面切り替わると樹が移動してたけど、実際どうなるのかはその時になってみてだよな。

「今はそんなことより育成を……って。あれは……」

 俺が自分の樹へ向かっていると、視界の先に二人いるのが見えてきた。
 一人はカティ。もう一人は美しい銀の長いポニーテールの髪を背に垂らし、ピシッとした貴族風の白く美しい服を着こなす精霊。
 あれは光の精霊アウレリオル……だよな。

 どうやらカティが光の精霊に力を借りたみたいだ。
 俺が近づくとちょうど力を送り込むところだった。
 
「万物を照らす光よ、恵みの樹へ降り注げ――」

 アウレリオルの手のひらからキラキラとした光が溢れ出し、カティの恵みの樹を包み込んでいく。
 すると、樹は光を浴びてすくすくと育ち始めた。
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