異世界転移物語

月夜

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金田さんとの往路

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「さあさあ、考えててもしょうがないわ。向こうさんと仲良くなるのにはある程度時間がかかってもしょうがないんじゃない? ことさら敵意があるってわけでもないんでしょ。今はあまり間を置かず、二回目の面談に出かけたほうが得策でしょ。それでどうなるかは運任せでいいんじゃないかしら」

 結局、料子さんがうまくまとめてくれた感があり、その線で行こうとなんとなく決まった。僕はそういえばメロンパンの袋の件を善蔵さん達に確かめなかったなあ、と思い出した。明日こそ訊いてみなければ。

 翌日、僕と金田さんはテントを背負い、草刈善蔵さんの家を目指して出発した。目的地もはっきりしているし、男二人なら昨日よりは早く着けるだろう。

「昨日は触れなかったんですが、メロンパンの袋の件を善蔵たちに確認するのを忘れてました」

 僕は歩きながら金田さんにそんな風に話を始めた。

「そうか。それってもし、善蔵さんたちに心当たりがなかったら、また別のグループが存在するってことだよな?」

「ええ、おそらく」

「俺たちもあちこち歩き回ってるから、今までまったく接触しなかったというのも不思議っちゃあ不思議なんだが、まあ絶対ないとも言い切れないしな」

「その人たちに会うことが出来れば、また新たな展開が生まれますね」

「ああ、そうやって、うまく点と点がつながって世界が広がっていくのが理想なんだがな」

 僕はなんとなくどんどん夢が広がってゆく明るいイメージが頭に浮かび、知らず知らずに気持ちが楽になったような気がした。

「僕は前の村で一番最初に来た人間だったので、勝手に僕基準で月日が進んでいると思い込んでいたのですが、実際、善蔵さんたちのように僕よりかなり以前からこちらに人が来ていたということを知って、正直ショックでした」

 楽になったついでに、昨日の僕の正直な感想を聞いてもらうことにする。ちょっと気になっている話だ。

「そりゃ、仕方ないさ。誰だって、他に人がいなけりゃ、自分が一番乗りって思うだろうよ」

「そうですね。でもこの事実は僕にとってすごく重いです。なぜなら、もしかしたら僕がここに来た時点で実際にはもう何年も経っていて、既に何千何万と人がいるって可能性もあるって、初めて考えましたから」

「うん? でもそれはとても嬉しいことじゃないのかな?」

「ええ。確かに嬉しいことです。沢山の人が生きてるわけですから。ですが、逆に考えると、それだけたくさんの人が来ているにも関わらず、その人たちと簡単には会えない、ということは、この世界がものすごく広いということを物語っているのじゃないでしょうか。絶望的に広い……」
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