異世界転移物語

月夜

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健太と和也

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「それって、あまり根拠のない話ですよね?」

 僕は疑問をぶつけてみた。

「そうかもしれない。だが、とにかく調べられるところは調べていかないと、なんだか落ち着かないんだ」

 金田さんは何故か焦っているみたいだった。もともとたった数人で生活していた期間があったことを考えると、ここ数日でめまぐるしく人数の変化があったところであまり気にならないと思うのだが、逆に変化を恐れているようだ。

 しかしながら、見方を変えれば、自分の方はこれだけ色々な異変がありながら案外落ち着き払えていることに驚かずにもいられない。以前の自分ならすぐにパニックになっていたであろうが、この世界に来て耐性がついたというか、妙な開き直りが出来た心境になっている。これは人間的に成長したと言えるのだろうか?

「それじゃ、行き慣れた金田さんと健太君が行ったほうがいいわね。私らじゃ、足手まといになりかねないわ」

 料子さんの意見に反対するものはいなかった。ただ、和也がそれに関心を示した。

「僕も一緒に行っていいですか?」

「和也君か。うん。健太君と友達みたいだし、気心の知れた同士なら、一緒に同行してもらってもいいと思う。健太君もいいだろ?」

「はい。僕は全然構いません」

 金田さんから振られ、僕は即答した。友達だし、断る理由はない。

「でも……残るのは釣りキチさんを除けば、女の人だけになりますが、いいですか?」

 僕は料子さんたちに確認した。

「ああ、全然大丈夫よ。安食さんと優子ちゃんとあたしと三人もいれば問題ないでしょ」

 なんとも頼もしい料子さんの言葉に、桂坂さんも安食さんもうなずく。これで決まりだな。和也は料子さんに向かってもう一度懇願するように言った。

「ありがとうございます。やっぱりこの世界に来たばっかりなので、色んなところを見てみたいんです」

 当然の感覚だ。僕も和也が早くこの世界に慣れてくれたほうがいい。まあそう言って見て回って、栗原君たちは消えてしまったわけだが……。

 その後ミーティングでは簡単な役割の再確認などが行われたが、人が行方不明になってしまった事実の重さを感じてか、どことなく皆元気がないようだった。なのでミーティングはいつもより早めに切り上げた。

「健太、どうだ? 久しぶりにゆっくり話さないか?」

 和也にそう声をかけられたのはミーティングが終わってすぐだった。僕としても渡りに船だ。僕のほうも和也から色々と聞きたいことがたくさんあった。

「和也、照明持ってる?」

「ああ、懐中電灯ならあるよ。ランタン兼用で使えるタイプだ」

「どんなやつ?」

「電池式だけど、手回しでも発電できるやつだ」

「それは好都合だな。なら、それ持ってきて。使ってない家で二人でゆっくり話そう」

僕らは宿泊に使っている家の隣にある別の家に入って、ランタンを吊すと、どかっと座り込んだ。そして、わずかばかりの水をビールがわりにして、擬似飲み会を始めた。
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