異世界転移物語

月夜

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海原荒太

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    翌日から新体制で僕らはまた生活をスタートさせた。そしてその日の午後の来訪者は、今までにないパターンだった……。

    午後に場に現れたのは、高校生ぐらいの青年だった。北野君同様、作業服である。泥が付いていることからして、農作業でもやってたのかと僕は彼を見て真っ先に思った。

    話を聞いてみると、驚いたことに、彼はなんと北野君と同じ高校の生徒だった。北野君を知っているか尋ねると、同級生だという返答が返ってきた。しかも、めまいがした時、北野君が同様にふらついたのを目撃したという。

    彼の名前は海原荒太(うなばらあらた)。北野君と同じくらいガタイのいい男の子だ。元気もいい。北野君が今はここにいないのを伝えるとしきりに残念がってた。

   それにしてもこれは新しいパターンだった。今まで知り合い同士がこの世界に転移した例はなかったからだ。この件については、夜のミーティングで話し合う必要があった。

   たった一例の得意な事例ではあるが、それを元にミーティングでは色々な考察が提示された。

「不特定の見知らぬ者が集まるという仮定はこれで崩れたわけだな」とドクター。

「たまたまそうなっていただけで、もともとルールってわけでもないんですけどね」

僕はそう応じた。

「でも、すごい確率じゃないですか?  知り合いに会うなんて」

宙が目を輝かせて言う。

「まあな。これが日本だけで起こってるとして、一億人も人がいるわけだろ。それで転移先で知り合いに出会うなんて、奇跡としか言いようがない」

宝泉さんがそう考察すると、農家さんはやや首を傾げた。

「そう決めつけるのは早くねえべか?  先に転移したやつに引っ張られて、ここに来たってこともないんかの?」

「そういう見えない力が働いた可能性も否定出来ません。転移のメカニズムも、転移する人々の選択基準も何一つ明らかになっていないのですから」

    僕の話にうなずいたドクターは私見をのべた。

「一つだけ言えることがある。北野君と海原君の例があったということは、今後、それぞれが向こうに残してきた家族や友人とまた会える可能性がわずかながら出てきたということだ」

「あ、なるほど」生果さんが手を叩く。

「でも……ちょっと複雑ではありますね。こっちと向こうと、どっちで暮らすのが本当に幸せなのか、ってことを考えると」

   保育士さんが言いながら目を伏せる。

「以前、大地さんが言ってたよね。大災害が起こるかもしれないって。それを考えると、残してきた人達がどうなるのか、不安はあるわ」と料子さんが言った。
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