異世界転移物語

月夜

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ギャラリー増員で再挑戦

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   宙や電気さんが、再び凧を揚げる準備をしていると、畑から農家さんと北野君がやってきた。さっきは農作業していて、こっちには居なかったと思う。

「ちょっと休憩がてら見に来てやったべ」

    農家さんが僕らの横にどかっと座った。

「面白いことやってまんな。なあ、さっきも揚がったんやろ。畑からもバッチリ見えたわ!」

    北野君は興味津々という様子で聞いてくる。本当は自らも加わりたかったみたいだが、農家さんに強引に畑に連れて行かれたらしい。

「うん。なんとか撮影も出来たんだけど、一方向しか撮れなかったから、再チャレンジというわけさ」

「なんかおもろいもん映っとんか?」

「いや、全然。ただ森が映ってるだけ。見ても退屈だよ。それにブレててあんまりよくわからないし」

「そうか。そりゃ、あんまおもろくないな」

    まあ面白い、面白くないで判断するような事柄でもないんだが。正直、もう少し刺激的な映像を期待しているのも事実だ。

   タイミングよく、料子さんや笑美さんも外に出てきた。誰かが呼びに行ったのかな、と思っていたら、桂坂さんも一緒に出てきた。いつのまにか桂坂さんが声をかけに行ったらしい。

「それじゃあ、さっきみたいに散らばって待機してましょう」

    僕の掛け声で皆、それぞれ適当に散らばってゆく。ただし、農家さんと北野君をのぞいてだが。まあ、先ほどのシーンを見てないし、農家さんなんかは最初から高みの見物のつもりで来てるようなのでほっとくことにした。人数は充分に足りている。

「ではいきまーす!」

   宙が天に向かって大声で叫ぶ。

「あいよ」

    電気さんはそう応じると、凧を抱えたまま走り出した。頃合いを見て手を離す。大きな凧がふわっと浮いた。今度も成功みたいだ。

    宙はさっきと同じように慎重に糸を延ばしていく。凧は順調に上昇を続ける。ある程度上がったところで、一度作業がストップした。

    スマホと新しい装置を取り付けるためだ。電気さんが糸を少し手繰り寄せながら手際よく作業をしている。僕がぼんやりとそれを見つめている間にすぐに取り付け終わった。

   再び宙は糸を延ばし始めた。重くなったのを物ともせず、凧は上がっていく。風の力とはなんてすごいものだろうか。地上ではそれほど強い風と感じないのに。

「おお、すげえ!」

   遠くで北野君が感動しているのが伝わってくる。農家さんはというと相変わらず様子見を決め込んでいて、座り込んだまま微動だにしていない。

    そしてついに凧は最高点まで到達した。もう一度、宙がぐいと糸をひくが、その位置でほぼ固定されたようだ。あとは撮影の間、ブレないようにしっかりと持っているだけだ。簡単に言ってはみたが、必死で糸をつかんでいる宙を見ると思ったより重労働なのかもしれない。
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