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朝の発見
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「馬鹿でかい声あげるなよ。何事かと思ったよ」
「いやあ、あんまり気持ちいい朝だったんでな。体動かしてるとつい叫びたくなって」
「紛らわしい」
僕は眠い目を擦りながら、元気な奴だなあと少々呆れていた。そこへ安食さんが走ってきた。
「料子さんが呼んでるわ。なんか食材が見つかったって」
「えっ、どこで?」
「詳しくは知らない。起きてる人に声かけてって」
僕らは安食さんについて家に入った。料子さんが戸惑った表情で、しゃがんでいた。
「食材があったんですって?」
息急ききって問いただす僕に、料子さんは首をひねりながら「そうなのよねえ……」と再び首をひねる。
「元の場所にあったってこと?」と和也。
「ええ。そうよ。最初にあった場所に戻ってた。朝、起きてきてみたらあったの」
「だとすれば、誰かが夜の間に戻したってことよね?」
安食さんが興味津々という顔で勢い込んで言う。
「まあ、普通に考えればそういうことになるよね。でも誰がやったとか、分かるかな。この家では女性陣が寝てたんだよね」
僕には別の考えも頭の片隅に浮かんでいたので、慎重にこの謎を探ろうとした。
「ええ。私と料子さん、いのりちゃんがここで寝てたわ。優子ちゃん、理科さん、陽子さんは別の家」と安食さんが答える。
「不審な人物とか気がつかなかったですか?」
「全然。だって私ぐっすり寝てたし。料子さんはどう?」
「私もまったく。夜、一度も起きなかったからね。いのりちゃんはどうかな」
「あの子、まだ寝てるから、多分知らなさそうだけどね。若い子は本当いくらでも寝られるね」
「夜、起きてたから今も寝てるのかも知れませんけどね」
和也が意地悪く言う。まあ、そう考えられなくもないのだが。
「他の人も起こしたほうがいいかな?」
僕はみんなに問うた。
「もうみんな起きてるんじゃない? 日も昇ってるし」と安食さん。
ほどなく残りのメンバーも自然にこの家に集まってきた。全部で五件あるのでバラバラに寝ていたが、それぞれみんなで起きていたようだ。
話を聞いた海原君は「不思議ですね」と一言言ったっきり黙り込んだ。てっきりまた犯人探しを始めるのかと思っていたので、少々意外に感じた。もしかして、一晩じっくり考えて思うところがあるのかもしれない。
「まあ、なんにしても良かったじゃないか。これで食料に関してはひとまず安心だな」
林さんは誰を責めるでもなく、今の状況を純粋に喜んでいるようだ。そこに関しては僕も同様の気持ちだし、他のメンバーも似たようなものだろう。
「いやあ、あんまり気持ちいい朝だったんでな。体動かしてるとつい叫びたくなって」
「紛らわしい」
僕は眠い目を擦りながら、元気な奴だなあと少々呆れていた。そこへ安食さんが走ってきた。
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「えっ、どこで?」
「詳しくは知らない。起きてる人に声かけてって」
僕らは安食さんについて家に入った。料子さんが戸惑った表情で、しゃがんでいた。
「食材があったんですって?」
息急ききって問いただす僕に、料子さんは首をひねりながら「そうなのよねえ……」と再び首をひねる。
「元の場所にあったってこと?」と和也。
「ええ。そうよ。最初にあった場所に戻ってた。朝、起きてきてみたらあったの」
「だとすれば、誰かが夜の間に戻したってことよね?」
安食さんが興味津々という顔で勢い込んで言う。
「まあ、普通に考えればそういうことになるよね。でも誰がやったとか、分かるかな。この家では女性陣が寝てたんだよね」
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「ええ。私と料子さん、いのりちゃんがここで寝てたわ。優子ちゃん、理科さん、陽子さんは別の家」と安食さんが答える。
「不審な人物とか気がつかなかったですか?」
「全然。だって私ぐっすり寝てたし。料子さんはどう?」
「私もまったく。夜、一度も起きなかったからね。いのりちゃんはどうかな」
「あの子、まだ寝てるから、多分知らなさそうだけどね。若い子は本当いくらでも寝られるね」
「夜、起きてたから今も寝てるのかも知れませんけどね」
和也が意地悪く言う。まあ、そう考えられなくもないのだが。
「他の人も起こしたほうがいいかな?」
僕はみんなに問うた。
「もうみんな起きてるんじゃない? 日も昇ってるし」と安食さん。
ほどなく残りのメンバーも自然にこの家に集まってきた。全部で五件あるのでバラバラに寝ていたが、それぞれみんなで起きていたようだ。
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「まあ、なんにしても良かったじゃないか。これで食料に関してはひとまず安心だな」
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