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1.一日の始まり
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顔に当たる光が眩しい。いい天気だ。
お日様はぽかぽかで、もっと寝ていたくなっちゃう。
でも、そろそろ起きる時間だ。
僕は背伸びをして身体を起こす。
ここはグラム村。
森の中の小さな村だけど、みんな畑でお野菜を作ったり動物を育てたりしながら静かに暮らしてる。
僕はもう少し小さな頃にふらっと村の入口に立っていたらしい。
どうして一人でいたのかも、よく覚えていない。
お母さんやお父さんのことも思い出せない。
記憶がすっぽりなくて、覚えていたのは自分の名前だけだった。
村長さんはそんな僕をグラム村に招き入れてくれて、僕が住む場所を貸してくれた。
それからは村長さんのお家でお手伝いをしながら、馬小屋で寝起きしている。
馬小屋には屋根もあるし、干し草のベッドも少しだけちくちくするけど暖かい。
村長さんが僕のことを追い出したりしないから、僕はこの村で暮らしていける。
さあ、今日もお手伝いを頑張らなくっちゃ!
「フィロ、フィロ! さっさと水汲みに行ってきておくれ」
「はぁい。今行きます」
馬小屋の外から僕を呼んだのは、グラム村の村長さんの奥さんのマーヤさんだ。
マーヤさんは怒りっぽいけど、僕がちゃんとお仕事をすればご飯だって食べさせてくれる。
言いつけ通りに馬小屋の外に置いてあるバケツを持って、近くの川まで水を汲みに行く。
「ピ!」
「ふふ。おはよう、ポイ。今日もいい天気だね」
僕が森で出会った赤い鳥、ポイだ。
この前、蜘蛛の巣に絡まっていたところを助けてあげたら僕にくっついてきた。
村長さんたちにも、自分で面倒を見るなら好きにしていいと言われたから一緒に暮らし始めた。
この子は頭も良いし、餌も僕が食べている豆を食べるだけで満足してくれるから一緒に住むことができる。
「今日のお仕事が少し早く終わったら、お散歩しようかな」
「ピピ!」
「ポイもお散歩に行きたそうだね。お手伝い終わったら一緒に行こう」
キラキラと輝く川に着いたので、水を汲んだ。
水汲みは一度じゃ終わらないから、いつも何度か往復する。
「フィロ、それが終わったら馬小屋の掃除だ。馬の世話もしっかりとするんだよ」
村長さんの家の前の水がめに水をためていると、マーヤさんからまた話しかけられた。
馬のお世話は僕がやるお手伝いの一つだ。
お手伝いをして、ご飯を食べて、ゆっくり眠る。
僕の一日は大体そんな感じだ。
でも、お手伝いも嫌いじゃないし僕が暮らしていけるのは村長さんのおかげだ。
だから、僕ができることは何だってしたい。
「分かりました」
「なんでかあんたが言ったことは当たるから、馬たちも言うことを聞いてくれるし。さ、しっかりおやり」
マーヤさんの言った通り、僕はなんとなく馬の言いたいことが分かる。
みんな分かるのかと思ったけど、違うみたい。
今日は調子がいいよーとか、ちょっと足が痛いんだーとか。
話しかけると、馬が僕にちゃんと答えてくれる。
馬だけじゃなくって、他の生き物の言いたいこともなんとなく分かる。
ポイともいつもお話している。
人と同じようにお話するのとはちょっと違うけど、生き物とお話するのは楽しい。
もう一度バケツを持って川へ向かおうとすると、横から声を掛けられる。
顔を向けると、やっぱりアンカ君だった。
アンカ君は村長さんの息子で、いつも他の男の子たちと村中を駆け回っている。
「フィロ、しっかりやれよ! フィロがちゃんとやらないと怒られるのは俺なんだからな。お前は変なヤツだから、良い人になるためにしっかりとお手伝いをするだぞ」
「うん……大丈夫だよ」
「ねぇ、アンカ。そんなヤツ放っておいて早く行こうよ!」
アンカ君は誘いにきたモーブ君に連れていかれちゃった。
もう少しお話したかったんだけどなぁ。
でもアンカ君や他のみんなは、僕のことを変なヤツだと言って近寄ってきてくれない。
アンカ君たちとお友達になりたいのになあ。
お日様はぽかぽかで、もっと寝ていたくなっちゃう。
でも、そろそろ起きる時間だ。
僕は背伸びをして身体を起こす。
ここはグラム村。
森の中の小さな村だけど、みんな畑でお野菜を作ったり動物を育てたりしながら静かに暮らしてる。
僕はもう少し小さな頃にふらっと村の入口に立っていたらしい。
どうして一人でいたのかも、よく覚えていない。
お母さんやお父さんのことも思い出せない。
記憶がすっぽりなくて、覚えていたのは自分の名前だけだった。
村長さんはそんな僕をグラム村に招き入れてくれて、僕が住む場所を貸してくれた。
それからは村長さんのお家でお手伝いをしながら、馬小屋で寝起きしている。
馬小屋には屋根もあるし、干し草のベッドも少しだけちくちくするけど暖かい。
村長さんが僕のことを追い出したりしないから、僕はこの村で暮らしていける。
さあ、今日もお手伝いを頑張らなくっちゃ!
「フィロ、フィロ! さっさと水汲みに行ってきておくれ」
「はぁい。今行きます」
馬小屋の外から僕を呼んだのは、グラム村の村長さんの奥さんのマーヤさんだ。
マーヤさんは怒りっぽいけど、僕がちゃんとお仕事をすればご飯だって食べさせてくれる。
言いつけ通りに馬小屋の外に置いてあるバケツを持って、近くの川まで水を汲みに行く。
「ピ!」
「ふふ。おはよう、ポイ。今日もいい天気だね」
僕が森で出会った赤い鳥、ポイだ。
この前、蜘蛛の巣に絡まっていたところを助けてあげたら僕にくっついてきた。
村長さんたちにも、自分で面倒を見るなら好きにしていいと言われたから一緒に暮らし始めた。
この子は頭も良いし、餌も僕が食べている豆を食べるだけで満足してくれるから一緒に住むことができる。
「今日のお仕事が少し早く終わったら、お散歩しようかな」
「ピピ!」
「ポイもお散歩に行きたそうだね。お手伝い終わったら一緒に行こう」
キラキラと輝く川に着いたので、水を汲んだ。
水汲みは一度じゃ終わらないから、いつも何度か往復する。
「フィロ、それが終わったら馬小屋の掃除だ。馬の世話もしっかりとするんだよ」
村長さんの家の前の水がめに水をためていると、マーヤさんからまた話しかけられた。
馬のお世話は僕がやるお手伝いの一つだ。
お手伝いをして、ご飯を食べて、ゆっくり眠る。
僕の一日は大体そんな感じだ。
でも、お手伝いも嫌いじゃないし僕が暮らしていけるのは村長さんのおかげだ。
だから、僕ができることは何だってしたい。
「分かりました」
「なんでかあんたが言ったことは当たるから、馬たちも言うことを聞いてくれるし。さ、しっかりおやり」
マーヤさんの言った通り、僕はなんとなく馬の言いたいことが分かる。
みんな分かるのかと思ったけど、違うみたい。
今日は調子がいいよーとか、ちょっと足が痛いんだーとか。
話しかけると、馬が僕にちゃんと答えてくれる。
馬だけじゃなくって、他の生き物の言いたいこともなんとなく分かる。
ポイともいつもお話している。
人と同じようにお話するのとはちょっと違うけど、生き物とお話するのは楽しい。
もう一度バケツを持って川へ向かおうとすると、横から声を掛けられる。
顔を向けると、やっぱりアンカ君だった。
アンカ君は村長さんの息子で、いつも他の男の子たちと村中を駆け回っている。
「フィロ、しっかりやれよ! フィロがちゃんとやらないと怒られるのは俺なんだからな。お前は変なヤツだから、良い人になるためにしっかりとお手伝いをするだぞ」
「うん……大丈夫だよ」
「ねぇ、アンカ。そんなヤツ放っておいて早く行こうよ!」
アンカ君は誘いにきたモーブ君に連れていかれちゃった。
もう少しお話したかったんだけどなぁ。
でもアンカ君や他のみんなは、僕のことを変なヤツだと言って近寄ってきてくれない。
アンカ君たちとお友達になりたいのになあ。
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