異世界転移物語

月夜

文字の大きさ
上 下
231 / 319

苦戦する原因究明

しおりを挟む
「まあ、そうなるかな……。もともと泊まるつもりで来たんだし、最悪明日の朝までだって待てるからな」

 金田さんと僕は善蔵さんたちの家に戻ることにした。戻ってみると、やはりというか、まだ二人は帰っていなかった。とりあえず、この家にしばらく居座ることにする。

「どうしちゃったんでしょうね」

 僕は狭い家の中で座るスペースを探し、ゆっくり尻を落とすと切り出した。

「問題は、二人が自分から姿を消したのか、それとも不可抗力によるものか、だよな?」

「はい。僕らのように強制的に転移されたのであれば、ここに手掛かりなど残ってないはずです。ですが、二人の意志によって消えたのならば、何らかの手がかりが残っていても不思議ではありませんね」

「手掛かりっつってもなあ……」

 金田さんは途方に暮れた表情をした。

「食料はまだかなり残っているみたいなので、完全に引っ越すか長期に出かけるつもりだったわけではないように思うんですが」

「それだけじゃ、簡単に決めつけるのは早計のような気もする。俺は初めてだけど、健太君は一度見てるんだろ。以前見たときと他に何か変わったことに気がつかないの?」

「ええ。見てはいるんですが、そんなにじっくり観察していたわけではないんで、違いと言われてもまるで分かりませんね」

「そうか。やっぱり、その転移とやらが起こった可能性が高いのかな。俺は経験したことないけど」

「まあ、こっちに来るときはみんな経験してるわけですけどね。この世界間の転移でも、前兆のようなものは全然ありません。ある日、突然起こる感じで、予測もできない」

「なんか、こう。この場所に行ったら転移するとか、そんな法則はないのかな?」

「うーん。どうでしょうね。出現場所はある程度限られた決まった場所のようなので、転移する側も固定地点であることは考えられなくもないですが」

 僕はそう答えながら、料子さんたち6人が最初に消えた場所のことを思い出していた。

「料子さんたちが消えたすぐ後で、その場所を調べてみましたが、何も分かりませんでした。調査の途中で誰かが消えることもなかったし。だから、あの場所で必ず転移するってわけじゃないのは確かです」

「なるほど」

「ただ、その後、料子さん、釣りキチさん、海原君の3人に会えたわけで、あの時あの場所て転移が起こったのは確実だと思います」

「善蔵さんたちにも同じことが起こったってわけか……」

 金田さんが下を向きながらまた考え込む。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

潦国王妃の後宮再建計画

紫藤市
ファンタジー
内乱の末に潦国の第九代国王に就いた游稜雅は、宰相の娘である桓蓮花を妃として娶った。王妃として後宮で三食昼寝付きの怠惰な生活を送れることを期待して嫁いできた蓮花は、後宮として使用される殿舎が先の内乱で焼け落ちて使えないことや、自分以外の妃がいないことに驚く。王は、戦禍を被った国を復興させるため、後宮再建に使える国費はほとんどないと蓮花に告げる。後宮必要論を唱え、なんとか後宮を再建させようと蓮花は動き始めるが、妃はひとりで良いと考える王や国費の浪費を心配する大臣たちの反対以外にも蓮花の計画を邪魔をする存在が王宮には跋扈していることが明らかになっていく――。 王宮にあるべき後宮を再建しようとする新米王妃の蓮花と、なりゆきで王に即位したものの一夫一妻が希望で妃の計画を阻止したい(蓮花ひとりを寵愛したい)稜雅の、なかなか平穏無事に新婚生活が始まらない王宮立て直し(王妃は後宮の建て直しも希望)の顛末。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

人の身にして精霊王

山外大河
ファンタジー
 正しいと思ったことを見境なく行動に移してしまう高校生、瀬戸栄治は、その行動の最中に謎の少女の襲撃によって異世界へと飛ばされる。その世界は精霊と呼ばれる人間の女性と同じ形状を持つ存在が当たり前のように資源として扱われていて、それが常識となってしまっている歪んだ価値観を持つ世界だった。そんな価値観が間違っていると思った栄治は、出会った精霊を助けるために世界中を敵に回して奮闘を始める。 主人公最強系です。 厳しめでもいいので、感想お待ちしてます。 小説家になろう。カクヨムにも掲載しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

元英雄 これからは命大事にでいきます

銀塊 メウ
ファンタジー
異世界グリーンプラネットでの 魔王との激しい死闘を 終え元の世界に帰還した英雄 八雲  多くの死闘で疲弊したことで、 これからは『命大事に』を心に決め、 落ち着いた生活をしようと思う。  こちらの世界にも妖魔と言う 化物が現れなんだかんだで 戦う羽目に………寿命を削り闘う八雲、 とうとう寿命が一桁にどうするのよ〜  八雲は寿命を伸ばすために再び 異世界へ戻る。そして、そこでは 新たな闘いが始まっていた。 八雲は運命の時の流れに翻弄され 苦悩しながらも魔王を超えた 存在と対峙する。 この話は心優しき青年が、神からのギフト 『ライフ』を使ってお助けする話です。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

処理中です...