異世界転移物語

月夜

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転移の考察

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「それはちょっと根拠が乏しいんじゃないか」

 僕の主張に金田さんは懐疑的な反応を見せた。

「あくまで可能性の一つということなら分かるが」

 皆の反応を見ると、金田さんの論調に賛同している人が多いみたいだ。僕の考えはやや早計過ぎたか。

「だが、善蔵さんたちも林さんたちも転移してしまった可能性はかなり高いな。予兆がまったく見られなかったことから考えても」

 金田さんのその意見には僕も賛成だ。ただし、二つの転移に関連があるかどうかは分からない。

「だとしたら、私たちはこれからどうしたらいいのかしら」

 桂坂さんが金田さんと僕を交互に見ながら尋ねる。

「自分たちの転移に注意する?」

 僕は自分で言っておきながら、なんとも頓珍漢な回答だなと思った。

「いつ転移が起こるか分からないなら、気をつけようもないがな」

 金田さんはやっぱり冷静に突っ込んだ。

「単独行動かどうかはあまり関係ないかしらね?」

 料子さんが首をひねる。

「今までの例をみると、むしろ複数で行動中の転移というパターンが多いようだな。だから、集団で行動したって安全とは言えない」

「金田さん、それじゃ転移に備えるのは無駄ってことですか?」

 僕が思わず口を挟むと、金田さんは首を振った。

「いや、転移を防止することは出来なくても、転移が起きることを想定して常に準備しておく、というのは大事だと思う。例えば、2、3日分の食料や懐中電灯などをそれぞれ常に持ち運ぶとか……」

「なるほど……。死活問題ですもんね。やはり食料が一番大事なのかな」

「私一人で生き延びる自信はないわ……」

 僕が相槌を打ったあと、安食さんが心細げに呟いた。それはまあそうだろう。僕だって、最初一人だったけど、生き延びられたのは運が良かったからに過ぎないと思う。たまたま食料は余裕があったし、集落も見つけることが出来たが、あのまま一人彷徨いながら、森の中でのたれ死んでた可能性もあっただろう。

「まあ、あんまり暗く考えてもしょうがないわよ。そうなったらなったで、なんとかなるでしょ」

 料子さんが持ち前の楽天的な志向でその場をとりなす。

「とりあえず、今ある持ち物を整理して、それぞれがなるべく均等に所持しておくようにしよう」

 金田さんのその意見に全員が賛成し、その後作業を進めた。今はとりあえず、今後この六人で生活していくと考えて、生活基盤を作っていくしかないと思う。

 翌日も朝から、新しい役割のもとで、それぞれ生活基盤の構築に励んだ。釣りキチさんは一人で川に釣りに行ってもらっている。
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