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第一章 チュートリアル

2.攻略開始

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 本当は女主人公を選びたいのだが、これは妹のデータだ。仕方なく男主人公で始める。
 キャラメイキングも詳しく指示を出されていたので、その通りに作り上げていく。
 顔のパーツごと細かく選べるし、肌色や一人称まで選べる。
 パーツ素材は、近年の洋ゲーを思い出させる豊富さだ。

「サラサラのブロンドショートヘアに、愛らしい茶色の瞳? ……いかにもっていう見た目」

 妹の希望で最初から新しいデータでゲームを開始する。
 いつか無理やり見せつけられた同人誌の妹の理想の受けキャラっていうのに近い見た目だ。
 つまり、そういうことなんだろう。深く考えたら負けだ。

 オープニングが始まり、世界観の説明がムービーで流れてくる。
 荒廃した大地。アビスヘイヴンに連れてこられた若き二人の男。
 二人は精霊たちと心を通わすことができると言い伝えられている、精霊使いの卵だ。
 彼らはシルヴァンヘイム王国の王の命により、不思議な種を授かる。
 不思議な種は恵みの樹になると言われており、根差した大地に永遠の繁栄をもたらすといわれる樹の種だ。

 +++
 
『お前たちはアビスヘイヴンにある白の神殿から精霊界エーテルヴェールへ行き、彼らの力を借りながら恵みの樹を育ててくれ。育てた樹は最後アビスヘイヴンへと持ち帰り、根付かせる。根付かせたあとの収穫祭で恵みの樹に実った実を食べることによって二人のうちどちらが我々の食と幸せを満たすのか判定する』

 王様が長々と説明してくれているが、要は育成ゲームだ。
 主人公とライバルがいて、二人のどちらが恵みの樹を上手く育てられるのかを競う。
 ただ、精霊たちというのが全員イケメンでルートによっては彼らとの恋愛エンドを見ることができる。
 普通に樹を育てながら、ライバルにも打ち勝って美味しい実のなる恵みの樹を根付かせるのがノーマルエンド。
 勿論これもハッピーエンドではあるが、妹は精霊とのエンディングをご所望だ。
 しかも、一番の推しというのが隠れイケメンと言われている土の精霊。
 憂いを帯びた表情が一部ファンにはたまらないらしい。

「しかし、さすが乙女ゲー。どの精霊もイケメンしかいない。土の精霊は……前髪で顔は分からないけど」
 
 軽くスマホでゲームの下調べをしたが、特に有益な情報は得られなかった。
 問題は妹が言っていた通り、このゲームの難易度が高いということだ。
 育成と親密度の関係がとてもデリケートで、二つの値を調整するのが難しいらしい。
 しかも王様との最終謁見までに用意されているイベントをしっかりと起こしておさえておかないと、狙った恋愛エンドに到達できないしやり直しも許されない。
 最近のゲームの中では過酷な条件が揃っているせいか、時間のない社会人は早々に諦めて攻略勢の攻略待ちになっているらしい。

「土の精霊の攻略方法は、まだ発売されて間もないし誰も分かってない。まずはノーマルエンドを目指してから総当たりでやるしかないな」

 一番やりたくない作業だが仕方ない。
 俺は乙女ゲーが好きな訳ではないが、難易度が高いゲームほど燃えるタイプだ。
 是が非でもクリアしてやらないと気が済まない。
 そのためなら、睡眠を削るくらいどうってことないことだ。
 オープニングが終わったところで、まずはアビスヘイヴンからカーソルを動かして白の神殿へ。
 ここまではチャートに従って自動でイベントが進んでいく。

 主人公が神殿の奥で精霊へ祈りを捧げると、辺りが光に包まれて精霊界エーテルヴェールへ移動する。

『私はリバイアリス。水の精霊です。若き精霊使いの卵よ、あなたの願いはこちらにも届いております。荒廃した土地アビスヘイヴンを豊かな土地へ変えるため、私たちも喜んで力をお貸ししましょう』

 リバイアリス……絶対に一発で名前を覚えられない気がする。
 彼は精霊の中でも一番の年長者で、美しい水色の腰より長い髪と薄いビロードのようなローブを着ている穏やかで見た目も麗しい精霊だ。
 この程度の情報は公式サイトにも書いてあるから分かるけど、詳しいことはやりながら覚えていくしかなさそうだ。
 彼の案内で、精霊たちが住んでいる居住区へ案内される。
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