3 / 117
第一章 チュートリアル
2.攻略開始
しおりを挟む
本当は女主人公を選びたいのだが、これは妹のデータだ。仕方なく男主人公で始める。
キャラメイキングも詳しく指示を出されていたので、その通りに作り上げていく。
顔のパーツごと細かく選べるし、肌色や一人称まで選べる。
パーツ素材は、近年の洋ゲーを思い出させる豊富さだ。
「サラサラのブロンドショートヘアに、愛らしい茶色の瞳? ……いかにもっていう見た目」
妹の希望で最初から新しいデータでゲームを開始する。
いつか無理やり見せつけられた同人誌の妹の理想の受けキャラっていうのに近い見た目だ。
つまり、そういうことなんだろう。深く考えたら負けだ。
オープニングが始まり、世界観の説明がムービーで流れてくる。
荒廃した大地。アビスヘイヴンに連れてこられた若き二人の男。
二人は精霊たちと心を通わすことができると言い伝えられている、精霊使いの卵だ。
彼らはシルヴァンヘイム王国の王の命により、不思議な種を授かる。
不思議な種は恵みの樹になると言われており、根差した大地に永遠の繁栄をもたらすといわれる樹の種だ。
+++
『お前たちはアビスヘイヴンにある白の神殿から精霊界エーテルヴェールへ行き、彼らの力を借りながら恵みの樹を育ててくれ。育てた樹は最後アビスヘイヴンへと持ち帰り、根付かせる。根付かせたあとの収穫祭で恵みの樹に実った実を食べることによって二人のうちどちらが我々の食と幸せを満たすのか判定する』
王様が長々と説明してくれているが、要は育成ゲームだ。
主人公とライバルがいて、二人のどちらが恵みの樹を上手く育てられるのかを競う。
ただ、精霊たちというのが全員イケメンでルートによっては彼らとの恋愛エンドを見ることができる。
普通に樹を育てながら、ライバルにも打ち勝って美味しい実のなる恵みの樹を根付かせるのがノーマルエンド。
勿論これもハッピーエンドではあるが、妹は精霊とのエンディングをご所望だ。
しかも、一番の推しというのが隠れイケメンと言われている土の精霊。
憂いを帯びた表情が一部ファンにはたまらないらしい。
「しかし、さすが乙女ゲー。どの精霊もイケメンしかいない。土の精霊は……前髪で顔は分からないけど」
軽くスマホでゲームの下調べをしたが、特に有益な情報は得られなかった。
問題は妹が言っていた通り、このゲームの難易度が高いということだ。
育成と親密度の関係がとてもデリケートで、二つの値を調整するのが難しいらしい。
しかも王様との最終謁見までに用意されているイベントをしっかりと起こしておさえておかないと、狙った恋愛エンドに到達できないしやり直しも許されない。
最近のゲームの中では過酷な条件が揃っているせいか、時間のない社会人は早々に諦めて攻略勢の攻略待ちになっているらしい。
「土の精霊の攻略方法は、まだ発売されて間もないし誰も分かってない。まずはノーマルエンドを目指してから総当たりでやるしかないな」
一番やりたくない作業だが仕方ない。
俺は乙女ゲーが好きな訳ではないが、難易度が高いゲームほど燃えるタイプだ。
是が非でもクリアしてやらないと気が済まない。
そのためなら、睡眠を削るくらいどうってことないことだ。
オープニングが終わったところで、まずはアビスヘイヴンからカーソルを動かして白の神殿へ。
ここまではチャートに従って自動でイベントが進んでいく。
主人公が神殿の奥で精霊へ祈りを捧げると、辺りが光に包まれて精霊界エーテルヴェールへ移動する。
『私はリバイアリス。水の精霊です。若き精霊使いの卵よ、あなたの願いはこちらにも届いております。荒廃した土地アビスヘイヴンを豊かな土地へ変えるため、私たちも喜んで力をお貸ししましょう』
リバイアリス……絶対に一発で名前を覚えられない気がする。
彼は精霊の中でも一番の年長者で、美しい水色の腰より長い髪と薄いビロードのようなローブを着ている穏やかで見た目も麗しい精霊だ。
この程度の情報は公式サイトにも書いてあるから分かるけど、詳しいことはやりながら覚えていくしかなさそうだ。
彼の案内で、精霊たちが住んでいる居住区へ案内される。
キャラメイキングも詳しく指示を出されていたので、その通りに作り上げていく。
顔のパーツごと細かく選べるし、肌色や一人称まで選べる。
パーツ素材は、近年の洋ゲーを思い出させる豊富さだ。
「サラサラのブロンドショートヘアに、愛らしい茶色の瞳? ……いかにもっていう見た目」
妹の希望で最初から新しいデータでゲームを開始する。
いつか無理やり見せつけられた同人誌の妹の理想の受けキャラっていうのに近い見た目だ。
つまり、そういうことなんだろう。深く考えたら負けだ。
オープニングが始まり、世界観の説明がムービーで流れてくる。
荒廃した大地。アビスヘイヴンに連れてこられた若き二人の男。
二人は精霊たちと心を通わすことができると言い伝えられている、精霊使いの卵だ。
彼らはシルヴァンヘイム王国の王の命により、不思議な種を授かる。
不思議な種は恵みの樹になると言われており、根差した大地に永遠の繁栄をもたらすといわれる樹の種だ。
+++
『お前たちはアビスヘイヴンにある白の神殿から精霊界エーテルヴェールへ行き、彼らの力を借りながら恵みの樹を育ててくれ。育てた樹は最後アビスヘイヴンへと持ち帰り、根付かせる。根付かせたあとの収穫祭で恵みの樹に実った実を食べることによって二人のうちどちらが我々の食と幸せを満たすのか判定する』
王様が長々と説明してくれているが、要は育成ゲームだ。
主人公とライバルがいて、二人のどちらが恵みの樹を上手く育てられるのかを競う。
ただ、精霊たちというのが全員イケメンでルートによっては彼らとの恋愛エンドを見ることができる。
普通に樹を育てながら、ライバルにも打ち勝って美味しい実のなる恵みの樹を根付かせるのがノーマルエンド。
勿論これもハッピーエンドではあるが、妹は精霊とのエンディングをご所望だ。
しかも、一番の推しというのが隠れイケメンと言われている土の精霊。
憂いを帯びた表情が一部ファンにはたまらないらしい。
「しかし、さすが乙女ゲー。どの精霊もイケメンしかいない。土の精霊は……前髪で顔は分からないけど」
軽くスマホでゲームの下調べをしたが、特に有益な情報は得られなかった。
問題は妹が言っていた通り、このゲームの難易度が高いということだ。
育成と親密度の関係がとてもデリケートで、二つの値を調整するのが難しいらしい。
しかも王様との最終謁見までに用意されているイベントをしっかりと起こしておさえておかないと、狙った恋愛エンドに到達できないしやり直しも許されない。
最近のゲームの中では過酷な条件が揃っているせいか、時間のない社会人は早々に諦めて攻略勢の攻略待ちになっているらしい。
「土の精霊の攻略方法は、まだ発売されて間もないし誰も分かってない。まずはノーマルエンドを目指してから総当たりでやるしかないな」
一番やりたくない作業だが仕方ない。
俺は乙女ゲーが好きな訳ではないが、難易度が高いゲームほど燃えるタイプだ。
是が非でもクリアしてやらないと気が済まない。
そのためなら、睡眠を削るくらいどうってことないことだ。
オープニングが終わったところで、まずはアビスヘイヴンからカーソルを動かして白の神殿へ。
ここまではチャートに従って自動でイベントが進んでいく。
主人公が神殿の奥で精霊へ祈りを捧げると、辺りが光に包まれて精霊界エーテルヴェールへ移動する。
『私はリバイアリス。水の精霊です。若き精霊使いの卵よ、あなたの願いはこちらにも届いております。荒廃した土地アビスヘイヴンを豊かな土地へ変えるため、私たちも喜んで力をお貸ししましょう』
リバイアリス……絶対に一発で名前を覚えられない気がする。
彼は精霊の中でも一番の年長者で、美しい水色の腰より長い髪と薄いビロードのようなローブを着ている穏やかで見た目も麗しい精霊だ。
この程度の情報は公式サイトにも書いてあるから分かるけど、詳しいことはやりながら覚えていくしかなさそうだ。
彼の案内で、精霊たちが住んでいる居住区へ案内される。
413
お気に入りに追加
973
あなたにおすすめの小説
弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました!
※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。
白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。
僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。
けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。
どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。
「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」
神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。
これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。
本編は三人称です。
R−18に該当するページには※を付けます。
毎日20時更新
登場人物
ラファエル・ローデン
金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。
ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。
首筋で脈を取るのがクセ。
アルフレッド
茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。
剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。
神様
ガラが悪い大男。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる