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第三章 地道なお手伝いで金貨を稼ごう

14.好感度最低値の弊害

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 今日は起きてから昨日の分を取り返そうと、朝から精力的に動くことにした。
 まだ行ったことのない場所へ行ってみようとすると、今のところ一番相性が良くない精霊と出くわしてしまった。

「お前……俺っちはだまされないからな。真面目なフリして、またカティへ嫌がらせに行くつもりなんだろ!」
「いえ、俺はオブディシアン様の下級精霊のところへ行こうとしていただけです。なので、道を塞ぐのはやめてもらえませんか?」

 この前の中間報告の時に感じていたが、炎の精霊……名前は確かヴォルカング……だったな。
 ヴォルカングとの好感度は、最低値より下回っているんじゃないかと言うくらい敵視されているみたいだ。
 カティとの好感度が高いせいか、俺の行動が特に鼻につくんだろう。
 でも正直、今の俺とは全く関係ないので何もしてないのにケンカを売られても困るだけだ。

 そうはいっても、炎のように燃えるような赤の髪は見た目以上に逆立っているように見えるし深紅の瞳は俺のことを思いきり睨みつけてくる。
 でもこの道を通る以外、闇の精霊の生活区域に行ける道がないんだよな。
 にらみ続けられるのも面倒だし、今日はもう諦めた方がいいのかもしれない。

 話が通じなさそうなので諦めて戻ろうとすると、ヴォルカングの肩が何者かに掴まれてペイッと退かされる。
 ヴォルカングより背の高い黒い影が、お前は子どもか! と、冷たい声で叱責しっせきした。

「ったく。だからお前はダメなんだ。俺様を見習え」
「チッ。面倒なヤツが。今日は討伐じゃなかったのかよ」

 黒甲冑に黒のマント、髪もショートで黒の瞳を持った正に前線で戦いますっていう見た目の闇の精霊オブディシアンだ。
 確か背中に大剣も背負ってたんだよな。
 鎧の胸元が何故かガバっと空いてるデザインのせいでセクシーだという腐女子人気の高いキャラだ。

「終わった。ドラゴン程度大したことはない」

 ドラゴンは大したことないって……一体どういうステータスなんだよと心の中でツッコミを入れておく。
 俺が黙っていると、オブディシアンは俺を見定めるようにじっと見下ろしてきた。

「悪いな。炎の精霊ってのは短気でバカなんだよ。で、俺様のところに用事か?」

 バカと言われたヴォルカングはまたギャンギャン吠え始めたが、オブディシアンが頭を片手でググっと押さえつけてる。
 どうやらオブディシアンの方が一枚上手みたいだな。

「はい。オブディシアン様のところにいる下級精霊のお手伝いをしようと思いまして、向かっている途中でした」
「そうか。俺様も戻るところだし一緒に行くとしよう。という訳だから、邪魔すんな。お前はカティのところへ行ってくればいいだろ。コッチは俺様が付いてるわけだし」

 オブディシアンの目が届くところで俺が何をしようと勝てる訳もない。
 いくら精霊使いの力があると言えども、俺は卵であってそもそも精霊使いは精霊に認められなければ力を借りることさえできない存在だ。
 要はこれ以上ヴォルカングが俺の行き先を邪魔する理由はない。

「……いいか、俺っちは絶対にお前を認めないからな」
「はあ」
「いい加減しつこいぞ。さっさと行け」

 闇の精霊が低い声を出して睨みつけると、さすがのヴォルカングも怒りながら去っていった。
 全く……身の覚えのないことで責められるってのも面倒だな。

「という訳で。俺様も疲れてるんだ。さっさと行くぞ」

 オブディシアンは俺の方を見もせずにさっさと歩き始める。
 別に一緒に行くつもりはなかったんだが、こうなれば仕方ない。
 しばらく後をついていくと、洞窟の入り口が見えてくる。
 オブディシアンは洞窟に住んでいるのだが、この洞窟内はじめじめしてないし薄暗さがちょうどよい落ち着く空間らしい。

「俺様はひと眠りしてくるとする。アイツはそこら辺にいるだろうから、好きにしていいぞ」
「はい。失礼します」

 俺は頭を下げて、オブディシアンが洞窟の中へ入っていくのを見送った。
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