異世界転移物語

月夜

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時間のズレ

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「それで私たちは集落についたあと、生活基盤を作るため、周辺の地理をいくつかのグループに分かれて調査することにしたの。水や食料の確保で重要だからね。私も一つのグループに加わって、森の中を調査してたんだけど、仲間からちょっと離れた瞬間、いきなり目眩に襲われ、気がついたら別の場所に移動してたの。ご覧の通り、この場所なんだけどね」

「ええっ。ということは理科さんは新しい集落に着いた直後にこっちに来て今に至るわけですか? つまり僕と別れてから四日しか経ってないと?」

「そういうことね。少なくとも私の時間はそう。健太君は違うの?」

「はい。もう二週間以上経過してます」

「やだ、嘘! それって……」

「ええ、時間の流れも個人によって異なるというのが確定しましたね。そもそもみんな5月20日から転移してくるので、各々時間のズレが生じてはいたんですが、新たな転移によってもさらに時間にズレが生じることが判明しましたね。予想はしていたんですが、これで間違いないと思います」

「うーん、確かにそうかもしれないわね……。
それはそうと、健太君がここにいるってことは、集落が近くにあるの?」

 理科さんはわずかに目を輝かせて僕を見た。せっかく期待させて悪いのだが、僕は真実を話さねばなるまい。

「いえ、以前の集落は近くにありません。僕もあれからもう一度転移してるんですよ」

「えっ、あ、そうなの? なるほどなるほど。でも私が転移したんだから健太君が転移しててもおかしくはないわよね。じゃ、金田さんや和也君は新しい所のメンバー?」

「ええ、そうです。以前よりは小さいですけど、拠点があって今はそこで数人で暮らしています。あ、そうそう、桂坂さんや料子さんも一緒ですよ」

「あら、それは良かったわ。知り合いがいるのは安心出来る。じゃ、これからそこへ戻るの?」

「残念ながら違うんです。この近くに善蔵さん夫婦という方がいらっしゃって、僕らはそこに向かっている途中だったんですよ。もうすぐそこですから、理科さんも一緒に来てもらったらいいかと思います。あっ、理科さん、一人ですよね?」

「ええ、私一人よ」

「金田さん、それでいいですよね?」

「うん。いいんじゃないかな。ここまで来て元の家に戻るのももったいないし、どうせ明日明後日あたりには帰るんだから、その時一緒に帰ったらいいだろう。こっちに来たばっかりってことは寝ぐらもないんだろう?」

 金田さんの問いに理科さんは「うんうん」とうなずく。
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