異世界転移物語

月夜

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捜索隊

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「なるほど。これならすれ違いになることはなさそうですね」

「うん。まずは家に戻って応援を呼ぼう。手が空いてる人にはみんな来てもらって手分けして探した方が早い」

「はい。そうしましょう」

    僕たちはそのあとすぐに集落に戻り、みんなに声をかけて回った。桂坂さんを見守っているドクターと介護さん、それに外で誰かが見ていた方がいいということで農家さんには居残ってもらって、他のメンバーは全員で手分けして捜索隊を組むことにした。

     一度、場まで全員で行き、誰もいないことを再確認したあと、複数のグループに分かれて捜索を始めた。もし来訪者が事故とかで動けなくなったりしている場合に備え、連絡係として一人は行き来出来るよう、基本は三人のグループとした。

    宝泉さん、算田さん、薬剤師さんのグループ。大工さん、海原君、生果さんのグループ。それにエンジさん、左官さん、センセ、料子さんの四人構成のグループが新たに出来た。

    僕と笑美さん、それに宙を加えた三人で構成されたグループは、東方向を中心に探しに行くことにした。

「おーい!おーい!」

    名前が分からないので、とにかく大声で呼ぶしかない。こちらから発見出来なくても、接近すれば向こうでこちらに気づいてくれるかもしれない。

「再集合の時間を決めておけば良かったですね」

    ふと宙がそんなことをつぶやいた。うっかりしていた。そんな簡単なことをなぜ見落としていたのか?  その確認をしないで分かれたので、帰る時揃うまでが大変じゃないか!

「ああ、僕は馬鹿だ。そう、それを打ち合わせとかなきゃいけなかった」

   もう遅い。他のグループに連絡する手段がない。まあ、いい。悔やんでいても仕方あるまい。今はとにかく来訪者を発見し、無事に保護することが大事だ。

「それにしてもこんな深い森の中で、あてもなくさまようのは自殺行為だって、私にさえ想像がつくのに、どうして来訪者はうろつき出したんでしょうか?」

「さあね。そこまで冷静に考えられなかったんじゃないかな?  現に僕だって最初は誰にも会えず、周囲の探索にかなりの時間を要してましたから」

「健太さん、あれ」
 
    宙が立ち止まり指差した方を見ると、ダンボール箱が落ちていた。樹に隠れていたため、角度の関係で今まで見えなかったようだ。

「運送用のダンボールだな。宛名とか貼ってある?」

 「いえ、剥がしてあるみたいです」

ダンボールに駆け寄った宙が抱えて持ってくる。

「前からあったんでしょうかね。今までここに来た誰かが捨てていったとか」

    笑美さんの推測に僕は懐疑的だった。
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