異世界転移物語

月夜

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新たなる出逢い

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「僕たちに警戒してる感じはなかったですよ」

 海原君が印象を述べる。

「それはすごいな。昼飯後にみんなでそこに行きましょう」

 僕は躊躇なくそう言った。やっと光が見えてきた。この光をしっかり掴まなければなるまい。

 僕らは荷物を持って、五人全員で新しい集落に向かった。快く受け入れてくれる保証はないが、またここに戻っても仕方がない。どうせ長くは暮らしていけない。それならば、ダメ元で新しい集落に賭けるのがこの場合は最善だと僕は判断した。

 森の中を一時間ほど進むと、樹々が途切れ開けた空間が視界に入った。

「あれか」

「そうです」

 僕の問いに海原君が答える。

「誰かいるね」

 桂坂さんが一軒の家の前にいた男性を見つけて、僕たちに伝えた。釣りキチさんと同じか少し上ぐらいの年齢だろうか。現場の仕事着風の服装である。

「やあ。君たちがさっき言っていたメンバーだね。これで全員?」

 家に近づくと向こうから声をかけてきた。料子さんと海原君には先ほど会って顔見知りになっているからか、気安く応対してくれる。問いには海原君が答える。

「そうです。全部で五人です」

「とりあえず、家に入ってくれ」

 僕たちは家にお邪魔させてもらった。入ってみると、僕らのいた家と大差ないようだ。やっぱり必要最低限のものしかない。いや、まだまだ足りないものも多そうだ。

「いらっしゃい」

 家の中にいた女の人が挨拶をしてきた。僕らも挨拶を返す。

「まずは自己紹介しておこう。俺の名前は金田豊(かねだゆたか)。今までは金物屋やってた。こっちの女の人は安食調(あじきしらべ)さん。調理師さんだ」

 安食さんが再び会釈する。

「あと林業をやっていた林佐吉(はやしさきち)さんがいる。今は外に出てるけどな。こっちは全部で三人だ」

「僕は田所健太って言います。元学生です。それから……」

 自己紹介はそれぞれでしたほうがいいだろうと思い直した僕は眼で次の人に促した。その後、他のメンバーもそれぞれ名前を伝えた。

「ええと、それじゃ、僕たちの方の今までの経過をざっくり説明しておきますね。詳しい話はおいおい伝えるとして、まずは大雑把な流れだけでも」

 僕は最初に一人で森に来てから現在までにあったことを簡潔に彼らに説明した。時折、桂坂さんや料子さんの補足が入る。釣りキチさんは湖にいる時間が長いので、集落の方の様子はあんまり詳しくない。

「へええ。色んなことがあったんやな……」

 金田さんは本心から同情するような表情を見せた。

「まあ、大変でしたけどね」
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