異世界転移物語

月夜

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困惑

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「薬剤師さん、みんなが消える前に何か異常な出来事とかありませんでしたか?  きっかけや兆候があれば、考えるヒントになるかもしれません」

     宙が最初に薬剤師さんに質問した。

「特に何も。少なくとも私は気がつかなかったわ。それに消える時も、みんなの叫び声とか聞こえなかった気がするし……」

「ということは、叫び声もあげられないほど一瞬の出来事だったのかなあ……」と算田さん。

「もしかして、元の世界にまた転移したんじゃない?」

    桂坂さんが自分の思いつきをその場に出す。

「それならいいんだが。それは可能性の一つに過ぎないな。別の場所、別の空間にまた飛ばされた可能性も同じくらいある、と考えたほうがいい」

    ドクターはそう分析した。転移したのかもしれないが、行き先の特定は現時点では無理だろう。

「もしそうだとすれば、次に考えるべきことはこの現象が偶然起こったのか、何か条件が揃ったために起きたのか、のどちらかということだな」

    エンジさんが言う。

「薬剤師さん、通った道はいつもの道でしたか?   って、いつもの道は分からないか……」

    算田さんが薬剤師さんに尋ねようとして、意味のないことに気づいて質問を中断した。

「釣りキチさんの様子から考えると、普段の道を普通に通っていたと思います」

「消えたのは、料子さん、左官さん、海原君、笑美さん、釣りキチさん、保育士さんの六名ですよね。このメンバーや人数に意味があるんでしょうか」

    宙の問いかけに俺は考えた。どうだろうか。料子さんのような古株もいれば、左官さんみたいな新人もいるし、男女もバラバラ。このメンバーから意味を見出すのは難しい気がする。皆もすぐに答えが出せずに考え込んでいた。

「探しに行ったほうがいいのかなあ……」

   生果さんがぽつりと呟いた。

「それは考えどころだな。瞬間的にその場で消えたというなら、闇雲に探し回ったとしても発見出来る可能性は小さいような気がする。仮にどこか近くの別の場所にでも転移したのなら、あのメンバーなら自力で帰って来れるはずだ」

   確かに。このまま待っていれば、戻ってくることは大いにあり得ると思う。

「この状況では、少人数で捜索隊を組むというのもリスクが大きい。同様の現象がまた起こったらお手上げだ」

    ドクターの意見に対しては、大工さんが真っ先に同意した。

「その通りだと思うね。今はなるべくまとまって行動したほうがいいな」

「そうすると、問題はこれから残ったメンバーで何をするか?  ですね」

    宙が僕のほうを見て確認する。僕はすぐに答えた。
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