異世界転移物語

月夜

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三人の軌跡

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「そんじゃ、次はこっちのことを話そう。まず最初にこの森に飛ばされたのは林さんなんだ。
それが今から十日前の話。向こうの日時で言えば、やっぱり5月20日だ。飛ばされた場所はこの集落じゃない。ここから30分ほど離れた森の中だ」

「やっぱりそうですか」

「林さんは初日は森で野宿したそうだが、翌日偶然この集落を発見して、宿にし始めたということだ。そしてその翌日、今から八日前だな。その日に俺が来た。俺も来た日は集落にもたどり着けず、林さんとも会えなくて森で一泊した。林さんに会えたのは翌日だ」

「毎日誰かが来るってわけじゃないんですね」

 僕はその点は少々意外だった。てっきりこちらでも毎日規則正しく新しい人が来ると予想していたから。

「そうみたいだな。俺が集落にたどり着いて林さんに会ってから、相談して俺たちが来た場所を毎日確認することにした。誰かがまた来るとも限らないからね。でもしばらく誰も来なかった」

 迎えに行っても期待外れに終わったらさぞかしガッカリするだろうなあ、と僕は思った。

「でも今から四日前に安食さんが来たんだ。で、僕たちと合流して今に至るわけ。今日もさっき行ってみてたんだが誰も来なかったよ」

 まったくこの世界の仕組みというものはよく分からない。神の気分次第で適当に作られているのだろうか?

「林さんは今どこに?」

「森で木を集めてるよ。林さんはチェーンソーとか持ってるしね」

「ああ、林業家でしたよね!」

「まあ燃料の問題もあるから、チェーンソーはあまり使ってないみたいだけど。焚き木用にも木は必要だしさ」

「火は起こせるんですか?」

「うん。幸いライターを持ってきてた。俺はタバコ吸うんでね」

「食料は大丈夫なんですか?」と桂坂さん。

 金田さんはちょっと顔を曇らせた。

「三人ともそれなりに食料も持ってきていたんで、今まではなんとかなった。これからちょっとしんどくなるかもしれないな」

 食料を持たない僕たちはお荷物でしかない。なんだか申し訳ない気持ちになった。

「僕らもろくに持ち合わせてなくて。もし、無理なら食事は自分たちでなんとかします」

 それは本心だった。とりあえず魚が食えればなんとかなるだろう。先に来た人に迷惑をかけるわけにはいかない。

「いや、気にするな。お互い様だろ。それに安定して釣りが出来るってのは結構大きいよ。ここじゃ肉がないから魚は貴重だしな」

「そういえば、金田さんたちは川のほうに行きました?」

 僕は川沿いの焼けた石のことを思い出して、確認してみた。
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