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3.村にドラゴンが!
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走って村へ戻ると、村のみんなが集まっていた。
やっぱり悲鳴も聞こえてくる。
男の人たちはみんな手に武器や農具を持って、何かを睨みつけているのが分かる。
「どうして村にドラゴンが!」
「知らねぇ! いいから追い払わないと、このままじゃコッチの命が危ない」
「そんなことより町へ行って救援を、いやさっさと逃げて……うわぁぁぁっ! 風がっ」
村のみんなも色々叫んでいるけど、混乱しているみたい。
指さす人につられて見上げると、家より高いところに黒いドラゴンがいる。
翼をバサバサと動かして風を巻き起こしながら、何かを訴えているみたいだ。
少し遠いから、ドラゴンの言いたいことはまだ分からない。
ドラゴンは空中で僕たちを見下ろしてるだけで何もしてこようとしない。
ただ、村のみんなを見回して大きな声で鳴いているから伝えたいことがあるはずだ。
「とにかく、石でもなんでもいいから投げつけろ!」
「あの強そうなドラゴンに?」
「わぁーんっ! 怖いよー!」
ドラゴンは何もしてないのに?
怒っているのだって、きっと何か訳があるはずなんだ。
それなのに、石を投げるだなんて!
僕が止める前に、大人たちはドラゴンへ向けて石を投げたり武器を振り回したりして攻撃をし始めた。
ドラゴンは村のみんなが石を投げつけてくると、翼をはためかせながらまた声をあげる。
「いいから帰ってくれ! 俺たちの村を荒らすな!」
「何もしてこないならコッチから攻撃しよう!」
何人かの狩りの上手な大人は、屋根に上って弓を構えはじめた。
ドラゴンにも考えていることがあるんだ。
僕は前にたまたま村へきた旅人さんが、ドラゴンは賢いって言っていたのを思い出した。
だから、ドラゴンはきっと分かってくれる。
ドラゴンがみんなを攻撃するつもりだったら、最初から火を噴いたりするはずだ。
僕たちよりドラゴンの方がずっと強いはずだから、ドラゴンが本気で怒ったらもっと大変なことになる。
「ピィ……」
「うん。あのドラゴンは言いたいことがあるんだよ。だから、村までやってきたんだ。だから……僕がドラゴンと話してみる」
ポイはドラゴンを見ておびえてしまっている。
撫でてやると、僕のシャツのポケットの中にもぐり込んだ。
僕が駆け足でみんなの間を擦り抜けてドラゴンに近づいていくと、村長さんの姿が見えてきた。
ドラゴンの言いたいことが分かるのは僕だけだ。
僕は急いで村長さんに駆け寄った。
「村長さん!」
「フィロ? なんだ、今はお前に構っている暇は……」
「僕にドラゴンと話しをさせてください!」
「なんだと?」
僕が大きな声を出すと、石を投げていた大人たちもピタリと動かなくなった。
村長さんもジッと僕を見ていたけど、周りの大人たちと頷き合うと僕の背中をドラゴンの方へ押し出す。
「お前の妙な力が役に立つのかは知らないが、いいだろう。これでフィロが怪我をしようがわしの責任ではないからな」
「……はい。分かってます。大丈夫です、きっと分かってくれます」
僕は村長さんに振り返ってから前を向く。
大きく息を吸い込んで、ドラゴンに話しかけた。
やっぱり悲鳴も聞こえてくる。
男の人たちはみんな手に武器や農具を持って、何かを睨みつけているのが分かる。
「どうして村にドラゴンが!」
「知らねぇ! いいから追い払わないと、このままじゃコッチの命が危ない」
「そんなことより町へ行って救援を、いやさっさと逃げて……うわぁぁぁっ! 風がっ」
村のみんなも色々叫んでいるけど、混乱しているみたい。
指さす人につられて見上げると、家より高いところに黒いドラゴンがいる。
翼をバサバサと動かして風を巻き起こしながら、何かを訴えているみたいだ。
少し遠いから、ドラゴンの言いたいことはまだ分からない。
ドラゴンは空中で僕たちを見下ろしてるだけで何もしてこようとしない。
ただ、村のみんなを見回して大きな声で鳴いているから伝えたいことがあるはずだ。
「とにかく、石でもなんでもいいから投げつけろ!」
「あの強そうなドラゴンに?」
「わぁーんっ! 怖いよー!」
ドラゴンは何もしてないのに?
怒っているのだって、きっと何か訳があるはずなんだ。
それなのに、石を投げるだなんて!
僕が止める前に、大人たちはドラゴンへ向けて石を投げたり武器を振り回したりして攻撃をし始めた。
ドラゴンは村のみんなが石を投げつけてくると、翼をはためかせながらまた声をあげる。
「いいから帰ってくれ! 俺たちの村を荒らすな!」
「何もしてこないならコッチから攻撃しよう!」
何人かの狩りの上手な大人は、屋根に上って弓を構えはじめた。
ドラゴンにも考えていることがあるんだ。
僕は前にたまたま村へきた旅人さんが、ドラゴンは賢いって言っていたのを思い出した。
だから、ドラゴンはきっと分かってくれる。
ドラゴンがみんなを攻撃するつもりだったら、最初から火を噴いたりするはずだ。
僕たちよりドラゴンの方がずっと強いはずだから、ドラゴンが本気で怒ったらもっと大変なことになる。
「ピィ……」
「うん。あのドラゴンは言いたいことがあるんだよ。だから、村までやってきたんだ。だから……僕がドラゴンと話してみる」
ポイはドラゴンを見ておびえてしまっている。
撫でてやると、僕のシャツのポケットの中にもぐり込んだ。
僕が駆け足でみんなの間を擦り抜けてドラゴンに近づいていくと、村長さんの姿が見えてきた。
ドラゴンの言いたいことが分かるのは僕だけだ。
僕は急いで村長さんに駆け寄った。
「村長さん!」
「フィロ? なんだ、今はお前に構っている暇は……」
「僕にドラゴンと話しをさせてください!」
「なんだと?」
僕が大きな声を出すと、石を投げていた大人たちもピタリと動かなくなった。
村長さんもジッと僕を見ていたけど、周りの大人たちと頷き合うと僕の背中をドラゴンの方へ押し出す。
「お前の妙な力が役に立つのかは知らないが、いいだろう。これでフィロが怪我をしようがわしの責任ではないからな」
「……はい。分かってます。大丈夫です、きっと分かってくれます」
僕は村長さんに振り返ってから前を向く。
大きく息を吸い込んで、ドラゴンに話しかけた。
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