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残された三人
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「ああ、それ。不良品チェック用のやつ」
来たばかりの女性が言った。
「えっ、不良品? じゃあ、食べたらダメってこと?」
がっかりした顔のいのりが肩を落とす。
「いえ、食べても平気よ。刻印が間違ってるだけだから」
「あ、そうなの。やったあ」
いのりがはしゃぐのを尻目に、その女性は当惑の色を濃くしていた。
「一体、どうなっているんですか! そもそもここはどこで、あなたたちは何者なんですか?」
彼女が狼狽える姿を見た僕は、いつまでも放ったらかしはマズイと判断して、必要なことを伝えた。
「はいはい。今から説明しますからパニックにならないで落ち着いてください。ここじゃ、ゆっくり話せないでしょうから、この近くの家にお連れしますから、詳しい話はそこで。海原君、家への道すがら、ある程度説明してくれるかな?」
「ええ、任せてください。あ、ええと、あなたのお名前は?」
海原君の問いに、彼女は一瞬躊躇ったが、諦めたように名前を告げた。得体の知れない怪しい者たちに自分の名前を教えていいんだろうか、という迷いがあったに違いない。
「私は遠藤真奈花と言います」
「じゃあ、真奈花さん、僕らと一緒に行きましょう。いのりも行くぞ」
「はーい」
「仕方ないわね。訳が分かんないけど、今はあなたたちに従うほかなさそうね。ここがどこかも、何もかも分からないことだらけだから。でも危険はない……わよね?」
「ああ、心配要りません。みんな優しい人ばかりですから」
「みんなって……まだ他にもたくさんいるというの? なんだか怖いわね。ギャングだって『心配要りません』ぐらいは平気で言うし」
「ああ、もう。つべこべ言ってないで、一緒に来なさいよ。まったく、これだから大人は嫌なの。理屈ばっかりこねて」
動きの鈍い真奈花さんに痺れを切らしたいのりがヘソを曲げる。
「分かったわよ。行くわよ。行くから」
「素直でよろしい」
すったもんだの末、海原君といのりは、真奈花さんを連れて家へと向かった。あとには僕と陽子さん、病に倒れている金田さんが残された。
「行っちゃいましたね」
「ええ」
その時、金田さんが苦しそうに呻き声をあげたあと、ゆっくり口を開いた。
「健太……居るか?」
「ええ、健太です。陽子さんも居ますよ」
「は、話しておかなけばならないことが……あるんだ……」
「あんまり無理しないほうが!」
「大丈夫だ……まだしばらくはな。すまんが、首の下に何か入れてくれ。そのほうが話しやすい……」
僕は持っていた小さな鞄を金田さんの首の後ろに当てた。
来たばかりの女性が言った。
「えっ、不良品? じゃあ、食べたらダメってこと?」
がっかりした顔のいのりが肩を落とす。
「いえ、食べても平気よ。刻印が間違ってるだけだから」
「あ、そうなの。やったあ」
いのりがはしゃぐのを尻目に、その女性は当惑の色を濃くしていた。
「一体、どうなっているんですか! そもそもここはどこで、あなたたちは何者なんですか?」
彼女が狼狽える姿を見た僕は、いつまでも放ったらかしはマズイと判断して、必要なことを伝えた。
「はいはい。今から説明しますからパニックにならないで落ち着いてください。ここじゃ、ゆっくり話せないでしょうから、この近くの家にお連れしますから、詳しい話はそこで。海原君、家への道すがら、ある程度説明してくれるかな?」
「ええ、任せてください。あ、ええと、あなたのお名前は?」
海原君の問いに、彼女は一瞬躊躇ったが、諦めたように名前を告げた。得体の知れない怪しい者たちに自分の名前を教えていいんだろうか、という迷いがあったに違いない。
「私は遠藤真奈花と言います」
「じゃあ、真奈花さん、僕らと一緒に行きましょう。いのりも行くぞ」
「はーい」
「仕方ないわね。訳が分かんないけど、今はあなたたちに従うほかなさそうね。ここがどこかも、何もかも分からないことだらけだから。でも危険はない……わよね?」
「ああ、心配要りません。みんな優しい人ばかりですから」
「みんなって……まだ他にもたくさんいるというの? なんだか怖いわね。ギャングだって『心配要りません』ぐらいは平気で言うし」
「ああ、もう。つべこべ言ってないで、一緒に来なさいよ。まったく、これだから大人は嫌なの。理屈ばっかりこねて」
動きの鈍い真奈花さんに痺れを切らしたいのりがヘソを曲げる。
「分かったわよ。行くわよ。行くから」
「素直でよろしい」
すったもんだの末、海原君といのりは、真奈花さんを連れて家へと向かった。あとには僕と陽子さん、病に倒れている金田さんが残された。
「行っちゃいましたね」
「ええ」
その時、金田さんが苦しそうに呻き声をあげたあと、ゆっくり口を開いた。
「健太……居るか?」
「ええ、健太です。陽子さんも居ますよ」
「は、話しておかなけばならないことが……あるんだ……」
「あんまり無理しないほうが!」
「大丈夫だ……まだしばらくはな。すまんが、首の下に何か入れてくれ。そのほうが話しやすい……」
僕は持っていた小さな鞄を金田さんの首の後ろに当てた。
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