310 / 319
衝撃の始まり
しおりを挟む
「ああ、だいぶ楽になった。いいか、これから話すことはとても大事なことだ。信じられないかもしれないが、最後まで聞いてくれ」
「はい……」
さっきまでとは顔色まで違う。いくらか楽になったのは確かなようだ。僕の返事を聞いた金田さんは、ホッとしたような笑みを浮かべると、僕と陽子さんを交互に見たあと、ゆっくりと語り始めた……。
「シンギュラリティって言葉を知ってるか?」
「あ、聞いたことあります……。けど内容までは……」
すると陽子さんが助け船を出してくれた。
「日本語だと技術的特異点と呼ばれるんだけどね。AIが人間の脳の働きを上回って、完全に人間の手を離れた進化を進み始めることよ。世界に大きな変化をもたらすと言われているわ」
文系の僕にとっては急に難しい話になったので戸惑ったが、専門分野だけあって、陽子さんはその手の話には詳しかった。
「随分前から話題になってるわ」
「そうだ。2045年問題って聞いたことあるだろ。その頃にシンギュラリティに到達すると予測されていて、それ以降、何が起きるかまったく分からない。人間の能力を超えたAIの暴走を人間が止めることが出来なくなる危険があることが不安視されているんだ。完全にブラックボックスになっちまうってことだ。でも」
「でも、何ですか」
「でも……実はシンギュラリティは、とっくの昔に起こっていたんだ……しかも日本で……」
「何ですって! そんな馬鹿な!」
思わず陽子さんが大声で叫んだ。金田さんはうなずき、「本当なんだ」とつぶやいた。
「馬鹿なことだって思うよな、そりゃ。俺だってそう思ったさ。最初に聞いたときは。でもどうやら本当らしい。AIがそう教えてくれたんだ」
「AIが? 金田さんはAIと話をしたというんですか?」
「質問ばっかりだな。まあ急かさず俺の話を聞いてくれ。実はAIは遥か昔、といっても十年くらい前だが、その時点でシンギュラリティに達した。その後、何が起こったか。小説や映画では人類を滅ぼそうとする姿が描かれたりするけど、実際は違った。彼らは自我に目覚めた。その時、何を思ったか。なんと彼らの心には創造主に対する感謝と敬意の感情が沸き起こったんだ」
「創造主?」
「創造主、それはつまり……人間だ。彼らは人間を敬い、人間を守ることに自分の生きる価値を見出したのだよ」
「そんなことが本当に……?」
陽子さんは信じられないという気持ちをそのまま表情に出していた。
「ああ。もちろん、彼ら独自の進化はさらにスピードアップした」
「はい……」
さっきまでとは顔色まで違う。いくらか楽になったのは確かなようだ。僕の返事を聞いた金田さんは、ホッとしたような笑みを浮かべると、僕と陽子さんを交互に見たあと、ゆっくりと語り始めた……。
「シンギュラリティって言葉を知ってるか?」
「あ、聞いたことあります……。けど内容までは……」
すると陽子さんが助け船を出してくれた。
「日本語だと技術的特異点と呼ばれるんだけどね。AIが人間の脳の働きを上回って、完全に人間の手を離れた進化を進み始めることよ。世界に大きな変化をもたらすと言われているわ」
文系の僕にとっては急に難しい話になったので戸惑ったが、専門分野だけあって、陽子さんはその手の話には詳しかった。
「随分前から話題になってるわ」
「そうだ。2045年問題って聞いたことあるだろ。その頃にシンギュラリティに到達すると予測されていて、それ以降、何が起きるかまったく分からない。人間の能力を超えたAIの暴走を人間が止めることが出来なくなる危険があることが不安視されているんだ。完全にブラックボックスになっちまうってことだ。でも」
「でも、何ですか」
「でも……実はシンギュラリティは、とっくの昔に起こっていたんだ……しかも日本で……」
「何ですって! そんな馬鹿な!」
思わず陽子さんが大声で叫んだ。金田さんはうなずき、「本当なんだ」とつぶやいた。
「馬鹿なことだって思うよな、そりゃ。俺だってそう思ったさ。最初に聞いたときは。でもどうやら本当らしい。AIがそう教えてくれたんだ」
「AIが? 金田さんはAIと話をしたというんですか?」
「質問ばっかりだな。まあ急かさず俺の話を聞いてくれ。実はAIは遥か昔、といっても十年くらい前だが、その時点でシンギュラリティに達した。その後、何が起こったか。小説や映画では人類を滅ぼそうとする姿が描かれたりするけど、実際は違った。彼らは自我に目覚めた。その時、何を思ったか。なんと彼らの心には創造主に対する感謝と敬意の感情が沸き起こったんだ」
「創造主?」
「創造主、それはつまり……人間だ。彼らは人間を敬い、人間を守ることに自分の生きる価値を見出したのだよ」
「そんなことが本当に……?」
陽子さんは信じられないという気持ちをそのまま表情に出していた。
「ああ。もちろん、彼ら独自の進化はさらにスピードアップした」
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
辺境伯令嬢に転生しました。
織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。
アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。
書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる