異世界転移物語

月夜

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現在地と探索方向の考察

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 僕の迷いのない一言に、海原君も助け舟を出してくれた。

「僕はこの世界に来てまだそんなに経ってないですけど、健太さんの判断はこれまでも頼りにしてきたんです。色んな状況を総合的に考慮して最善策を見つけ出す力が、健太さんにはあると思っています」

「……君は随分と信頼されてるんだな。そうか、分かった。みんなに相談してみよう」

「ありがとうございます」

 僕は丁寧に頭を下げた。ここではリーダーという立場ではないけれど、スカウトさんから教わった判断の重要性がここでも活かされたなあと感じた。

 その後、みんなの了承を得て、僕が探索に出ることになった。一名というわけにはいかなく、桂坂さんが一緒に行くことになった。

「また健太君と一緒ね」

 桂坂さんが苦笑する。

「もう腐れ縁だな。こりゃ」

 軽く冗談を交わしたものの、探索の見通しはまるでたっていない。この辺りの地図もなければ、発電機などやキャンプ道具などの機材もない。探索するにしたって、日帰りで確実に帰れる範囲に限られてしまう。

「桂坂さん、何かいい考えある?」

「そうね……。ここから川へ向かうのと垂直方向から少し斜め、つまり北東へまっすぐ進んでいくのはどうかしら?」

「なんで?」

「だって、あの川にいた人たちが近くにいる可能性があるんでしょ。私たちがいた川の方角はここのほぼ西なのよね?」

「ああ。確かにそうだけど」

「で、新しい人が来るここの場は、ここから南に行ったところにあるのよね。もし、川にいた人たちがまっすぐ森を東へ進んで行ったとしたらこの集落に訪れていてもおかしくないし、南の方へ行ったなら、場に来た面々とどこかで接触していてもおかしくない」

「ええと……僕たちが活動してたあたりは、この集落から北西の辺りから川沿いまでの範囲か。君が言いたいのは、その人たちが川から東へ進んでいったのなら集落を越えて先に進むはずはないのだから、この集落より東にはいない。この周辺で空白地帯となるのは北東方向ってことになるのか?」

 少しややこしい話になったが、つまりこのし集落の周辺で比較的、人との接触の可能性が少ないのは北東方向ってことになる。その場合、僕らとニアミスしてる可能性もあるが、なにせ、僕らはまだ日が浅い。

「あくまで可能性が少しばかり高いって話なんだけどね」

 桂坂さんはそう断りを入れる。

「うん。でも、それは一つの材料ではあるな。よし、明日は北東に行ってみよう!」

「それはいいけど、また私たちだけで転移しないように気をつけないとね」

「それもそうだ……って、気をつけようがないよ!」

 二人は声を立てて笑った。まあ、また転移するってことだってあるかもしれないが、そんなのまで一々心配してはいられない。
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