178 / 319
アクシデント
しおりを挟む
「それがいいわ。次の日に残りのメンバーが行ってもいいし」
そう言ってセンセがうなずく。
「湧き水のところまで往復しても三時間半ぐらいだと思うので、半日あれば十分余裕があると思います。ええと、じゃあ、明日のメンバーは……」
僕は対象者の中から適当に指名した。左官さん、海原君、薬剤師さん、笑美さん、料子さんの五人。意外なことに料子さんもまだ行ったことがなかったのだった。
「ついでに水も汲んで帰って来て欲しいです。昼には帰って来れるはずなので、午後からはまた仕事できますね」
僕は最後にそう付け加えた。
「私たちだけで帰っちゃうと帰り道で迷わないかな?」
笑美さんが心配そうに僕に尋ねた。
「いや、今は目印もたくさん残しているし、道だって多少出来てるから、おそらく迷いはしないと思います」
「それなら大丈夫そうね。でも、あんな森の奥深くで一人になるのはちょっと怖いわ」
「もし、不安ならスマホや方位磁針、それに地図も持って行ってください。道中でスマホで写真を撮るのもいいかも知れません」
僕は思いつく限りのアドバイスをした。
昼食後、僕と桂坂さんは場へと出発する予定だった。もう一か月近く同じメンバーで続けていることになるので、そろそろ他のメンバーに受け入れをバトンタッチしたほうがいいかもしれない、と僕はちらっと思い始めていた。出発直前、僕は尿意を催したので、桂坂さんを待たせておいて、急いで用をたした。
僕が戻ってくると、驚いたことに桂坂さんが倒れていた。
「桂坂さん、桂坂さん」
僕は急いで駆け寄ると、彼女の肩を揺すって呼びかけた。返事がない。どうしよう?
僕は大声で周りに助けを求めた。
「誰か来てください!桂坂さんが大変です!」
僕の声を聞きつけて、何人かのメンバーが駆け寄ってきた。
「どうした?」
左官さんが覗き込む。そして桂坂さんの倒れている様子をみると「ドクター!」と大声で叫んだ。ほどなくドクターが来て、桂坂さんを診始めた。介護さんも助手として付き添っている。
「うーむ……」とドクターが唸った。
「どうですか?」
ドクターは聴診器を耳から外すと、僕らに告げた。
「たいしたことはない。くらっと来ただけだろう。疲れが溜まってるのかもしれないな。しばらく安静にしていれば大丈夫だと思うが」
「良かった……」
僕はとりあえずほっとした。集まったみんなも一様に安堵の表情を浮かべる。
「過労ってことですか?」
「いや、働き過ぎというより、精神的な緊張が長く続いたためという方がより正確だと思う」
そう言ってセンセがうなずく。
「湧き水のところまで往復しても三時間半ぐらいだと思うので、半日あれば十分余裕があると思います。ええと、じゃあ、明日のメンバーは……」
僕は対象者の中から適当に指名した。左官さん、海原君、薬剤師さん、笑美さん、料子さんの五人。意外なことに料子さんもまだ行ったことがなかったのだった。
「ついでに水も汲んで帰って来て欲しいです。昼には帰って来れるはずなので、午後からはまた仕事できますね」
僕は最後にそう付け加えた。
「私たちだけで帰っちゃうと帰り道で迷わないかな?」
笑美さんが心配そうに僕に尋ねた。
「いや、今は目印もたくさん残しているし、道だって多少出来てるから、おそらく迷いはしないと思います」
「それなら大丈夫そうね。でも、あんな森の奥深くで一人になるのはちょっと怖いわ」
「もし、不安ならスマホや方位磁針、それに地図も持って行ってください。道中でスマホで写真を撮るのもいいかも知れません」
僕は思いつく限りのアドバイスをした。
昼食後、僕と桂坂さんは場へと出発する予定だった。もう一か月近く同じメンバーで続けていることになるので、そろそろ他のメンバーに受け入れをバトンタッチしたほうがいいかもしれない、と僕はちらっと思い始めていた。出発直前、僕は尿意を催したので、桂坂さんを待たせておいて、急いで用をたした。
僕が戻ってくると、驚いたことに桂坂さんが倒れていた。
「桂坂さん、桂坂さん」
僕は急いで駆け寄ると、彼女の肩を揺すって呼びかけた。返事がない。どうしよう?
僕は大声で周りに助けを求めた。
「誰か来てください!桂坂さんが大変です!」
僕の声を聞きつけて、何人かのメンバーが駆け寄ってきた。
「どうした?」
左官さんが覗き込む。そして桂坂さんの倒れている様子をみると「ドクター!」と大声で叫んだ。ほどなくドクターが来て、桂坂さんを診始めた。介護さんも助手として付き添っている。
「うーむ……」とドクターが唸った。
「どうですか?」
ドクターは聴診器を耳から外すと、僕らに告げた。
「たいしたことはない。くらっと来ただけだろう。疲れが溜まってるのかもしれないな。しばらく安静にしていれば大丈夫だと思うが」
「良かった……」
僕はとりあえずほっとした。集まったみんなも一様に安堵の表情を浮かべる。
「過労ってことですか?」
「いや、働き過ぎというより、精神的な緊張が長く続いたためという方がより正確だと思う」
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
潦国王妃の後宮再建計画
紫藤市
ファンタジー
内乱の末に潦国の第九代国王に就いた游稜雅は、宰相の娘である桓蓮花を妃として娶った。王妃として後宮で三食昼寝付きの怠惰な生活を送れることを期待して嫁いできた蓮花は、後宮として使用される殿舎が先の内乱で焼け落ちて使えないことや、自分以外の妃がいないことに驚く。王は、戦禍を被った国を復興させるため、後宮再建に使える国費はほとんどないと蓮花に告げる。後宮必要論を唱え、なんとか後宮を再建させようと蓮花は動き始めるが、妃はひとりで良いと考える王や国費の浪費を心配する大臣たちの反対以外にも蓮花の計画を邪魔をする存在が王宮には跋扈していることが明らかになっていく――。
王宮にあるべき後宮を再建しようとする新米王妃の蓮花と、なりゆきで王に即位したものの一夫一妻が希望で妃の計画を阻止したい(蓮花ひとりを寵愛したい)稜雅の、なかなか平穏無事に新婚生活が始まらない王宮立て直し(王妃は後宮の建て直しも希望)の顛末。
人の身にして精霊王
山外大河
ファンタジー
正しいと思ったことを見境なく行動に移してしまう高校生、瀬戸栄治は、その行動の最中に謎の少女の襲撃によって異世界へと飛ばされる。その世界は精霊と呼ばれる人間の女性と同じ形状を持つ存在が当たり前のように資源として扱われていて、それが常識となってしまっている歪んだ価値観を持つ世界だった。そんな価値観が間違っていると思った栄治は、出会った精霊を助けるために世界中を敵に回して奮闘を始める。
主人公最強系です。
厳しめでもいいので、感想お待ちしてます。
小説家になろう。カクヨムにも掲載しています。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
元英雄 これからは命大事にでいきます
銀塊 メウ
ファンタジー
異世界グリーンプラネットでの
魔王との激しい死闘を
終え元の世界に帰還した英雄 八雲
多くの死闘で疲弊したことで、
これからは『命大事に』を心に決め、
落ち着いた生活をしようと思う。
こちらの世界にも妖魔と言う
化物が現れなんだかんだで
戦う羽目に………寿命を削り闘う八雲、
とうとう寿命が一桁にどうするのよ〜
八雲は寿命を伸ばすために再び
異世界へ戻る。そして、そこでは
新たな闘いが始まっていた。
八雲は運命の時の流れに翻弄され
苦悩しながらも魔王を超えた
存在と対峙する。
この話は心優しき青年が、神からのギフト
『ライフ』を使ってお助けする話です。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる