異世界転移物語

月夜

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食材管理について

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「でもまた無くなると困るから……分散してそれぞれ管理するっていうのはどう?」

 理科さんからそんな提案が出たのは少し意外だったが、理科さんの表情を見る限り、実に淡々としていて、ただリスクを避けるという一点からの発言に思えた。誰か特定の人物の再犯を念頭に置いての提案というわけではなさそうだ。

「それも大変じゃない? 食事する人はいちいち他の人から食材かき集めなくちゃならないし」

 安食さんの率直な意見を、各自が吟味する。理科さんの意見も安食さんの意見もそれぞれ一理あると僕は思った。ならば……

「それなら」

 僕より先に口を開いたのは海原君だった。

「半分くらいは今まで通り一箇所で共同管理して、残り半分は皆で分け合って管理するっていうのはどうでしょう?」

「おお、なるほど」と最初に反応したのは和也だった。それを皮切りに、皆から「賛成」とか「それがいいわ」などと同意する声が聞かれた。

「どうやらそれが一番現実的な対応みたいですね。食材がなくなった経緯はよく分かりませんが、これからそれでやっていきましょう」

 僕の提案に他のメンバーからの異論はなかった。そんなわけで、今後の食材保管に関しては、一括管理と分散管理を併用することになった。

 とりあえずは食料の問題が解決したので、その日の午前はまたそれぞれの通常の暮らしに戻った。と言っても、理科さんや陽子さんは他から来たばかりだし、いのりちゃんや和也の役割もまだ明確になっていない状態なので、そのあたりの話し合いをしたり、周囲を散策したりであっという間に午前の時間は過ぎた。

 昼飯時、僕は一つの提案をした。

「もしかしたら、午後イチで金田さんが帰ってくるかもしれないので、誰か複数で迎えに行きませんか。場合によっては背負うか、あるいは担架みたいなものも必要になるかもしれないので」

「そうだな。テントの幕を担架代わりに使えるように持っていくか。おい、若いの。お前、背負ってやれ」

「え、僕ですか……」

 林さんに名指しされ、びっくりした和也が答える。

「僕、あんまり力仕事得意じゃないんですが……」

「お前じゃねえよ。その後ろ」

 おどおど答える和也の背中越しに海原君を指差す林さん。

「分かりました」

 即答だ。さすが農高生。力仕事はお手のもんだろう。

「まあ、金田さんが帰ってくるかは分からないけどね」

 僕はそうなったらいいな、と期待しつつ、そう断った。

「それじゃあ、誰が迎えにいくことになるのかな」と安食さん。
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