異世界転移物語

月夜

文字の大きさ
上 下
169 / 319

検討

しおりを挟む
    夕方になると、意外なことにスカウトさんたちが帰ってきた。今日はまだ三日目だ。結局、二泊で切り上げたことになる。

「もうテントも撤収してきた。ちょっと早い時間だが、荷物が多いんで早めに向こうを出た」

    重い荷物を背中に抱えたスカウトさんは、家に入るとバサリと荷物を降ろした。

「川はどうでした?」

「それがな……。あまりいい報告ではないな」

    スカウトさんは顔をしかめた。

「川を少し下ったんですけど、池に繋がってたんですよ。湖と比べると全然小さい池なんですけどね。池は結構深いみたいで、水量的にはまだまだ貯めれる余裕があって、どうやらそこに川が流れ着いてるみたいなんです」

「池から先はないの?」

「ざっと周囲をぐるりと調べてみたが、池から流れ出る川は見つけられなかった。もしかしたら水の底に穴でもあるのかもしれないな」

まあ、そう考えるのが妥当だろう。

「丸一日、近隣も調べてみたが、特に発見はなかった。川があったのは朗報だが、実利はまりなさそうだな」

    どうやらスカウトさんたちは、成果なしなので、もう引き上げてくる判断をしたようだ。

    テントも戻ってきたので、もしかしたら明日にでも遠征隊が出発できるかもしれないな、と思った僕は、スカウトさんと自転車君に、昨日みんなで話し合ったことを伝えた……。

    夕食後のミーティングでは、簡単にスカウトさんからの報告があった後、いよいよ明日からの行動を検討した。

    スカウトさんも僕の話を聞いて、すぐに了解してくれて、明日にでも出発出来るならしたい、と言ってくれた。だから、この検討もスムーズに導入から入れた。

「行くメンバーは昨日検討した通りです。スカウトさんも自転車君もOKだそうなので、二人も含め、十人でお願いします」

「テントは三つとも持って行くけどいいよな?」とスカウトさん。

「ええ。大丈夫です。あと食料は余裕を持って準備してください」

「わかってるよ。そのあたりは抜かりない」

「電気関係では、ソーラーパネルとポータブル電源は持っていく。もう一つ小さいのがあるから、こっちもなんとかなると思う」

   電気さんがそう言うと、宝泉さんはうなずいた。

「医療面は相変わらずろくな薬も道具もないが、ナースさんにはある程度、薬とか渡すから持って行ってもらう」とドクター。

「水はどうするかな……」

    路木さんが心配げな顔をした。

「うーん、それが難しいんですよね。湧き水のある方向は、これから向かう方向と全然違うから、途中で湧き水を確保してってわけにもいかない。途中でうまい具合にきれいな水があればいいんですけど、そううまくはいかないでしょうね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...