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第3章:生い立ち編2 ~見聞の旅路~
第77話 奴隷の城館3
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ガサッ・・・・
ガサッガサッ・・・・
カチャリ・・・・
チャリン・・・・
『・・・・うっ・・・・なんの・・・・音・・・・だ・・・・』
頭も身体もやけに重たく感じる。
どうやらベッドの上にいるようだ。
エリオスはゆっくりと瞬きを繰り返すとガサゴソと音のする方へ目を向けた。
ガサッ・・・・
ガサッガサッ・・・・
赤茶色の髪をした細身の男が目に入った。
両手で大事そうに真っ白な布に包まれた何かを抱えている。
エリオスは瞬きを繰り返し、ぼやける視界で目を凝らした。
トサッ・・・・
布に包まれた何かはエリオスの右横にそっと置かれた。
サラリ・・・・
フワリ・・・・
赤茶色の髪の男は包んでいた布を丁寧に開いた。
『・・・・なんだ・・・・この・・・・白の・・・・!!!』
ガシッ!!!
エリオスは重い身体を反転させ、左手で赤茶色の髪の男の右腕を掴んだ。
必死に声を出す。
「やっ・・・・ゴホッ!!!やめろっ!!ゴホッゴホッ!!!セッ・・・・セルジオ様・・・・ゴホッゴホッ!!!・・・・手を・・・・離せっ!!!ゴホッゴホッ!!!ガハッ!!」
包まれた真っ白な布の中から現れたのは一糸まとわない姿のセルジオだった。
金色の髪が萌黄色に染められている。
赤茶色の髪の男は無言でエリオスを一瞥する。
そのまま何もなかったかのようにセルジオを包んでいた布をファサリと床に落とした。
傍らに用意していた白いシャツを着せる。
セルジオが着せられている服装は貴族の子弟が身に付けるものだった。
エリオスはぐっと左手に力を入れ、赤茶色の髪の男の右腕を掴む。
「はっ・・・・離せっ!!ゴホッ!!セルジオ様からっ・・・・手を・・・・」
バシッ!!!
赤茶色の髪の男はエリオスの左手を事もなげに振り払った。
ギロリとエリオスを睨み付けると再びセルジオの衣服を整えていった。
エリオスはなすすべもなく、重たい頭と身体を起こそうと全身に力を入れる。
しかし、己の思う様に身体が動かすことができないと察すると動きを止めてセルジオの衣服を整える男の顔をじっと見つめた。
「・・・・諦めたか。今は、そのまま動かずじっとしていろ」
男は口元をほとんど動かさずに小声で指示をした。
「お前は今、何の役にも立たない。己の身すら守ることができない。その様な時の対処法も心得ているようだな」
男はひとり言の様にぼそぼそと呟いている。
「・・・・」
ぼんやりしていた視界がやっと色を帯びてきた。
エリオスは己の身体に目を向ける。
セルジオと同じ様に貴族の子弟が身に付ける服装だった。
男はエリオスの様子を感じ取っている様だった。
セルジオの衣服を整えるとフワリと優しく抱き上げ、エリオスの手の届く右横に寝かせた。
エリオスを無表情で見下す。
黒に近い茶色の瞳が鈍い光を放っていた。
「お前、毒の耐性訓練を受けているのか?気付の薬を使う前に目覚めたな。こいつは未だ目覚めぬというに・・・・まぁ・・・・当然か・・・・」
最後の方は聞えない程の小声だった。
「・・・・」
エリオスは横になったまま無言で男を見上げる。
真っ直ぐに見返すエリオスに男は一瞬に口元を歪めた。
「小一時間程すれば、こいつも目覚める。お前の身体も自由に動く様になる。安心しろ・・・・まぁ、この部屋の中だけの話だがな」
男は今度はエリオスにハッキリ解る様にニヤリと口元を歪めた。
「こいつとお前を天がどう観ているか、楽しみだ」
男は顎をしゃくってセルジオを指した。
「こいつが目覚める頃に食事を運ぶ。この部屋から出る事はできないが、ここでは自由だ。何をしていても構わない。ただ、逃げ出す算段をしても無駄だぞ。お前の事だ、扉の外に気配を感じているのだろう?大人しくしているのが身の為だ。こいつを大切に思うのであれば、まずはお前がこいつを大人しくさせることだな。わかったな」
男は再びニヤリと口元を歪めるとセルジオへ視線を向けた。
穏やかな表情で眠っているセルジオを確認すると静かに扉を開けて出て行った。
パタンッ・・・・
扉が完全に閉じる音を聞くとエリオスは大きく息を吐いた。
「・・・・ここは、どこなのだ?屋敷のようだが・・・・」
訓練施設や騎士団城塞ではあり得ない大きなガラス窓から青空が見える。
掌に力を込めると少しづつ自由が戻ってきていた。
左手が動く事を確認するとそっとセルジオの頬へ手を伸ばした。
「・・・・温かい・・・・よかった・・・・眠られているだけだな・・・・」
つい先ごろ娼館街で己の金色の髪を短剣で切った時よりも更に短く刈られ、萌黄色に染められたセルジオの髪を優しくなでる。
「セルジオ様・・・・私は諦めません。どの様な状況であっても我らはセルジオ騎士団西の屋敷に生きて戻るのです。私は諦めません」
力強く、己に言い聞かせる様に言葉を発するとエリオスは再び大きく息を吐いた。
【春華のひとり言】
今日もお読み下さり、ありがとうございます。
囚われの身のセルジオとエリオス。
髪を刈られ、染められて、服装も変えられて、一見してセルジオとエリオスだと解らない姿にされました。
二人は一体、何をされるのか・・・・
バルトとオスカーは二人を助け出すことができるのか・・・・
主人公なので・・・・ご安心下さい。
次回もよろしくお願い致します。
ガサッガサッ・・・・
カチャリ・・・・
チャリン・・・・
『・・・・うっ・・・・なんの・・・・音・・・・だ・・・・』
頭も身体もやけに重たく感じる。
どうやらベッドの上にいるようだ。
エリオスはゆっくりと瞬きを繰り返すとガサゴソと音のする方へ目を向けた。
ガサッ・・・・
ガサッガサッ・・・・
赤茶色の髪をした細身の男が目に入った。
両手で大事そうに真っ白な布に包まれた何かを抱えている。
エリオスは瞬きを繰り返し、ぼやける視界で目を凝らした。
トサッ・・・・
布に包まれた何かはエリオスの右横にそっと置かれた。
サラリ・・・・
フワリ・・・・
赤茶色の髪の男は包んでいた布を丁寧に開いた。
『・・・・なんだ・・・・この・・・・白の・・・・!!!』
ガシッ!!!
エリオスは重い身体を反転させ、左手で赤茶色の髪の男の右腕を掴んだ。
必死に声を出す。
「やっ・・・・ゴホッ!!!やめろっ!!ゴホッゴホッ!!!セッ・・・・セルジオ様・・・・ゴホッゴホッ!!!・・・・手を・・・・離せっ!!!ゴホッゴホッ!!!ガハッ!!」
包まれた真っ白な布の中から現れたのは一糸まとわない姿のセルジオだった。
金色の髪が萌黄色に染められている。
赤茶色の髪の男は無言でエリオスを一瞥する。
そのまま何もなかったかのようにセルジオを包んでいた布をファサリと床に落とした。
傍らに用意していた白いシャツを着せる。
セルジオが着せられている服装は貴族の子弟が身に付けるものだった。
エリオスはぐっと左手に力を入れ、赤茶色の髪の男の右腕を掴む。
「はっ・・・・離せっ!!ゴホッ!!セルジオ様からっ・・・・手を・・・・」
バシッ!!!
赤茶色の髪の男はエリオスの左手を事もなげに振り払った。
ギロリとエリオスを睨み付けると再びセルジオの衣服を整えていった。
エリオスはなすすべもなく、重たい頭と身体を起こそうと全身に力を入れる。
しかし、己の思う様に身体が動かすことができないと察すると動きを止めてセルジオの衣服を整える男の顔をじっと見つめた。
「・・・・諦めたか。今は、そのまま動かずじっとしていろ」
男は口元をほとんど動かさずに小声で指示をした。
「お前は今、何の役にも立たない。己の身すら守ることができない。その様な時の対処法も心得ているようだな」
男はひとり言の様にぼそぼそと呟いている。
「・・・・」
ぼんやりしていた視界がやっと色を帯びてきた。
エリオスは己の身体に目を向ける。
セルジオと同じ様に貴族の子弟が身に付ける服装だった。
男はエリオスの様子を感じ取っている様だった。
セルジオの衣服を整えるとフワリと優しく抱き上げ、エリオスの手の届く右横に寝かせた。
エリオスを無表情で見下す。
黒に近い茶色の瞳が鈍い光を放っていた。
「お前、毒の耐性訓練を受けているのか?気付の薬を使う前に目覚めたな。こいつは未だ目覚めぬというに・・・・まぁ・・・・当然か・・・・」
最後の方は聞えない程の小声だった。
「・・・・」
エリオスは横になったまま無言で男を見上げる。
真っ直ぐに見返すエリオスに男は一瞬に口元を歪めた。
「小一時間程すれば、こいつも目覚める。お前の身体も自由に動く様になる。安心しろ・・・・まぁ、この部屋の中だけの話だがな」
男は今度はエリオスにハッキリ解る様にニヤリと口元を歪めた。
「こいつとお前を天がどう観ているか、楽しみだ」
男は顎をしゃくってセルジオを指した。
「こいつが目覚める頃に食事を運ぶ。この部屋から出る事はできないが、ここでは自由だ。何をしていても構わない。ただ、逃げ出す算段をしても無駄だぞ。お前の事だ、扉の外に気配を感じているのだろう?大人しくしているのが身の為だ。こいつを大切に思うのであれば、まずはお前がこいつを大人しくさせることだな。わかったな」
男は再びニヤリと口元を歪めるとセルジオへ視線を向けた。
穏やかな表情で眠っているセルジオを確認すると静かに扉を開けて出て行った。
パタンッ・・・・
扉が完全に閉じる音を聞くとエリオスは大きく息を吐いた。
「・・・・ここは、どこなのだ?屋敷のようだが・・・・」
訓練施設や騎士団城塞ではあり得ない大きなガラス窓から青空が見える。
掌に力を込めると少しづつ自由が戻ってきていた。
左手が動く事を確認するとそっとセルジオの頬へ手を伸ばした。
「・・・・温かい・・・・よかった・・・・眠られているだけだな・・・・」
つい先ごろ娼館街で己の金色の髪を短剣で切った時よりも更に短く刈られ、萌黄色に染められたセルジオの髪を優しくなでる。
「セルジオ様・・・・私は諦めません。どの様な状況であっても我らはセルジオ騎士団西の屋敷に生きて戻るのです。私は諦めません」
力強く、己に言い聞かせる様に言葉を発するとエリオスは再び大きく息を吐いた。
【春華のひとり言】
今日もお読み下さり、ありがとうございます。
囚われの身のセルジオとエリオス。
髪を刈られ、染められて、服装も変えられて、一見してセルジオとエリオスだと解らない姿にされました。
二人は一体、何をされるのか・・・・
バルトとオスカーは二人を助け出すことができるのか・・・・
主人公なので・・・・ご安心下さい。
次回もよろしくお願い致します。
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