異世界転移物語

月夜

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見えない監視者

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「うーん。寝てる間は分かんないけど、起きてるときは常にって感じかな。場所とか関係ないみたい」

「常にか……。女の子の生活を一日中監視するなんて普通の人間には無理だろうな。外出時ならまだしも、家の中でもとなると」

 自分の質問に対する彼女の答えを聞いて、より不可解さが増した気がする。

「ここならまあ森の中に誰か隠れてても分かりはしないだろうから『見られている』という事実があったとしても不思議ではない」

「いのりちゃんほどの可愛い子なら、僕だってストーカーしたくなるよ」

 和也の言葉にいのりは少しだけ頬を赤らめた。和也ってこんな軽薄なキャラだっけ?

「和也の物騒な発言はともかく、これがいのりちゃんだけに起こっていることなのか、それとも僕らが気づいてないだけで、実際には僕らも監視されているのではないか、というあたりは考えどころだな」

「僕らの行動も誰かに見られてるってこと?」

「その可能性もあるってことだ。まあ、そんな兆候は今まで感じたことないけどな」

「それこそ霊とかじゃないのか」

 和也は最初の時点に話を戻す。

「いのりちゃんは霊が見えるの?」

「ううん。見えたことはないけど、なんかそう、ゾクゾクする感じ?」

「今もしてる?」と僕。

 いのりちゃんはブルブルっと首を振る。

「今は大丈夫みたい」

 僕は「うーん」と天井を仰いだ。なんともつかみどころのない話で漠然とし過ぎている。いのりが嘘を言っているとか勘違いしているってことも充分あり得るから、この話をこれ以上発展させても仕方がないかもしれない。

「とにかくここにいれば心配しなくてもいいよ。僕らも歳が近い、って言っても結構離れてるんだけど、なんでも話してくれていいから。桂坂さんもいるしね」

 いのりを安心させるように声かけしたが、いのりの方は、まだ僕らを全面的に信用出来ないという雰囲気を漂わせていた。

 僕はいのりのことは一端忘れて、金田さんの様子を伺った。金田さんは家の隅で横になって休んでいる。陽子さんと理科さんが近くで世話するために待機していた。

「金田さん、気分はどうですか?」

「ああ。横になれたから随分楽になった。まだ熱はあるみたいだけどな」

 陽子さんが金田さんの額に手を当て、再度熱を測る。そして浮かない顔をした。

「うーん。前より熱は上がってるかもしれないわね」

「薬があればいいんだけど」

 僕はもちろんここに薬がないことを知っているので叶わぬ希望であるが。唯一可能性があるのは、新しく来る人が薬を持ってくること。以前はそのタイミングでドクターが来たりしたが、そうそう毎回都合よく事が運ぶとも思えない。
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